忘却への扉

 日記? 気づいたこと 何気ないひとこま 明日への伝言 願い 子供たちに 孫たちに そしてあなたに・・ 

おとうとの

2005-02-04 | 追憶
 一番古い記憶にある弟は、誕生した時である。もう使わなくなった養蚕の大きな家を、住居に改造した一室で暮らしていた。その部屋で弟は生まれた。多分としか言えないが、私もそうだろう。
 夜、布団に寝ている母。産婆をしている母の姉が来ており、何かと世話をし指示をだす。十人余の子供を産んだ祖母も準備に忙しい。
 赤ちゃんが生まれるから、静かにしているようにと聞かされている。慌しい様子を黙って見守っていた。「もう外に出て」と言われ、緊迫感の中納得できずに部屋の外。障子戸の近く座って待つ。伯母だろうか、誰かの手が肩にあった。
 もう入っていいと産婆の役目が済んだ叔母の声、「さあ赤ちゃんをよく見て、弟だよ」電灯の明かりの下でちっちゃな手足の赤い男の子が、しわくちゃな顔で泣いていた。皆喜んでいる。私も嬉しかった。