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判例紹介
建物賃貸借契約が賃借人の更新拒絶・期間満了によって終了した場合、通知後6ヵ月を経過し、期間が満了したときには、転貸借関係も終了するとされた事例 (東京高裁平成11年6月29日判決。判例時報1694号90頁)
(事実)
A(賃貸人)は、昭和51年12月1日、B(賃借人・転貸人)に対し、本件ビルを期間20年と定めて賃貸した。 C(転借人・再転貸人)は、Bから右ビルの一部を転借し、D(再転借人)及びE(再転借人)に対し再転貸していた。 Bは、採算が悪化したため、平成6年2月21日、Aに対し、本件賃貸借契約の期間満了後は賃貸借契約を更新しない旨の通知をした。
そこで、Aは、平成7年2月頃、BCDEに対し、本件賃貸借は期間満了により終了し、BCDEの転貸借も終了する旨通知し、BCDEの転借権が右通知後6ヵ月を経過し、かつ、本件賃貸借の期間が満了した平成8年11月30日をもって終了したとして、所有権に基づき、BCDEに対し建物明渡しと賃料相当損害金の支払を求めた。
(争点)
賃貸借が賃借人の更新拒絶・期間満了によって終了した場合に、賃借人が賃借権を放棄した場合あるいは賃貸人と賃借人が合意解除した場合と同様に、転貸借が終了しないと解することができるか。
(判決要旨)
東京高等裁判所は、1審判決を取り消して次の理由でAの請求を認めた。
『建物の賃貸人は、賃借権の放棄、賃貸借の合意解除など信義則上建物の転貸借関係を終了させるのを相当としない特段の事情がない限り、賃貸人は、建物の賃貸借の終了をもってその転借人に対抗することができると解される。』とし、
『BCDEの転借権及び再転借権は、Aが賃貸借の終了を通知した後6ヵ月を経過し、かつ、本件賃貸借の期間が満了した平成8年11月30日の経過とともに終了したから建物を明渡すべきである。』と判示した。
(短評)
本件も、サブリース契約に関するものである。
基となる賃貸借契約が期間満了によって終了する場合には、転貸借も終了する。このことは借地借家法34条(借家法4条)に規定するところであるが、転借人が賃借人・転貸人の行動によって建物を明渡さなければならなくなるケースの一つである。
本件の場合、賃借権の放棄、賃貸借の合意解除と同様に考えられないか検討する余地があろう。
(2000.03.)
(東借連常任弁護団)
東京借地借家人新聞より
借地借家法
建物賃貸借終了の場合における転借人の保護
第34条 建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。
2 建物の賃貸人が前項の通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から6月を経過することによって終了する。
今回紹介した東京高裁の判例は借地借家法34条の原則に従ったものである。しかし、賃貸人と賃借人とが基本賃貸借を「合意解除」した場合は、転借人がそのことを了承しているなどの事情がない限り、適法な転借人に対しては合意解除を対抗することが出来ないとするのが判例の確立した態度である(最高裁昭和38年4月12日判決)。従って、終了の通知があっても、転借人は転貸借契約に従って使用収益を続けることが出来るものと解されている。
契約期間満了による基本賃貸借契約の終了が当然に転貸借契約の終了を導くものと解することに疑問を呈する見解があり、期間満了に当たって転借人の事情も考慮されるべきであるとの主張が展開されている。このような状況から最高裁は賃貸借契約の期間満了で終了した場合、その終了を再転借人には対抗できないという新判断を示した(最高裁平成14年3月28日判決)。
東京・台東借地借家人組合
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判例紹介
賃貸借及び転貸借としてされた占有の移転が、抵当権の不法な侵害にあたるとして、抵当権に基づく明渡請求が認められた事例 (東京高裁平成13年1月30日判決。判例タイムズ1058号180頁)
(事案の概要)
建築会社Xは土地所有者Yから注文を受け、多額の建築資金を使ってホテルを建築してが、建築代金のほとんどが支払われなかった。
Yは①残代金を割賦で支払うことを約束し、②ホテルの土地建物に残代金について抵当権を設定すること、③抵当権実行の場合には賃借権を設定する、④Yがホテルを他に賃貸するときはXの承諾を得ることなどの約束をしてXからホテルの引渡しをうけた。
Yは抵当権の設定登記はしたが、残代金は一切支払わず、Xの承諾なしにホテルをAに賃貸して引渡し、さらにAはXの承諾なしにホテルをBに転貸して引き渡した。また、賃料は当初は毎月の割賦金支払が可能な月500万円とされていたが間もなく月100万円に減額された。
Xは、ホテルの土地建物につき競売の申立をするとともに、Yらを被告としてホテルの明渡しを求める本訴を提起したが、一審では賃借権に基づく明渡請求が棄却されたので控訴し、抵当権に基づく妨害排除請求を追加した。
(判決)
「第三者の占有が抵当不動産の所有者の承諾のもとに行われていて、その意味では、その占有が権原のない占有とはいえない場合でも、その占有者の属性や占有の態様などが、買受希望者に、買受けた後の占有者などとのトラブルを予想させ、買受けを逡巡させるものであるとか、占有に関する状況が、買受希望者の当該不動産の価格に対する評価を不当に低下させ、その結果適正な価格よりも売却価格を下落させるおそれがある場合には、抵当不動産の交換価値が不法に妨げられていることに変わりはないものといわなければならない。―中略― 第三者が抵当不動産の所有者の承諾のもとに占有していることによって、このような状態が生じている場合には、抵当権者は、抵当不動産を適切に維持管理することを求めうる請求権があるから、これに基づきその侵害の排除を求めることができる。また、抵当不動産を賃貸借(転貸借)などにより他人に占有させ、又は賃借人(転借人)などとしてみずから占有する第三者があり、それらの第三者の行為が抵当不動産の交換価値の実現を不法に妨げるものであるときは、これらの第三者を相手方として、抵当権に対する不法な侵害の排除を求めることができるものというべきである。」として、抵当権に基づく明渡しを認めた。
(寸評)
本判決は、本件の控訴中に出た平成11年11月24日付最高裁判所大法廷判決が傍論で認めた抵当権に基づく妨害排除請求としての明渡を具体的事例に即して認めたものである。通常の賃貸借をしている分には、本判決の適用はないので心配はない。
(2001.08.)
(東借連常任弁護団)
東京借地借家人新聞より
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判例紹介
抵当権が設定されている建物の賃借人(転貸人)が転借人に対して有する転貸賃料債権について、抵当権者がなした抵当権に基づく物上代位による債権差押命令の申立が認められなかった事例 (最高裁判所第2小法廷平成12年4月14日決定。判例時報1714号61頁)
(事案の概要)
XはA所有の建物(以下本件建物という)に根抵当権を設定したが、その後、YがAから本件建物を賃借し、Yはさらに本件建物をBに転貸した。Xは、YがBに対して有する転貸賃料の支払請求権(転貸賃料債権)について根抵当権に基づく物上代位による債権差押命令を申立て、この申立が認められた。そこで、Yは、この債権差押命令に対して不服申立(執行抗告)をしたが、原審は、抵当権設定後の賃借人が抵当不動産を転貸した場合、抵当権者は、転貸賃料債権に対しても抵当権に基づく物上代位権を行使できるとして抗告を棄却したため、Yは、右抗告棄却決定には法令違反があるとして最高裁判所に執行抗告の許可を申立てた。
(判決)
本判決は、(1)民法372条で抵当権に準用される同法304条1項の「債務者」には、原則として、抵当不動産の賃借人(転貸人)は含まれない。規定の上からもそうであるし、所有者は被担保債権の履行について抵当不動産をもって物的責任を負担するが、抵当不動産の賃借人はこのような責任を負担せず、自己に属する債権を被担保債権の弁済に供される立場にはない。
(2)転貸賃料債権を物上代位の目的にできるとすると、正常な取引により成立した抵当不動産の転貸借関係における賃借人(転貸人)の利益を不当に害することになる、との理由で「抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、右賃借人が取得すべき転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない」として、原決定を破棄し、原審に差し戻した。
(寸評)
最高裁判所は平成元年10月27日判決で抵当権に基づく物上代位権の行使として抵当不動産の賃料の差押ができることを認めた。この判決後、バブル経済の崩壊に伴う不動産価格の暴落により抵当不動産の換価では債権の回収が不可能になったこともあって、債権回収のための抵当権者による抵当不動産の賃料の差押が増加した。これに対して物上代位を回避するため転貸借を仮装する者も出現し、本件のように抵当不動産の賃借人がこれを転貸して得ている転貸賃料についても差押ができるか否かが新たな争点として浮上した。これについては非定説・限定肯定説と学説・裁判例が区々に別れているが、本決定は、非定説の立場で最高裁として初めての判断を示したものである。
(2000.12.)
(東借連常任弁護団)
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抵当権が設定されている建物の賃借人がこの賃借建物を転貸していた場合において、賃借人(転貸人)が転借人に対して有する転貸料について、抵当権者がなした抵当権に基づく物上代位による債権差押命令の申立が認められた事例 (東京高裁平成11年4月19日判決。判例時報1691号74頁)
(事案の概要)
XはA所有の建物(以下本件建物という)に根抵当権を設定したが、その後、YがAから本件建物を賃借し、Yはさらに本件建物をBに転貸した。Xは、YがBに対して有する転貸料の支払請求権(転貸料債権)について根抵当権に基づく物上代位による債権差押命令を申立て、この申立が認められた。そこで、Yは、この債権差押命令に対して不服申立(執行抗告)をし、根抵当権に基づく物上代位は抵当不動産の賃借人が有する転貸料債権には及ばないと主張して争った。
(判決の要旨)
本判決は、「抵当権者(本件ではXのこと)は、抵当権設定者(本件ではAのこと)が目的物を第三者(本件ではYのこと)に賃貸することによって賃料債権を取得した場合には、民法304条を準用する同法372条により、上記賃料債権について抵当権を行使することができる(最高裁判所平成元年10月27日判決)ところ、民法304条1項の「債務者」には、抵当不動産の所有者(A)及び第三取得者のほか、抵当不動産を抵当権設定の後に賃借した者(Y)も含まれ、したがって、抵当権設定後の賃借人(Y)が目的不動産を転貸した場合には、その転貸料債権に対しても抵当権に基づく物上代位権が及ぶと解するのが相当である」とした上で、本件については、「抗告人(Y)は、本件建物に根抵当権が設定された後、本件建物の所有者であるAから賃借したものであるから、これを転貸したことにより取得する転貸料債権には、根抵当権に基づく物上代位権が及ぶというべきである」として、Yがした本件抗告を棄却した。
(説明)
バブル経済の崩壊に伴う不動産価格の暴落により抵当不動産の換価では債権の回収が不可能になったため、債権回収のための抵当権者による抵当不動産の賃料の差押が増加している。本件判決でも摘示しているように、最高裁判所は平成元年10月27日判決で抵当権に基づく抵当不動産の賃料の差押ができることを認めた。
問題は、本件のように抵当不動産の賃借人がこれを転貸して得ている転貸賃料についても差押ができるかであるが、これについては非定説・肯定説・限定肯定説と学説・裁判例が区々に別れている。
裁判例は限定肯定説を取っているが、執行実務としては、東京地裁では本件判決同様、原則として賃貸借が抵当権設定後である場合に限定して肯定し、大阪地裁では所有者と賃借人が実質的に同一と認められる場合等に限定して肯定するなど裁判所によって区々の扱いがなされているようである。いずれにせよ、賃料の差押命令が裁判所から送達されてきた場合には、借地借家人組合や弁護士など専門家に相談して対処するのが無難である。
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事業用ビルの賃貸借契約が期間満了により終了した場合、賃貸人は信義則上その終了を再転借人に対抗できないとされた事例 (最高裁平成14年3月28日判決、判例時報1787号)
(事案の概要)
1、 (原告)は、ビルの賃貸、管理を業とするA社の勧めにより、Xの土地上にビルを建築してA社に一括して賃貸し、A社から第三者に店舗又は事務所として転貸させ、賃料の支払を受けるということを計画しビルを建築した。
2、 そしてXとA社は、ビル全体について期間20年の賃貸借契約を締結した(本件賃貸借)。同時にA社は、Xの承諾を得てその一室(店舗)をBに転貸し、さらにBは、XとA社の承諾を得てYに再転貸した(本件再転貸借)。現在もYが店舗として使用している。
3、 A社は、平成8年にXとの賃貸借の期間20年が満了するに際し、転貸方式によるビル経営が採算に合わないとして撤退することとし、Xとの賃貸借契約を更新しない旨の通知をした。そこでXはBとYに対し、A社との賃貸借契約が期間満了により終了する旨通知した。
4、 XはYに対し本件店舗の明渡しを求めたが、Yは、信義則上、XとA社間の賃貸借の終了をもって承諾を得た再転借人であるYに対抗することはできないと争った。
(判決要旨)
本件再転貸借は、本件賃貸借の存在を前提とするものであるが、本件賃貸借に際し予定され、前記のような趣旨、目的(ビルの各室を第三者に店舗又は事務所として転貸することを当初から予定していたこと、A社の知識、経験等を活用して収益を上げさせること、Xは自ら個別に賃貸する煩わしさを免れ、かつ、A社から安定的に賃料収入が得られること)を達成するために行われたものであって、Xは、本件再転貸借を承諾したにとどまらず、本件再転貸借の締結に加功し、Yによる本件転貸部分の占有の原因を作出したものというべきであるから、A社が更新拒絶の通知をしても本件賃貸借が期間満了により終了しても、Xは、信義則上、本件賃貸借の終了をもってYに対抗することはできず、Yは、本件再転貸借に基づく本件転貸部分の使用収益を継続することができると解すべきである。Xの敗訴。
(短評)
第一審はX敗訴、第二審はX勝訴、そして第三審はまたX敗訴という具合に結論が分かれた。本件は、いわゆるサブリースの事案について、賃貸人(X)が賃貸借の終了をもって信義則上転借人(Y)に対抗できない場合のあることを判示した初めての最高裁判例であるとされている。
XとA間の賃貸借契約が合意解除された場合には、Xは転借人Yに対抗できるというのは古くから確立された判例であったが、この判決は、合意解除ではなく、期間満了により終了させた場合について、しかも、それがサブリースである場合について、新しい判断を示したものである。
(2002.09.)
(東借連常任弁護団)
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