竹取翁と万葉集のお勉強

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古今和歌集 原文推定 巻九

2020年02月02日 | 古今和歌集 原文推定 藤原定家伊達本
己々末幾仁安多留未幾
ここのまきにあたるまき
巻九

多比乃宇多
羈旅哥
羈旅哥

歌番号四〇六
毛呂己之尓天川幾遠美天与美个留
もろこしにて月を見てよみける
唐にて月を見て詠みける

安部乃奈可万呂
安倍仲麿
安倍仲麿

原文 安万乃者良布利左計美礼者加寸可奈留美可左乃夜万尓以天之川幾加毛
定家 あまの原ふりさけ見れはかすかなるみかさの山にいてし月かも
解釈 天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも

己乃宇多者武可之奈可万呂遠毛呂己之尓毛乃奈良波之尓
この哥はむかしなかまろをもろこしにものならはしに
この哥は昔仲麿を唐に物習はしに

徒可八之多利个留尓安万多乃止之遠部天衣加部利末宇天己左利个留遠
つかはしたりけるにあまたのとしをへてえかへりまうてこさりけるを
遣はしたりけるにあまたの年を経てえ帰り参うて来さりけるを

己乃久尓与利万多徒可日万可利以多利个留尓多久日天万宇天幾奈武止天
このくにより又つかひまかりいたりけるにたくひてまうてきなむとて
この国よりまた遣ひ参り至りけるにたくひて参うて来なむとて

以天多知个留尓女以之宇止以不止己呂乃宇美部尓天加乃久尓乃比止
いてたちけるにめいしうといふ所のうみへにてかのくにの人
いて立ちけるに明州といふ所の海辺にてかの国の人

武万乃者奈武計志个利与留尓奈利天川幾乃以止於毛之呂久
むまのはなむけしけりよるになりて月のいとおもしろく
餞別しけり夜になりて月のいとおもしろく

左之以天多利个留遠美天与女留止奈武加多利徒多不累
さしいてたりけるを見てよめるとなむかたりつたふる
射しいてたりけるを見て詠めるとなむ語り伝ふる

歌番号四〇七
於幾乃久尓々奈可佐礼个留止幾尓布祢尓乃利天以天多川止天
おきのくにゝなかされける時に舟にのりていてたつとて
隠岐の国に流されける時に舟に乗りて出で立つとて

美也己奈留比止乃毛止尓川可八之个留
京なる人のもとにつかはしける
京なる人の許に遣はしける

遠乃々多可武良乃安曽无
小野たかむらの朝臣
小野篁朝臣

原文 和多乃波良也曽之万加計天己幾以天奴止比止尓者川个与安万乃川利布祢
定家 わたのはらやそしまかけてこきいてぬと人にはつけよあまのつり舟
解釈 わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと人には告げよ海人の釣舟

歌番号四〇八
多以之良寸
題しらす
題知らず

与三比止之良寸
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 美也己以天々遣不美可乃者良以川美加者加者可世左武之己呂毛可世夜万
定家 都いてゝ今日みかの原いつみ河かは風さむし衣かせ山
解釈 都出でて今日瓶の原泉河川風寒し衣かせ山

歌番号四〇九
原文 保乃/\止安加之乃宇良乃安左幾利尓之万加久礼由久布祢遠之曽於毛不
定家 ほの/\と明石の浦の朝霧に島かくれ行舟をしそ思
解釈 ほのぼのと明石の浦の朝霧に島隠れ行く舟をしぞ思ふ

己乃宇多者安留比止乃以者久加幾乃毛止比止万呂可宇多奈利
このうたはある人のいはく柿本人麿か哥也
この哥はある人の曰はく柿本人麿が哥也

歌番号四一〇
安徒万乃可多部止毛止寸留比止飛止利布多利以左奈日天以幾个利
あつまの方へ友とする人ひとりふたりいさなひていきけり
東の方へ友とする人一人二人誘ひて行きけり

美可者乃久尓也徒者之止以不止己呂尓以多利个留尓曽乃加者乃保止利尓
みかはのくにやつはしといふ所にいたりけるにその河のほとりに
三河の国八つ橋といふ所に至りけるにその河の辺に

加幾川者多以止於毛之呂久左个利个留遠美天幾乃可个尓於利為天
かきつはたいとおもしろくさけりけるを見て木のかけにおりゐて
かきつばたいとおもしろく咲けりけるを見て木の蔭に降り居て

加幾川者多止以不以川毛之遠久乃可之良尓寸部天多日乃己々呂遠
かきつはたといふいつもしをくのかしらにすへてたひの心を
かきつばたと云ふ五文字を句の頭に据て旅の心を

与万武止天与女留
よまむとてよめる
詠まむとて詠める

安利八良乃奈利比良安曽无
在原業平朝臣
在原業平朝臣

原文 加良己呂毛幾川々奈礼尓之川万之安礼者波留/\幾奴留太日遠之曽於毛不
定家 唐衣きつゝなれにしつましあれははる/\きぬるたひをしそ思
解釈 唐衣着つつなれにしつましあればはるばる来ぬる旅をしぞ思ふ

歌番号四一一
武左之乃久尓止之毛川不左乃久尓止乃奈加尓安留寸美多加者乃本止利尓以多利天
むさしのくにとしもつふさのくにとの中にあるすみた河のほとりにいたりて
武蔵の国と下総の国との中にある隅田河の辺に至りて

美也己乃以止己日之宇於保衣个礼者志者之加者乃保止利尓於利為天於毛日也礼者
みやこのいとこひしうおほえけれはしはし河のほとりにおりゐて思ひやれは
京のいと恋ひしう覚えけれはしばし河の辺に降り居て思ひやれは

加幾利奈久止遠久毛幾尓个留可那止於毛日和比天奈可女遠留尓
かきりなくとをくもきにけるかなと思ひわひてなかめをるに
限りなく遠くも来にけるかなと思ひわひて眺めをるに

和多之毛利者也布祢尓乃礼比久礼奴止以比个礼八布祢尓乃利天和多良武止寸留尓
わたしもりはや舟にのれ日くれぬといひけれは舟にのりてわたらむとするに
渡し守はや舟に乗れ日暮れぬといひければ舟に乗りて渡らむとするに

美奈比止毛乃和比之久天美也己尓於毛不比止奈久之毛安良寸
みな人ものわひしくて京におもふ人なくしもあらす
皆人物侘しくて京に想ふ人なくしもあらす

左累於利尓志呂幾止利乃者之止安之止安可幾加者乃保止利尓安曽比个利
さるおりにしろきとりのはしとあしとあかき河のほとりにあそひけり
さる折りに白き鳥の嘴と脚と赤き河の辺にあそひけり

美也己尓者美衣奴止利奈利个礼盤三奈比止美之良寸和多之毛利尓己礼者奈尓
京には見えぬとりなりけれはみな人見しらすわたしもりにこれはなに
京には見えぬ鳥なりけれは皆人見知らず渡し守にこれはなに

止利曽止々比个礼波己礼奈武美也己止利止以日个留遠幾々天与女留
とりそとゝひけれはこれなむみやことりといひけるをきゝてよめる
鳥ぞと問ひければこれなむ都鳥と云ひけるを聞きて詠める

原文 奈尓之於者々以左己止止者武美也己止利和可於毛不比止者安利也奈之也止
定家 名にしおはゝいさ事とはむ宮ことりわか思ふ人はありやなしやと
解釈 名にし負はばいざ言問はむ都鳥我が思ふ人はありやなしやと

歌番号四一二
多以之良寸
題しらす
題知らず

与三比止之良須
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 幾多部由久加利曽奈久奈留川礼天己之加寸者多良天曽可部留部良奈留
定家 北へ行かりそなくなるつれてこしかすはたらてそかへるへらなる
解釈 北へ行く雁ぞ鳴くなる連れて来し数は足らでぞ帰るべらなる

歌番号四一三
己乃宇多者安留比止於止己遠无奈毛呂止毛尓比止乃久尓部万可利个利
このうたはある人おとこ女もろともに人のくにへまかりけり
この哥はある人男女もろともに人の国へ任かりけり

於止己万可利以多利天寸奈者知三万可利尓个礼者遠无奈比止利美也己部
おとこまかりいたりてすなはち身まかりにけれは女ひとり京へ
男任かり至たりてすなはち身罷りにけれは女独り京へ

加部利个留美知尓加部留可利乃奈幾个留遠幾々天与女留止奈武以不
かへりけるみちにかへるかりのなきけるをきゝてよめるとなむいふ
帰へりける道に帰る雁の鳴きけるを聞きて詠めるとなむ云ふ

安徒万乃可多与利美也己部万宇天久止天美知尓天与女留
あつまの方より京へまうてくとてみちにてよめる
東の方より京へ参うてくとて道にて詠める

於止
おと


原文 夜万加久寸者留乃可寸美曽宇良女之幾以川礼美也己乃左可日奈留良武
定家 山かくす春の霞そうらめしきいつれみやこのさかひなる覧
解釈 山隠す春の霞ぞ恨めしきいづれ都のさかひなるらむ

歌番号四一四
己之乃久尓部万可利个留止幾志良夜万遠美天与女留
こしのくにへまかりける時しら山を見てよめる
越の国へ任かりける時白ら山を見て詠める

美川祢
みつね
凡河内躬恒

原文 幾衣者川留止幾之奈个礼者己之知奈留之良夜万乃奈八由幾尓曽安利个留
定家 きえはつる時しなけれはこしちなる白山の名は雪にそありける
解釈 消えはつる時しなければ越路なる白山の名は雪にぞありける

歌番号四一五
安徒末部万可利个留止幾美知尓天与女留
あつまへまかりける時みちにてよめる
東へ任かりける時道にて詠める

徒良由幾
つらゆき
紀貫之

原文 以止尓与留毛乃奈良奈久尓和可礼知乃己々呂本曽久毛於毛本由留可奈
定家 いとによる物ならなくにわかれちの心ほそくもおもほゆる哉
解釈 糸による物ならなくに別路の心細くも思ほゆるかな

歌番号四一六
加飛乃久尓部万可利个留止幾美知尓天与女留
かひのくにへまかりける時みちにてよめる
甲斐の国へ任かりける時道にて詠める

美川子
みつね
凡河内躬恒

原文 与遠左武美遠久者川之毛遠者良日川々久左乃末久良尓安万多々日祢奴
定家 夜をさむみをくはつ霜をはらひつゝ草の枕にあまたゝひねぬ
解釈 夜を寒み置く初霜を払ひつつ草の枕にあまた旅寝ぬ

歌番号四一七
堂知万乃久尓乃由部万可利个留止幾尓布多三乃宇良止以不止己呂尓
たちまのくにのゆへまかりける時にふたみのうらといふ所に
但馬の国の温泉へ参かりける時に二見の浦といふ所に

止万利天由不左利乃加礼以比堂宇部个留尓止毛尓安利个留比止/\乃
とまりてゆふさりのかれいひたうへけるにともにありける人/\の
泊まりて夕ふさりの干飯食へけるに伴に有りける人々の

宇多与三个留徒以天尓与女留
うたよみけるついてによめる
哥詠みけるついてに詠める

布知八良乃加祢寸計
ふちはらのかねすけ
藤原兼輔

原文 由不徒久与於保川可奈幾遠堂満久之計布多三乃宇良八安遣保乃天己曽美女
定家 ゆふつくよおほつかなきを玉匣ふたみの浦は安遣保乃てこそ見め
解釈 夕づく夜おぼつかなきを玉匣二見浦は明けてこそ見め

歌番号四一八
己礼堂可乃美己乃止毛尓加利尓万可利个留止幾尓安末乃加者止以不止己呂乃
これたかのみこのともにかりにまかりける時にあまの河といふ所の
惟喬親王の伴に狩りに参かりける時に天の河といふ所の

加者乃保止利尓於利為天左計奈止乃美个留川以天尓美己乃以比个良久加里之天
河のほとりにおりゐてさけなとのみけるついてにみこのいひけらくかりして
河の辺に降り居て酒肴と飲など飲みけるついてに親王のいひけらく狩りして

安万乃可八良尓以多留止以不己々呂遠与三天左可川幾者左世止以日个礼八与女留
あまのかはらにいたるといふ心をよみてさかつきはさせといひけれはよめる
天の河原に到るといふ心を詠みて盃はさせと云ひけれは詠める

安利八良乃奈利比良乃安曽无
在原なりひらの朝臣
在原業平朝臣

原文 加里久良之堂奈者多川女尓也止可良武安万乃加八良尓和礼者幾尓个利
定家 かりくらしたなはたつめにやとからむあまのかはらに我はきにけり
解釈 狩り暮らし棚機女に宿借らむ天の河原に我は来にけり

歌番号四一九
美己々乃宇多遠可部之々与美川々可部之衣世寸奈利尓个礼八止毛尓者部利天与女留
みこゝのうたを返ゝよみつゝ返しえせすなりにけれはともに侍てよめる
親王この哥を返す返す詠みつつ返しえせすなりにけれは伴に侍て詠める

幾乃安利川祢
きのありつね
紀有常

原文 飛止々世尓比止多日幾万寸幾三万天八也止可寸比止毛安良之止曽於毛不
定家 ひとゝせにひとたひきます君まてはやとかす人もあらしとそ思
解釈 一年に一度来ます君待てば宿貸す人もあらじとぞ思ふ

歌番号四二〇
寸左久為无乃奈良尓於八之末之多利个留止幾尓多武計夜万尓天与三个留
朱雀院のならにおはしましたりける時にたむけ山にてよみける
朱雀院の奈良におはしましたりける時に手向山にて詠みける

寸可八良乃安曽无
すかはらの朝臣
菅原朝臣

原文 己乃多比者奴左毛止利安部須堂武計夜万毛美知乃尓之幾加美乃末尓/\
定家 このたひはぬさもとりあへすたむけ山紅葉の錦神のまに/\
解釈 このたびは幣もとりあへず手向山紅葉の錦神のまにまに

歌番号四二一
曽世以保宇之
素性法師

原文 堂武計尓者川々利乃曽天毛幾留部幾尓毛美知尓安个留加美也加部左武
定家 たむけにはつゝりの袖もきるへきにもみちにあける神やかへさむ
解釈 手向けにはつづりの袖も着るべきに紅葉にあける神や返さむ

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