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巣穴を前脚だけを使って掘るアカゴシクモバチ
Anoplius (Arachnophroctonus) reflexus (Smith, 1873)
2010.10.24 津市の豊津海岸において,クモバチ(ベッコウバチ)科のアカゴシクモバチがヤマジハエトリ♀を狩って,巣穴まで運ぶ様子を観察した。
狩ったのは11時20分過ぎ。
狩った場所から約20メートル離れた所に巣穴を掘ったが,その道中アカゴシクモバチはヤマジハエトリの脚を大顎でくわえて後退運搬した。
運搬の途中で何度か蜘蛛を置いたまま進行方向の方面に出かけてなかなか帰って来ないことがあった。巣穴を掘る適当な場所やら運搬経路を探し回っているように見えた。蜘蛛を砂上に置いたまま出かけることも数回あったが,オオフタバムグラの草上に引き上げてから出かけることも二度あった。10分以上戻ってこないときもあったが,ちゃんと狩った蜘蛛の置いてある場所に戻ってきた。
13時過ぎ,巣穴を掘る場所が定まった。狩ってから1時間半以上も経過している。掘る作業は前脚だけを使う。蜘蛛を巣穴の近くに置いて巣穴を掘り始めてからでも,作業を中断して30分以上出歩くことがあった。
巣穴が未完成であるにもかかわらず作業を中断して,巣穴の近くに,2ヶ所(一つは50cm離れたところ,もう一つは1m離れた所)の浅い巣穴を掘った。他にも数ヶ所で巣穴を掘る仕草をした。偽装工作なのか?
14時20分過ぎ,まだ巣穴を掘っている。蜘蛛を狩ってから3時間が経過したにもかかわらず,巣穴は完成していない。
昼食も取らずに観察していたので,いったん砂浜を離れた。
16時半頃,巣穴を訪ねると蜘蛛の姿もアカゴシクモバチの姿も見当たらなかった。巣穴は封鎖されていなかった。
新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,アカゴシクモバチは「体長6~14㎜。黒色で,第1~2腹節は赤色。白色微毛を密生し,特に前伸腹節,後基節上面で顕著。翅は僅かに曇り,外縁はやや広く暗色。♀の前脚付節には櫛歯状の刺の列があり,尾端に剛毛を密生する。ハエトリグモ・コモリグモ類を狩り,地中に単房巣を掘って搬入する。」などとある。
神奈川県昆虫誌Ⅲによると,「海浜などの砂浜に住む。以前は極めて多かったが,今ではそんなに多くない。安定した砂地が減少したということだと思われる。」
三重県内での記録はこれまで無いかもしれない。
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狩った蜘蛛を近く(写真の右下)において,巣穴を掘るアカゴシクモバチ
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狩った蜘蛛をオオフタバムグラの草上に引き上げている。
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巣穴への運搬の途中,狩った蜘蛛の横で体の手入れをするアカゴシクモバチ
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巣穴への運搬の途中,狩った蜘蛛の横で体の手入れをするアカゴシクモバチ
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ヤマジハエトリ♀を大顎でくわえて後退運搬するアカゴシクモバチ
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アカゴシクモバチに狩られたヤマジハエトリ♀
Asianellus festivus
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アカゴシクモバチが営巣場所に選んだ砂浜の様子。コウボウムギと帰化植物のオオフタバムグラが生えている。写真の上部にはチガヤ群落がある。