田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

青山高原のキシタエダシャク

2011-06-30 | 

シャクガ科のキシタエダシャク本土亜種 Arichanna melanaria fraterna (Butler, 1878)

青山高原の駐車場内トイレ。外壁に止まるキシタエダシャクを見つけた。開張は 34-44㎜。幼虫の食餌植物はツツジ科のアセビなど。
ここはアセビの多い高原だから,キシタエダシャクはこの高原を代表する蛾のひとつなのだろうか。
2011.6.25

またも白いカラス

2011-06-29 | 

津市河芸町の芦原海岸。堤防道路を車で走行中,松林の中で二羽の白いカラスを見つけた。
知人の話では,今年生まれた4兄弟の内3羽が白くて,両親は黒いカラスだとのことである。5羽のファミリーが一緒に居ることもあるという。3羽の白カラスの内,1羽は眼が赤くアルビノだとも聞いている。カラスの種はハシブトガラス。

白いカラスには5年前から同じ場所で何度も出会っているが,ひよっとすると同じ両親が伴侶を変えることなく何度も白いカラスを産んでいるのかもしれない。
2011.6.23

新たな白いカラス

砂浜のスナジホウライタケ

2011-06-25 | 三重の生き物

スナジホウライタケ Marasmiellus mesosprus

津市の豊津海岸。コウボウシバ(カヤツリグサ科スゲ属)の群生する砂浜でキノコを見つけた。コウボウシバにくっついているように見えたので,株元を掘ってみると,砂に埋まった茎からキノコが生えていることが確認できた。元気に生きている植物の茎から生えるキノコは珍しい。

調べると,かつてカヤネダケ Crinipellis caulicianalis と呼ばれていたキノコで,2007年にはスナジホウライタケ Marasmiellus mesosprusと和名も学名も変更されている。コウボウムギやイネ科のチガヤにも生えるという。

果実を付けている株にも生えていたので,弱った株にだけ発生しているとはいえないようだ。また,スナジホウライタケが生えている株が弱っているようにも見えなかった。
この翌日,見に出かけたが,キノコの形は無くなって,ただ薄茶色の乾燥した枯葉が散らばっているようにしか見えなかった。長雨が続いていたときは元気でいたのだろうが,晴れてから二日目にしてキノコの形が消えてしまうとは。
2011.6.23






大洞山のイチモンジチョウ

2011-06-23 | チョウ

タテハチョウ科のイチモンジチョウ Ladoga camilla (Linnaeus,1764)

津市美杉町の大洞山。ウツギの花がぼちぼち咲き出した頃,イチモンジチョウの姿を見かけた。

『広島県蝶類図鑑』によると,イチモンジチョウは「食餌植物が自生する林縁や渓流沿いなどに生息する森林性の種で,成虫はウツギやイボタノキなど低木の白色系の花に,好んで吸蜜に訪れる。雌雄ともに地上で吸水することもあり,雌の吸水行動はイチモンジチョウ類やコミスジ類に共通した習性である。」
また,良く似たアサマイチモンジは「明るく開けた河川周辺の林縁や平地・山地の雑木林などに生息し,標高の高いところを好まない傾向がある。」という。

私が出会った場所は標高が700m以上の辺りである。

2011.6.6

飯高町のヤマゴボウ

2011-06-22 | 草花

ヤマゴボウ科のヤマゴボウ Phytolacca esculenta

松阪市飯高町の山間部を回った。
細い流れに沿って坂を上っていくと,少し開けた場所にヤマゴボウの株を見つけた。

『野に咲く花』によると,ヤマゴボウは「中国原産といわれ,根を薬用とするため栽培されていたが,現在は少ない。高さ1㍍ほどになる大型の多年草で,茎は緑色。葉は長さ10~20㌢の卵状楕円形。花序は直立し,果期にも垂れない。花は白色で直径約8㍉。果実は8個の分果に分かれ,黒紫色に熟す。」

ヤマゴボウのおしべの葯は淡紅色だが,私が見たこの株では葯が無くなっていた。

『原色日本帰化植物図鑑』に「現在は山間部にまれに野生化したものに出会う。」とあり,私が見つけたのはまさに「山間部にまれに野生化したもの」である。
2011.6.19




果実は8個の分果に分かれる。なお,ヨウシュヤマゴボウでは10個の分果。

ヨコヅナサシガメ

2011-06-19 | カメムシ

サシガメ科のヨコヅナサシガメ Agriosphodrus dohrni (Signoret)

津市の豊津海岸。砂浜の海浜植物群落の中でヨコヅナサシガメと出会った。

「日本原色カメムシ図鑑」によると,「体長16-24㎜。大型のサシガメで,体は黒く光沢があり,直立した長毛におおわれる。各脚の基節と腹端2節は鮮紅色。腹部結合版が葉状に広がり,白色で,各節に大きい黒斑をもつ。頭部は細長く,突出する。神社や公園などの人里的な環境の,サクラやエノキの樹幹に発見されることが多い。また,都市部の公園などでもしばしば見出される。」という。

砂浜で出会ったのは,初めてのような気がする。

2011.6.11

ナミアゲハ

2011-06-18 | チョウ

アゲハチョウ科のナミアゲハ Papilio xuthus

津市の豊津海岸。大きなマサキの木にナミアゲハが大きく翅を広げて止まっていた。

『広島県蝶類図鑑』によると,アゲハ(ナミアゲハ)は「平地から低山地にかけての人家周辺や二次林,畑などに生息し,成虫は明るい低木の茂み周辺に蝶道をつくって飛翔する。蝶道をつくるのは雄で,交尾行動との関係が指摘されている。赤色系の花に好んで集まり,吸水することは少ない。雌は食餌植物の若い葉や芽に,1個ずつ卵を産み付ける。幼虫はミカン科植物を広く食し,栽培柑橘類の害虫とされる。」

ナミアゲハの翅には黄白色の線が翅の根元まで入っている。キアゲハとの区別点の一つである。

2011.6.11

大島(紀伊長島)のルリシジミ

2011-06-16 | チョウ

シジミチョウ科のルリシジミ Celastrina argiolus Linnaeus)

大島の海岸や岩場にはハマボッスの白い花がたくさん咲いていた。その蜜を求めてルリシジミが集まっていた。

チョウ屋の話によると,「おそらく第2化のものでしょう」という。

『広島県蝶類図鑑』によると,ルリシジミは「ユーラシア大陸と北米大陸に広く分布し,蝶類の中ではもっとも広範囲に分布する種のひとつである。こうした広域分布は,基本的にマメ科植物を食餌植物としながら,その他多くの科の植物を利用することができることに起因している。」という。

2011.6.4



大島(紀伊長島)のツムガタギセル

2011-06-11 | 

キセルガイ科のツムガタギセル Pinguiphaedusa platydera

大きな木が倒れていて,そこに1個のキセルガイを見つけた。初めて見るキセルガイなので,貝屋に尋ねると,一目見るなりツムガタギセルだと言う。欲しそうな顔をしなかったので,この島ではさして珍しい貝ではなさそうであった。
愛媛県のレッドデータブックでは絶滅危惧1類に選定されている。

『三重県その自然と動物』によると,ツムガタギセルは「殻高25mm,殻径5㎜。殻は淡黄褐色でやや堅固な貝。長紡錘形をしているのでこの名がある。卵生。模式産地は神戸。伊勢鳥羽両市を中心に県南に多いが,名張,平倉,大杉谷,二俣国有林,尾鷲にも生息。」

2011.6.4

大島(紀伊長島)のマルウンカ

2011-06-11 | 三重の生き物

マルウンカ科のマルウンカ Gergithus variabilis Butler

島の灯台に登る途中で,見たことも無い生き物を見つけた。大きくもないし動きも無いのだが,恐る恐るカメラを向けた。

原色日本昆虫図鑑(下)によると,マルウンカは「体長(翅端まで)5.5~6㎜。体はほとんど半球形。頭部は暗褐色。前翅の色・斑紋は変化が多く,通常淡褐色~暗褐色で両側に2個ずつの淡色斑があるが,ときに全体が淡褐色で無紋のもの,中央部に1個だけの淡色紋があるものなどのほかに,種々の程度に黒斑をあらわし,ときに全体黒化して翅端のみ褐色の個体もある。成虫は5~8月,クヌギやウツギなど各種の広葉樹上で普通にみられる。」

2011.6.4

大島(紀伊長島)の蛾2種

2011-06-09 | 

ハマキモドキガ科のイヌビワハマキモドキ Choreutis japonica (Zeller, 1877)

紀伊長島の大島に渡った。蛾ではイヌビワハマキモドキとフタスジキホソハマキに出会えた。イヌビワハマキモドキの開張は11-14㎜で,成虫は5~10月に出現する。

フタスジキホソハマキの開張は14-15㎜で,幼虫の食草は判っていないようである。
『熊野灘沿岸照葉樹林の昆虫』には,どちらの種も記録されていなかった。
2011.6.4

イヌビワハマキモドキ


ハマキガ科のフタスジキホソハマキ Aethes rectilineana (Caradja, 1939)

青山高原のカメムシ2種

2011-06-03 | カメムシ

ヘリカメムシ科のオオヘリカメムシ Molipteryx fuliginosa (Uhler)

青山高原の林縁で2種のカメムシと出会った。
日本原色カメムシ図鑑によると,オオヘリカメムシは「体長20-25㎜。大型のヘリカメムシで,一様に暗褐色の背面に,淡褐色の軟らかい毛が密生している。前胸背側角は前側方に張り出している。きわめて強い臭気をだす。」という。
でも,このときの臭いの記憶が私には何も無い。

セアカツノカメムシは,山地では良く見かける。
セアカツノカメムシ

2011.5.21

ツノカメムシ科のセアカツノカメムシ雌 Acanthosoma denticaudum

砂浜のヨシコツルギアブ

2011-06-02 | ハエ目(双翅目)

2011.4.24 津市河芸町豊津海岸にて ヨシコツルギアブ雄

ハマボウフウやハマニガナなどの海浜植物が生えていて,どちらかといえば疎らに生えている砂浜の砂地上に,以前から白いハエがいることは分っていた。写真も撮っていたが,同定ポイントが写っていなかったりして,種名は判らなかった。
ヨシコツルギアブ Acrosathe yoshikoae Nagatomi et Lyneborg,1988 は4月に現われると聞いていたので,今年はあちこちの砂浜を探し回っていた。4月21に芦原海岸で初見,24日には豊津海岸でも見つけた。写真もたくさん撮ったが,前・中腿節の腹面に1~2本の剛毛をもつことを確認できる写真は数枚しか撮れていなかった。

三重県レッドデータブック2005には,ヨシコツルギアブは「小形で体形は細長く,後方に向かって狭まる。雄の腹部は美しい銀白色の毛に覆われる。雌では灰褐色に黒色の斑紋を装う。この属の種は互いに近似種が多いが,本種は前・中腿節の腹面に1~2本の剛毛をもつことで,比較的容易に区別できる。海浜性で,コウボウムギの群落やその周辺の限られた範囲にみられ,それより内陸には生息しない。幼虫は砂中にあって他の節足動物を捕食する。年1化,春に出現する。」などとあり,絶滅危惧Ⅱ類に選定されている。

永冨ほか(2000)によると,ヨシコツルギアブの雄は体長7.2-9.4㎜で「前・中腿節の腹面(中央部を越えた所)に1本の剛毛を持つ。顔の最下方部の幅は触角と前単眼間の距離の1.0-1.2倍である。前額の側部に毛群がある。」とし,雌は体長7.5-11.3㎜で「前・中腿節の前腹面(中央部を越えた所)に1本の黒剛毛を持つ。顔の最下方部幅は触角と前単眼間の距離の1.2-1.5倍である。腹部第5背板上の黒紋は通常半円形か三角形で,第6背板上の黒紋は三角形か中央部が突出しないままとなる。」という。また,ヨシコツルギアブの模式標本産地は九州の佐多岬となっている。

柿沼(2009)は「山口県では産地,個体数ともA.tashimaiより少ない,海浜植生の間の砂の上にいることが多い。」と言い,島根県での記録と合わせて報告している。

佐藤(2007)は9枚の写真を使って,新潟市五十嵐浜でのヨシコツルギアブの生態を報告している。

三重県産のツルギアブはこれまでにヨシコツルギアブ,ナギサツルギアブ,ハマツルギアブ,シオサイツルギアブ,ヤマトツルギアブの5種が記録されている。山地性のものも私は見つけているので,まだまだ増える。

参考文献
篠木善重,2011.ヤマトツルギアブ三重県と徳島県の海浜での記録.はなあぶ (31):56-57.
大石久志・篠木善重・別府隆守,2010.日本産Acrosathe属(ツルギアブ科)の新知見.はなあぶ (30-1):31-46.
柿沼進, 2009. 山口県・島根県の海浜性ツルギアブ分布記録.はなあぶ(27):54-55.
永冨昭・大石久志, 2000. 日本産ツルギアブの同定.はなあぶ(9):1-32.
佐藤直美, 2007. 新潟市におけるヨシコツルギアブの記録. はなあぶ(23):79-80.


2011.4.21 津市河芸町芦原海岸にて ヨシコツルギアブ雌
右前脚の腿節腹面に1本の剛毛が見えている。


2011.4.21 津市河芸町芦原海岸にて ヨシコツルギアブ雌雄


ヨシコツルギアブ雌


ヨシコツルギアブ雌
前脚のは見えていないが,中脚腿節腹面に各1本の剛毛が見えている。

ヤマトツルギアブ
三重県のヤマトツルギアブ
シオサイツルギアブ覚書
ツルギアブ科Acrosathe sp.の訪花
ナギサツルギアブ覚書
砂浜のツルギアブ


大洞山のハマダラヒロクチバエ

2011-06-01 | ハエ目(双翅目)

ヒロクチバエ科のハマダラヒロクチバエ Prosthiochaeta flavihirta Hara, 1987

津市美杉町の大洞山。何かの木の幹に止まっていたハエをつかまえた。ヒロクチバエ科のハマダラヒロクチバエのようである。珍しい種では無さそうだが,翅の模様が気に入っている。Prosthiochaeta属の日本産は,この1種だけのようである。

原記載の検索表に Prementum blackish brown; anepimeron with yellow hairs;japanese species とある。Prementumは下唇前基節,anepimeronは上後側板のこと。

学名のflaviは黄色,hirtaは毛の生えているの意味。

文献
HaraH(1987):A Revision of the Genus Prosthiochaeta (Diptera.Platystomatidae) Kontyu Tphyo,55(4)pp.684-695.