田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

フタスジヒメハマキ

2008-05-30 | 
フタスジヒメハマキ
鈴鹿川に近い、里山の林縁。亀山市内の国道306号線を跨いで暮らしている小さなハマキガに出会った。セイタカアワダチソウやヨモギなどの葉に止まっている彼ら。道路の法面には中国産コマツナギが植えられている。
ハマキガ科ヒメハマキガ亜科のフタスジヒメハマキと思われるが、この蛾に関する情報は少ない。
学名はGrapholita pallifrontana Lienig & Zeller, 1846
5~6月頃に河川敷に出現するという。開張は約12ミリ。
長野県や香川県などからとれているようだが、三重県での記録は無さそうに思う。
国外では、イギリス、ヨーロッパからソ連、小アジアにかけて広く分布しているようである。灯火にも飛来するらしい。
ヨーロッパでは、幼虫はマメ科のモメンヅルのサヤの中にいるという。
周辺でマメ科植物といえば、中国産コマツナギがある。去年のサヤがいまだに残っている。当地でのフタスジヒメハマキの幼虫はこの中国産コマツナギのサヤの中にいるのではないかと思っている。中国産コマツナギ周辺で個体数が多いなど、辻褄が合う。
珍しい種だと思えるので、三重県立博物館に2個体寄贈した。いずれの日か、学芸員がしかるべく発表してくれると思う。
2008.5.27

フタスジヒメハマキ

セイヨウヒキヨモギ

2008-05-29 | 草花
セイヨウヒキヨモギ
鈴鹿川の堤防沿いに車を走らせていたとき、黄色い花の群落を見つけた。
初めて見る帰化植物に違いないと思った。
茎葉のどこを触っても粘ついた。全草に白い毛と腺毛を密生している。
ゴマノハグサ科の1年草で、地中海沿岸が原産。
千葉県船橋市の宅地造成地で1973年に発見。
『鈴鹿市の帰化植物』(1999 太田久次)によると、鈴鹿市では1983年に国道23号線沿いで初記録されている。砂防用植物種子に混入して帰化したとのことである。
今年、太田久次さんは急死された。『改訂三重県帰化植物誌』を書き加えて再発行したいと数年前におっしゃっていた。ご自宅で見せていただいた同書には、たくさんの赤字の加筆があった。太田さんには『津市の帰化植物』も発行していただいた。ずいぶん厄介になった。
2008.5.28

セイヨウヒキヨモギ

セイヨウヒキヨモギ

道路法面のコマツナギ

2008-05-27 | 樹木
コマツナギ
国道306号線の法面に高さが数メートルもあるコマツナギが育っている。
数年前に初めて見たときは驚いた。在来のコマツナギは草かと間違えるような、いかにも落葉小低木らしいものである。然るに、この道路法面のコマツナギは2メートルを軽く超えている。
植物の先生に聞くと、学名は同じだが、中国産のコマツナギであると言う。
大きさにこれほどの差が出るからには、絶対に異なる種だろうと思うが、未だに種が分かれたとは聞かない。
国道だけでなく、市道の法面にも育っているのを複数箇所で見ているから、誰かが奨励でもしているのだろう。
何も外国産のものを持ち込んでこなくても良さそうに思うけど。
マメ科コマツナギ属
2008.5.26
コマツナギ

コマツナギ

ウミフクロウ

2008-05-26 | 田中川
ウミフクロウ
海が荒れた翌日に波打ち際を歩いていると、ウミフクロウが転がっていることがある。
丸まって波に転がされているのを良く見かける。
裏返ったまま動いているのを見て、別種かと思っていた。
頭部に一対の触覚があり、網目状の斑紋があるほうが表。
右側縁に大きな櫛状のえらがある。
貝殻は退化消失している。
背楯目 ウミフクロウ科
2008.5.20
ウミフクロウ

ウミフクロウ

キアシトックリバチ巣

2008-05-24 | ハチ目(膜翅目)
キアシトックリバチ巣
海岸堤防から砂浜へ降りていく。田中川干潟の南端である。
今日は何に会えるか、いつも心ときめく。
セイタカアワダチソウの枯れた茎にトックリバチの巣を見つけた。
徳利状の巣が3個も連なっている。
下の2個の巣が三分の一ほど壊されているようだ。巣の中に入れられたさまざまな幼虫たちが巣から落ちそうになっている。
未完成の巣かも知れないと思って30分ほど待ったが、親バチは現れなかった。
未完成な巣にこんなに沢山の幼虫たちを運び込む筈が無い。
誰が巣を壊したのか分からない。
誰の巣だったのかも確かめることが出来なかった。
キアシトックリバチは複数の巣を連ねて造る事もあるというから、たぶんキアシトックリバチの巣であろうと思う。
翌日も見に出かけたが、巣はそのままであったものの、幼虫たちの姿は無かった。
2008.5.14

キアシトックリバチ巣

キアシトックリバチ


サツマツトガ

2008-05-22 | 
サツマツトガ
近くの海岸に出かけた。
海岸と言っても土木工事の資材置き場になっているような場所なので、原野のようなところである。
カラスノエンドウが実をつけ、チガヤが花期を迎えている。
チガヤの葉にサツマツトガを見つけた。
ツトガ科ツトガ亜科
前翅長は6~9ミリ
成虫の出現月は5~6と8~9
灯火にもやってくるという。
2008.5.12

サツマツトガ



シロスジアオヨトウ

2008-05-21 | 
シロスジアオヨトウ
津市森町のヒノキ植林地でヤガ科ヨトウガ亜科のシロスジアオヨトウを見つけた。
前翅の中央に短い白帯模様がある。
幼虫はタデ科のイヌタデやギシギシを食べる。
緑色の斑紋は肉眼ではあまり目立たなかったが、写真を見て、その鮮やかさに驚いた。
ヒノキの幹の高さ50センチほどのところに止まったまま全く動かない。
草刈機で周辺の草を刈り取った後もまだ止まったままであった。
音には鈍感なのかなあ。
2008.5.15

ヒゲコメツキ♀

2008-05-20 | 甲虫
ヒゲコメツキ♀
海が少し荒れたので、海岸を覘いてみた。
小型のタイラギがいくつも打ちあがっていた。
波打ち際で、もだえているヒゲコメツキ♀の1個体を見つけた。
体長は27ミリ。前胸背板は台形状で、正中部に浅い縦溝がある。
雌の触覚は鋸歯状だが、雄はくし状の立派な触角を持つ。
雑木林や林縁で暮らしているはずのヒゲコメツキがなぜ波打ち際で溺れていたのだろう。
波にさらわれそうだったので、家に持ち帰ったが、だんだん動かなくなった。
2008.5.20

カタモンコガネ

2008-05-19 | 甲虫
カタモンコガネ
田中川干潟を見渡すようにして海岸堤防を歩いていると、ノイバラの白い花が目立つ。
一株のノイバラの花にカタモンコガネが群れていた。
コガネムシ科スジコガネ亜科セマダラコガネ属
腹部の両側に灰色の長い毛がある。
幼虫は土の中で植物の根を食べて暮らしているという。
草の多い砂浜を歩いていたら、カタモンコガネが何かを探すように低いところをゆっくり飛んでいた。また、砂の上に一匹の死骸も見つけた。
この砂浜で生まれ、育ち、死んでいくのだろう。
2008.5.14
カタモンコガネ

シロマダラノメイガ

2008-05-17 | 
シロマダラノメイガ
田中川干潟へ今日も出かけた。
堤防脇に狭い駐車スペースがある、釣り客がよく停めているいつもの場所に駐車した。
車から離れようとしたとき、一匹の蛾が窓ガラスに張り付いた。
ツトガ科ノメイガ亜科 シロマダラノメイガ
幼虫はキョウチクトウやガガイモなどを食べる。
成虫の出現月は5~8月
2008.5.13

ハマボウのナミテントウ

2008-05-17 | ハマボウ
ナミテントウ
田中川干潟のハマボウ古木を覘いてきた。
ハマボウの新しい葉が目立ってきている。
ナミテントウたちの姿が見られた。体色や斑紋のパターンが変化に富む。
テントウムシが居るということはアブラムシも居るに違いない。

アブラムシはすぐに見つかった。ハマボウの葉の裏にいくらでも居た。
アブラムシ亜科のワタアブラムシと思われる。
卵で越冬した彼らは冬から春にかけてムクゲやフヨウなどアオイ科の植物に寄生することが知られている。同じワタアブラムシでも胎生雌虫のまま越冬するグループもあるが、それらの寄主植物は異なるという。
2008.5.14

ナミテントウ

ワタアブラムシ


ヤハズハエトリ♂

2008-05-16 | 蜘蛛
ヤハズハエトリ
田中川干潟のアイアシ群落周辺をうろついた。
腹部に白い矢はず状の斑があるクモを見つけた。
ヤハズハエトリの♂
体長は♂で8~9ミリ、イネ科植物の葉上で生活している。
ヨシ原にも居るのかなあ。
2008.5.14

ヤハズハエトリ

ヤハズハエトリ

ナガヒョウタンゴミムシ

2008-05-13 | 甲虫
ナガヒョウタンゴミムシ
畑の草取りをしていたら、細長い形のヒョウタンゴミムシを見つけた。
体長は20ミリ近くある。
以前、知人にホソヒョウタンゴミムシの標本を見せてもらったことがある。ナガヒョウタンゴミムシというのに良く似ているなあと思っていた。
ホソヒョウタンゴミムシは「前胸の側縁はほぼ平行、中脛節の外縁には2本の棘がある」と甲虫図鑑に記されている。
ナガヒョウタンゴミムシは「前胸はふつう基方へやや狭まる。中脛節の外縁には先端の近くに1本の棘がある」と記されている。
この個体には1本の棘しかないので、ナガヒョウタンゴミムシである。畑でよく見かけるのはこのナガヒョウタンゴミムシであることが多いと聞いている。

ある観察会でトンボの石田昇三さんが「人間の口は上下に動くが、昆虫の口は横に動く、なぜ彼らはそのように進化したのか? ご自分で考えてみてください。そんな問題意識を持って、観察してみてください。生き物の名前を覚えることよりも、なぜ、どうしてと考えることのほうが大切です」と言っていた。ナガヒョウタンゴミムシの大あごを見て、石田さんの言葉を思い出した。
2008.5.12

ナガヒョウタンゴミムシ

トビズムカデ抱卵

2008-05-13 | 田中川
トビズムカデ
海岸部の草地。朽ちた丸太を砕いていくと、トビズムカデが動いた。
すぐ側に黄色の卵が見える。しばらく見ていると卵を抱きかかえて奥のほうへ移動していった。
トビズムカデの雌は抱卵することで知られている。
日本産のムカデ類では最大の種。頭部がとび色をしているのでトビズの名が付いた。
歩脚の先端は鋭く尖っている。大あごの力も強い。最終脚は末端から長く伸びているが、歩行には使えない脚で、曳航肢と呼ばれている。
オオムカデ科
2008.5.12

トビズムカデ

トビズムカデ

金色のシギアブ科

2008-05-09 | ハエ目(双翅目)
キアシキンシギアブ
鈴鹿川の中流域。河川敷の低い草むらで金色をした双翅目(ハエ目)を何個体も見かけた。
短角亜目(ハエ亜目)のシギアブ科に属するキアシキンシギアブ(学名はChrysopilus ditissimis Bezzi,1912)またはその近縁種のようである。
キアシキンシギアブは京都府のレッドデータブックでは要注目種とされている。その解説によると、「河岸の自然度の高い草原に生息し、個体数は多いが、生息地は局所的である」という。

三重県のレッドデータブック2005では情報不足とされ、「中・下流域の海岸の草地にみられる。河川の改修によって失われやすい環境であり、詳しい調査を要する」としている。
同書のこの解説は校正ミスだと思うが、海岸は河岸とすべき、また中・下流域は県内の記録などから中・下(ときに上)流域とすべきであろう。

学名のChrysopilusは金毛を意味する。
体色は黒で、金色の毛を装っている。この毛が取れると体の黒色がそれだけ多く見えてくるので、個体によって見かけの色模様が違って見える。
体長は上の写真の♂個体で約9ミリ。
シギアブの名称は脚が細くて長いところから鳥のシギを連想することに由来するもの。
幼虫は土中や朽木の中などで生活し、他の軟弱な昆虫の幼虫などを食べているようである。
Chrysopilus属の1種には違いないのだが、近縁種に関する情報が乏しく、和名すら無い種が多い現状では種の確定が出来ない。ネット上でキアシキンシギアブとして紹介している画像を見比べると、どうも雰囲気や翅の色など少し異なるものがあるように思える。
鈴鹿市発行の「鈴鹿市の自然」にはシギアブ科の記録は無い。
成虫の出現期間は極めて短いらしい。今度はいつ会えることやら。
2008.5.6

キアシキンシギアブ
この個体は雄

キアシキンシギアブ
この個体は雄

キアシキンシギアブ
この個体は雌