豆の育種のマメな話

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「マンリョウ(万両)」が北海道で咲いた、恵庭の花-10

2015-11-10 11:47:37 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

鉢植えの「マンリョウ」

昨年鉢植えしたばかりの「マンリョウ」が,北海道恵庭にある拙宅ベランダで花をつけた。注意しないと見落としそうな可憐な姿である。この植物は,昨年伊豆下田の庭に実生していた苗を持参したものである。

マンリョウの分布地は本州(関東地方以西)~沖縄,中国,台湾,東南アジア,インドなど温暖な地方とされる(鈴木康夫「樹木図鑑」日本文芸社2005など)。北国での越冬は難しいと考え室内で育てたが,冬を越して夏が過ぎた10月末に1本だけが開花した。暖地では,7~8月頃に開花,10~11月頃に赤く熟し,翌年2月頃まで実を残す習性があると言う。が,10~11月の開花は低温下の北海道で生育が遅延したためだろう。結実に至るか否かはまだわからない。写真をご覧頂くと分かるが,昨年の赤い実がまだ残っている。

 

「マンリョウ」(万両,Ardisia crenata)は,サクラソウ科ヤブコウジ属の常緑小低木(樹高は0.3~1m)である。葉は縁が波打ち鋸歯状で互生,花は白,花冠は5つに深く裂け,裂片は反り返る。小枝の先に散形花序をなし,果実は液果で赤い実を着ける(黄色や白色の園芸種もある)。茎は年月を経ても太くならず,根元から新しい幹を出し株立ちとなる特性があると言う。

  

冬に熟する赤い実は濃緑の葉に映えて美しい。和名「万両」は名前の縁起が良いことから,「センリョウ(千両)Chloranthus glabra」とともに縁起物として正月の飾りに使われる。花のない正月にこれらの植物を使う習慣は,クリスマスにヒイラギを使う習慣にも似ている。

今回開花をみた個体(写真)の花色は白にピンクがかかっている。書物やネット情報によれば花色は白となっているので,この個体の花色は明らかに異なる。この個体は,山の暮らしをしていた亡父が伊豆の持ち山から庭に移植した「万両」に由来する実生と考えられる。「万両」は古典園芸植物のひとつで江戸時代に多くの変異種が作出されていることから,伊豆産の自生種由来の園芸品種があったとしても不思議ではない。

また,葉の波打つ形状も大きいように思われるが,品種の違いなのか。ウイルス感染の縮葉ではないかと調べていたら,「万両」の葉が波状に膨れている部分には共生細菌が詰まった部屋があるのだと言う。そうなると,この変異は何とも言えない。

もう一つ,次のような情報もある。「マンリョウ」がフロリダ州で外来有害植物(Exotic Pest Plants)に指定されていると言う。異なった地域に移動した動植物が,原産地とは全く異なった条件で爆発的に繁殖する事例は数多く報告されている事ではあるが,日本における園芸植物「万両」からは想像できない姿である。

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