山口県光市。白砂青松の海岸線を有し、市政に「やさしさ」を織り込んだ、人口約54,000人の小さな町です。昨年5月会派の視察でこの町を訪れました。光市では以前このブログで紹介しましたが、「おっぱい宣言のまち」というユニークな取り組みが行われています。お母さんが子どもをしっかり抱いて母乳で育てていこうとするものです。お母さんの胸に抱かれて母乳を吸っている子どもの姿は、まさに最高に安らいだ表情です。中には母乳の出ないお母さんもありますが、しっかり子どもを抱きしめて育てる大切さを認識してもらおうといった取り組みです。
この光市で13年前、ショッキングな事件が起きました。当時18才の青年が民家に押し入り当時23才の母親と生後11ヶ月の幼女を殺害するという「光市母子殺人事件」です。この事件の裁判で20日、死刑が確定しました。長い裁判の中で裁判官たちも、少年が起こした事件に対して死刑を適用すべきかどうかで揺れ動いたのでした。
最愛の妻と子を失った被害者の夫であり父親である木村洋さんが、これまで気丈夫にインタビューに答える姿には痛々しさを感じました。これまで多くの誹謗中傷にさらされてきたのではないかと思います。彼の「犯罪に勝者はない」という言葉に象徴されるように、この事件で多くのものが失われ、多くの人が悲しみにつつまれました。
この事件を起こした青年は子どものとき父親からひどい虐待を受けていました。殴る蹴るは日常で、逆さに吊るされ水風呂に漬けられたこともあったそうです。この少年が子どもの時から、お母さんの胸に抱かれておっぱいを吸って、両親の愛につつまれて育ったなら、こんな事件は起こらなかったのではないかと思うと、やりきれない。そして今もどこかで、幼い子どもたちが親から虐待を受けて泣き叫んでいるのです。