《 政府検討 》 【 実践想定の体制強化 「 自衛官の医療行為拡大」 】 2014/1/28 地方紙記事より
[政府は、他国から武力攻撃を受けた有事に際して、救急救命士の資格を持ち負傷者搬送に従事する自衛官が担う医療行為の範囲を拡大する方向で検討に入った。安倍政権下で本格化した集団的自衛権の行使容認論を踏まえ、より実践的な後方支援を構築する必要があると判断した。自衛隊法や救急救命士法の改正も視野に厚生労働省や関係団体と調整する。政府関係者が27日、明らかにした。
現行の救急救命士に①心肺停止した負傷者の気管内にチューブを入れて気道を確保②輸液―などを認めているが、呼吸を確保するための気管切開といった高度な技術が必要な医療行為は認めていない。有事でも、救急救命士の資格を持つ自衛官は同法の適用を受ける。
関係者によると、米軍が2001年以降、アフガニスタン戦争やイラク戦争で、一部の衛生兵に気管切開などの医療行為を認めたところ、止血など従来の応急処置しかできない場合に比べて兵士の死亡率が低下する効果があった。
防衛省は米軍のデータを参考に、自衛隊各部隊の衛生科に所属する隊員が気管切開や、胸に針を刺して水や空気を外に排出する治療を行えるような特例措置を検討。5年以内の実現を目指すこととした。
ただ「有事だからという理由で無制限に認めるのは危険だ」〈政府関係者〉との指摘もある。民間人負傷者への治療は対象外とする方向だ。
自衛隊の衛生科隊員は全国に約9千人いる。内救急救命士の資格を持つのは約700人。各地の自衛隊関連の病院に配置されているケースが多い。これに対し医師の資格を持つ医官は約800人で、有事に不足する可能性が指摘されている。]
《 解説 》 【 「好戦的」国内外懸念も 】
[政府が、救急救命士の資格を持つ市営隊員の医療行為拡大を検討するのは、有事の際の隊員の命を考えると当然の対応と言える。ただ、安倍晋三首相が「積極的平和主義」を掲げ集団的自衛権の行使容認を目指す状況で、生々しい実戦を想定した法整備は国内外から「戦闘する気なのか」との懸念も出そうだ。
現状では、爆撃などによって隊員が重傷を負った場合、呼吸を確保するためには、医師資格を持つ医官が待機する安全な地点まで搬送しなければならない。即応力に欠けており、時間がかかれば退院の生命に関わる。
こうした課題に自衛隊法や救急救命士法の改正を視野に対応するのは「血が流れては遅い」(政府関係者)との判断があるためだ。
ただ安倍政権は、これまでの政権よりも自衛隊の活用に積極的だ。集団的自衛権の行使を容認すれば、自衛隊がこれまで以上に危険な地域に派遣される可能性は高まる。
首相は先に、日本と中国との緊張関係を、第1次大戦の英国・ドイツ関係を例に説明した。武力衝突回避が真意だと説明したが、「武力衝突を否定しなかった」と受け止めた欧米メディアもあった。首相が「好戦的」とも受け取られかねない状況の中では、法整備の本来の趣旨が曲解される恐れもある。]
[政府は、他国から武力攻撃を受けた有事に際して、救急救命士の資格を持ち負傷者搬送に従事する自衛官が担う医療行為の範囲を拡大する方向で検討に入った。安倍政権下で本格化した集団的自衛権の行使容認論を踏まえ、より実践的な後方支援を構築する必要があると判断した。自衛隊法や救急救命士法の改正も視野に厚生労働省や関係団体と調整する。政府関係者が27日、明らかにした。
現行の救急救命士に①心肺停止した負傷者の気管内にチューブを入れて気道を確保②輸液―などを認めているが、呼吸を確保するための気管切開といった高度な技術が必要な医療行為は認めていない。有事でも、救急救命士の資格を持つ自衛官は同法の適用を受ける。
関係者によると、米軍が2001年以降、アフガニスタン戦争やイラク戦争で、一部の衛生兵に気管切開などの医療行為を認めたところ、止血など従来の応急処置しかできない場合に比べて兵士の死亡率が低下する効果があった。
防衛省は米軍のデータを参考に、自衛隊各部隊の衛生科に所属する隊員が気管切開や、胸に針を刺して水や空気を外に排出する治療を行えるような特例措置を検討。5年以内の実現を目指すこととした。
ただ「有事だからという理由で無制限に認めるのは危険だ」〈政府関係者〉との指摘もある。民間人負傷者への治療は対象外とする方向だ。
自衛隊の衛生科隊員は全国に約9千人いる。内救急救命士の資格を持つのは約700人。各地の自衛隊関連の病院に配置されているケースが多い。これに対し医師の資格を持つ医官は約800人で、有事に不足する可能性が指摘されている。]
《 解説 》 【 「好戦的」国内外懸念も 】
[政府が、救急救命士の資格を持つ市営隊員の医療行為拡大を検討するのは、有事の際の隊員の命を考えると当然の対応と言える。ただ、安倍晋三首相が「積極的平和主義」を掲げ集団的自衛権の行使容認を目指す状況で、生々しい実戦を想定した法整備は国内外から「戦闘する気なのか」との懸念も出そうだ。
現状では、爆撃などによって隊員が重傷を負った場合、呼吸を確保するためには、医師資格を持つ医官が待機する安全な地点まで搬送しなければならない。即応力に欠けており、時間がかかれば退院の生命に関わる。
こうした課題に自衛隊法や救急救命士法の改正を視野に対応するのは「血が流れては遅い」(政府関係者)との判断があるためだ。
ただ安倍政権は、これまでの政権よりも自衛隊の活用に積極的だ。集団的自衛権の行使を容認すれば、自衛隊がこれまで以上に危険な地域に派遣される可能性は高まる。
首相は先に、日本と中国との緊張関係を、第1次大戦の英国・ドイツ関係を例に説明した。武力衝突回避が真意だと説明したが、「武力衝突を否定しなかった」と受け止めた欧米メディアもあった。首相が「好戦的」とも受け取られかねない状況の中では、法整備の本来の趣旨が曲解される恐れもある。]