豆の育種のマメな話

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米国を追い越した南米の大豆生産

2011-02-27 16:51:06 | 南米の大豆<豆の育種のマメな話>

世界の大豆生産量は,植物油と畜産飼料の需要が拡大する中で年々増加し,2007年には22,053tに達した。国別にみると,1位米国7,286t2位ブラジル5,786t3位アルゼンチン4,748t,そして4位中国,5位インド,6位パラグアイと続く。この中で,南米各国の生産量の伸びが著しく,この10年間で24培の伸びである。

生産量は1960年代から増加傾向にあったが,60年代から80年代にかけては米国の生産量が世界の6080%を占めていた。南米の大豆生産は,1970年代前半のいわゆる食糧危機を契機に増加し始め,その後,旧ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議した米国の対ソ穀物禁輸(1979年),途上国の需要増,大豆価格の優位性や大型機械化などを背景にしながら増加を続け,90年代後半からは急激な増加を示している。南米の生産量は2002年に米国を抜き,2007年には世界の51%を占めるに至った。

南米の大豆生産はなぜ急増し,米国の地位を脅かすほどの競争力をつけてきたのか。生産を躍進させた主な要因として,①新たに耕地化が可能な土地資源が豊富であった。②大型農業機械導入による大規模生産が可能になった。③亜熱帯地帯に適応する品種,二期作を可能にした早生品種,病害虫抵抗性品種など多くの品種が開発された。④不耕起栽培の導入により収量が安定し,遺伝子組換え大豆(GM大豆,グリホサート系除草剤耐性)の普及により生産コストが低減された。⑤優良種子の販売から流通,輸送,加工に至る外国籍企業の投資を受け入れ,技術水準が高まった。⑥通貨の切り下げにより輸出競争力が強化された。⑦需要の増大,特に中国の輸入増が誘因となった。⑧バイオエタノール需要による価格高騰などが考えられる。

◆中国の輸入が生産増を誘う 

南米で生産される大豆及び大豆油は大部分が輸出用である。各国の輸出品目の中で大豆及び大豆製品の割合はブラジル30%,アルゼンチン60%,パラグアイ56%と極めて高い。

ブラジル及びアルゼンチンの大豆輸出先は,当初EU諸国が主体であったが,90年代後半になると食生活の高度化が進んだ中国への輸出量が急激に増加した。中国の輸入拡大が南米における大豆生産の意欲を高めたといっても過言ではない。

 参照:土屋武彦2010「南米における大豆生産の実態」農業1529:53-58 

大豆の生産量(千トン,上図)と輸入量(千トン,下図)

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