田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

バイケイソウハバチ

2014-05-25 | ハチ目(膜翅目)

ハバチ科のバイケイソウハバチ Aglaostigma amoorense 

三重県いなべ市藤原町の山に登った.知人から借りた登山靴を履いて,初めての登山を体験.道なき急な尾根筋をひたすら登っていく.しかし,山頂までは体力的に無理と判断し,バイケイソウが群生する谷筋あたりをうろうろして下山.いつ誰が付けてくれたか分からない赤いテープをたどって下るも,登り始めた場所とは全く違ったところにたどり着いてしまった.何人かの仲間がいたので助かったが,一人だったら大変だと悟った.

バイケイソウの群生地でバイケイソウハバチを見つけた.
三重県レッドデータブック2005では絶滅危惧ⅠA類(CR)に選定されていて,体長10センチほどの黒色地に腹部中央部が黄褐色のハバチ.県内では1961年藤原岳での記録が唯一という.
バイケイソウの群生地を結構歩き回ってみたが,私は3頭を見かけただけであった.

バイケイソウは鹿に食べられないようで,他の下草類はほとんど見当たらなかったもののバイケイソウだけは群落を作っていた.
2014.5.16







バイケイソウ群生地

トモエソウの花にトラマルハナバチ

2013-11-18 | ハチ目(膜翅目)

オトギリソウ科のトモエソウの花にミツバチ科のトラマルハナバチBombus diversus

2013.7.7 熊野市紀和町の山道を歩いていて,トモエソウの小群落を見つけ,黄色の花に魅せられていた時,1個の花にトラマルハナバチを見つけた.近づいてもほとんど動かない.今まで見たトラマルハナバチはみな良く動き,飛び回っていた.同僚の一人が手で触っても,このハチは逃げて行かなかった.


シモフリチビコハナバチ

2013-10-24 | ハチ目(膜翅目)

コハナバチ科のシモフリチビコハナバチLasioglossum (Evylaeus) frigidum Sakagami & Ebmer, 1996 

津市河芸町一色の豊津海岸.ハマボウフウの花に集まるシモフリチビコハナバチ.

寺山 守さんの日本産有剣膜翅類目録(2011年版)によると,種の和名は幾留(1994)に従い「・・チビコハナバチ」のような同義の重複形容となることを避けたとして,和名をシモフリチビハナバチとし,分布は北海道,本州,対馬,伊豆諸島.なお,寺山さんはミツバチ科コハナバチ亜科コハナバチ族に分類している.

私は2009年と2011年に同じ海岸で見つけている.6~7月.体長は6ミリほど.その採集データは三重自然誌第13号の『津市北部海浜のハチ目』にコハナバチ科のシモフリチビコハナバチとして記録されている.種の同定はしかるべき方にお願いした.手元の図鑑には載っていない.




イワタチビツヤハナバチの交尾

2012-03-22 | ハチ目(膜翅目)

コシブトハナバチ科のイワタチビツヤハナバチ(別名イワタツヤハナバチ) Ceratina (Ceratina) iwatai Yasumatsu
ミツバチ科のクマバチ亜科に分類されていることもある.

2009.7.19津市河芸町一色の豊津海岸で,ハマゴウの葉裏で交尾するイワタチビツヤハナバチを見つけた.体長はせいぜい5㎜程度だったかと思う.種の同定は知人によるもの.

イワタチビツヤハナバチは手持ちの図鑑には載っていなかったので,ネット検索によると日本の各地に分布しているようで,植物の枯れた茎に巣をつくっているらしい.

先日,龍谷大学瀬田キャンパス内で日本生態学会大会が開かれていて,飛び込みで聴講したら,2012年度中に日本産ハナバチ全種の図鑑が出版される予定であると聞いた.生態写真も全種を網羅したいとのことであった.また,誰でもがハナバチ類の種までの同定ができるように配慮されているらしいし,図鑑によって異なる学名が使われていることなども載せていくようだというから,すごい.なお,生態写真は今のところ全種の半分も集まっていないとのことで,写真提供を呼び掛けていた.





マダラヒメバチ

2011-10-10 | ハチ目(膜翅目)

ヒメバチ科ヒメバチ亜科のマダラヒメバチ Ichneumon yumyum Kriechbaumer

6月の豊津海岸でハマボウフウの花にやってきたヒメバチ。どうやらマダラヒメバチのようである。
『札幌の昆虫』には,マダラヒメバチは「7~8月。13㎜前後。山地。鱗翅類の幼虫」とある。
小学館の図鑑NEO昆虫には「アゲハなどの幼虫に寄生します。ヒメバチ科。14㎜前後。北海道~九州」とある。

2011.6.13

ムネアカオオアリ

2011-03-04 | ハチ目(膜翅目)

アリ科のムネアカオオアリ Camponotus obscuripes

鈴鹿市の小岐須渓谷で2007.4.7に出会っていたアリ,ムネアカオオアリと思われる。

『アリ ハンドブック』によると,「体長7~12㎜と大形で,赤色が目立つ。胸部背縁はゆるやかな弧を描く。色彩に変異があり,体が黒ずむものや,赤色部が完全にない黒化型が時々見られる。森林に生息し,倒木や木の腐朽部に巣を作る。平野部でも見られるが,山地に多い。」




アカアシハヤバチ♂

2011-02-24 | ハチ目(膜翅目)

ジガバチ科のアカアシハヤバチ Tachytes modestus Smith

2010.8.1に津市河芸町赤部の里山でヤブガラシに訪花したハチの名前がようやく判った。アカアシハヤバチという。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,アカアシトガリアナバチの和名で,「体長10~14㎜。オオハヤバチよりやや小形。脚部の腿節の先半部,脛節,跗節は赤褐色である。本州より以南,東南アジア各地に広く分布する。日本における南限は屋久島。」とあり,「和名にはアカアシハヤバチを用いる。」と追記されている。
和名が変更されたようだ。


アカアシハヤバチ♂


アカアシハヤバチを見つける5分前に同じ所で出会ったこのハチは,オオハヤバチTachytes sinensis Smithのようだ。迫力があって,恐々カメラを向けたが,この1枚しか撮れなかった。
新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,オオハヤバチは「大形種で体長は15~23㎜。土中に営巣」し,バッタ類を狩って,幼虫の餌としているようである。

ダイミョウキマダラハナバチ雌

2011-02-17 | ハチ目(膜翅目)

コシブトハナバチ科のダイミョウキマダラハナバチ Nomada japonica Smith

2010.5.21 鈴鹿市国府町でバラ科のたぶんナワシロイチゴに訪花したダイミョウキマダラハナバチを見つけた。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,「体長♀13㎜内外。本属中最大の種。頭・胸部は黒色の地に黄色あるいは赤黄色の斑紋あり。腹部は赤褐色の地に第2節以下幅広い黄帯がある。本種は処女生殖を行うものと思われる。春季出現し,ヒゲナガハナバチに寄生する。分布:日本全土」などとある。

見つかるのは雌ばかりらしい。
Nomada属はいろいろ再検討が行われたとか聞いたことがある。それ以上のことは情報を得ていない。




キアシブトコバチ

2011-02-16 | ハチ目(膜翅目)

アシブトコバチ科のキアシブトコバチ Brachymeria lasus (Walker)

2010.11.17 津市芸濃町の里山の林縁をうろついていて見つけたのは,このキアシブトコバチである。ヒノキの植林があって,1本の木に何匹も居た。以前に立枯木に居るのを見かけたことも有るが,木との因果関係は不明。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,「♀は体長5~7㎜。体は黒色で頭・胸部にはかなり太い臍状点刻あり。後脚の腿節は巨大で先端部は黄色。後脚の基節の内側には1突起があり,脛節の基部および下部は黒色で他は黄色,付節は黄色。♂は♀に酷似するが,触角の繋節の下部に多数の感覚毛を生じ,後脚の基節の内側に突起なし。モンシロチョウ,マイマイガなど極めて多数のチョウ目の蛹に寄生し,時に2次寄生をする。」などとある。


シロスジカタコハナバチ

2011-02-12 | ハチ目(膜翅目)

コハナバチ科のシロスジカタコハナバチ Lasioglossum (Lasioglossum) occidens(Smith, 1873)

2010.8.3津市河芸町赤部地区の里山でヤブガラシに訪花したコハナバチの種名がようやく明らかとなった。シロスジカタコハナバチである。

分布は北海道,本州,四国,九州,対馬,屋久島,朝鮮半島,台湾,中国.
伊豆諸島での調査では4月下旬から10月末までに良く採れている。
『鈴鹿市の自然』には,市内各所から12頭の記録がある。個体数も多い普通種のようである。
手持ちの図鑑には載っていないので,こんな程度くらいしか情報が得られていない。

アシアカツヤアシブトコバチ雌

2011-02-10 | ハチ目(膜翅目)

アシブトコバチ科のアシアカツヤアシブトコバチ雌 Antrocephalus dividens (Walker,1860)

2010.7.30津市安濃川の河川敷で見つけたアシブトコバチはアシアカツヤアシブトコバチと同定された。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,「♀は体長5㎜前後。前翅はやや曇る。後脚の基節,転節,腿節,および脛節の先端部は赤色。触角は複眼下縁より下に生じる。♂は後脚が大部分黒色。寄主は不明。」などとある。

福井県産昆虫リストを見ると,アカアシツヤアシブトコバチ  Antrocephalus apicalis apicalis(Walker)というのがある。
これはどうもシノニムのようである。

和名も二通りあるが,とにかく和名も学名も新訂原色昆虫大図鑑Ⅲに依った。


キオビツヤハナバチ雌

2011-02-07 | ハチ目(膜翅目)

コシブトハナバチ科のキオビツヤハナバチ Ceratina flavipes Smith

2010.7.12 津市の豊津海岸でヤブガラシに訪花した小さな蜂を見つけていた。体長は7.5mm。このほど種名が明らかとなった。キオビツヤハナバチ雌である。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲに,ヤマトツヤハナバチの「近似種にやや小型のC.flavipes Smithがあり,♀同士の識別は極めて困難。」とある。

『鈴鹿市の自然』ではミツバチ科として記録されている。『神奈川県昆虫誌Ⅲ』ではフトハナバチ科クマバチ亜科で記録されている。

キオビコハナバチやニセキオビコハナバチという種もあるから,キオビだけを見ていると間違えそうである。
難儀なことだこと。




シダクロスズメバチ

2010-12-18 | ハチ目(膜翅目)

スズメバチ科シダクロスズメバチ Vespula shidai Ishikawa,Yamana et Wagner

津市美杉町の大洞山,標高700m付近のキャンプ場あたり。草地にハチが止まった。こんな高所の寒い日に飛ぶ蜂がいたのに驚いた。シダクロスズメバチではないかと思う。

ウィキペディアに,「シダクロスズメバチは海抜約300m以上の山林や高地に好んで生息し,クロスズメバチよりもやや大きく、巣は褐色で形成するコロニーもやや大型になることが多い。」と書いてある。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,クロスズメバチの近縁種シダクロスズメバチは「働きバチ,女王バチの頭盾の縦黒条が頭盾の前縁に到達すること,複眼凹部の白斑が強くえぐれること,♂大腮の基部に三角形の黒斑があることでクロスズメバチから区別できる。」

『札幌の昆虫』によると,シダクロスズメバチの体長は女王で16~19㎜,働きバチで10~14㎜,♂で14~16㎜という。

2010.12.12

溺れるマメコガネコツチバチ雌とアカアシクロツチバチ雌

2010-10-31 | ハチ目(膜翅目)

コツチバチ科のマメコガネコツチバチ♀ Tiphia popilliavora Rohwer

津市の豊津海岸。砂浜に放置されたいくつかの水槽のひとつに雨水がいっぱい溜まっている。その中で小さな2匹のハチが脚を動かしている。溺れているのだ。
足元にあったイネ科の穂を放り込んでやると,しがみついてきた。水槽の縁に穂を引き寄せると,ハチが自力で水槽の壁を登ってきた。

ハチはアカアシクロツチバチのペアーかと思っていたが,穂にしがみいてきた個体の翅に明瞭な縁紋がない。知人に確認してもらうと,この個体はマメコガネコツチバチ♀ と判った。体長は8ミリを少し越えるくらいで,アカアシクロツチバチの雄よりも少し大きく雌よりも少し小さい。

てっきりアカアシクロツチバチが仲良く雌雄揃って水でも飲みにきて,この日は西風が強かったので水槽内に落ちてしまったのだろうと思い込んでいた。2種類のコツチバチだったとは。本当に同定は難しい。
水に濡れた翅では水面から飛び立てないようだ。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,アカアシクロツチバチの「♂は全体黒色。第5腹板両側の歯状突起は小さく,前胸背板の横隆起は側方で角をなして突出する。」などとある。
マメコガネコツチバチについては,私は何も資料を持ち合わせていない。何に載っているのだろう。

2010.10.30

水面から水槽の壁面を這い上がるマメコガネコツチバチ雌


水槽から脱出したコツチバチ科のアカアシクロツチバチ♀ Tiphia biseculata Allen et Jaynes,1930

砂浜にアカアシクロツチバチ

砂浜のアカゴシクモバチ 蜘蛛を狩る

2010-10-27 | ハチ目(膜翅目)

巣穴を前脚だけを使って掘るアカゴシクモバチ Anoplius (Arachnophroctonus) reflexus (Smith, 1873)

2010.10.24 津市の豊津海岸において,クモバチ(ベッコウバチ)科のアカゴシクモバチがヤマジハエトリ♀を狩って,巣穴まで運ぶ様子を観察した。

狩ったのは11時20分過ぎ。
狩った場所から約20メートル離れた所に巣穴を掘ったが,その道中アカゴシクモバチはヤマジハエトリの脚を大顎でくわえて後退運搬した。
運搬の途中で何度か蜘蛛を置いたまま進行方向の方面に出かけてなかなか帰って来ないことがあった。巣穴を掘る適当な場所やら運搬経路を探し回っているように見えた。蜘蛛を砂上に置いたまま出かけることも数回あったが,オオフタバムグラの草上に引き上げてから出かけることも二度あった。10分以上戻ってこないときもあったが,ちゃんと狩った蜘蛛の置いてある場所に戻ってきた。

13時過ぎ,巣穴を掘る場所が定まった。狩ってから1時間半以上も経過している。掘る作業は前脚だけを使う。蜘蛛を巣穴の近くに置いて巣穴を掘り始めてからでも,作業を中断して30分以上出歩くことがあった。
巣穴が未完成であるにもかかわらず作業を中断して,巣穴の近くに,2ヶ所(一つは50cm離れたところ,もう一つは1m離れた所)の浅い巣穴を掘った。他にも数ヶ所で巣穴を掘る仕草をした。偽装工作なのか?

14時20分過ぎ,まだ巣穴を掘っている。蜘蛛を狩ってから3時間が経過したにもかかわらず,巣穴は完成していない。
昼食も取らずに観察していたので,いったん砂浜を離れた。
16時半頃,巣穴を訪ねると蜘蛛の姿もアカゴシクモバチの姿も見当たらなかった。巣穴は封鎖されていなかった。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,アカゴシクモバチは「体長6~14㎜。黒色で,第1~2腹節は赤色。白色微毛を密生し,特に前伸腹節,後基節上面で顕著。翅は僅かに曇り,外縁はやや広く暗色。♀の前脚付節には櫛歯状の刺の列があり,尾端に剛毛を密生する。ハエトリグモ・コモリグモ類を狩り,地中に単房巣を掘って搬入する。」などとある。

神奈川県昆虫誌Ⅲによると,「海浜などの砂浜に住む。以前は極めて多かったが,今ではそんなに多くない。安定した砂地が減少したということだと思われる。」

三重県内での記録はこれまで無いかもしれない。


狩った蜘蛛を近く(写真の右下)において,巣穴を掘るアカゴシクモバチ


狩った蜘蛛をオオフタバムグラの草上に引き上げている。


巣穴への運搬の途中,狩った蜘蛛の横で体の手入れをするアカゴシクモバチ


巣穴への運搬の途中,狩った蜘蛛の横で体の手入れをするアカゴシクモバチ


ヤマジハエトリ♀を大顎でくわえて後退運搬するアカゴシクモバチ


アカゴシクモバチに狩られたヤマジハエトリ♀Asianellus festivus

アカゴシクモバチが営巣場所に選んだ砂浜の様子。コウボウムギと帰化植物のオオフタバムグラが生えている。写真の上部にはチガヤ群落がある。