At The Living Room Reloaded

忙しい毎日の中で少し足を止めてみる、そんな時間に聴きたい素晴らしい音楽の紹介です。

At German Jazz Festival 1964 / Eje Thelin Quintet

2007-05-17 | Hard Bop & Modal
スウェーデン出身の名トロンボニストとして割と良く知られるEje Thelinが、1964年に独フランクフルトで行ったライブの模様を収めた一枚。Metronomeが原盤ですが、僕が持っているのは最近リリースされたDragonからの復刻CDです。ちなみにオリジナルとはジャケも違うので要注意。60年代後半以降フリー・ジャズへどっぷりと浸かってしまう彼も、本作の時点ではまだオーセンティックなモダンをやっているので、フリージャズがからきしダメな人でも普通に聴けるかと思います。同郷であり同じくトロンボーンを演奏するLars Lystedtと比較されがちですが、基本的にはこのEje Thelinの方が僕は好み。例の人気曲The Runnerのようなキラー曲こそ収録されていないものの、全体を通してジャズIQ高めの演奏が堪能できるので、プレイ云々抜きに長く聴ける盤としてオススメ出来るのはこちらですね。ニコラ・コンテが以前チャートに挙げていたM-1のThe OpenerはThelinのオリジナル曲。同じトロンボニストであるフュラーからインスパイアされたと思われる曲で、高速4ビートで演奏されたアグレッシヴなモーダル・バップになっています。使いようによってはフロア対応も可能かもしれませんね。個人的に気に入っているのは、ラース・ショーステン作によるM-5のGasoline, My Beloved。どこか背徳感を煽る不穏なテーマと、モーダルに展開される各ソロが良い感じです。要所で見せるラテンなドラミングも気持ち良し。ライブ録音と言うこともあって、全体的に前作So Farより冒険度の少ない無難な仕上がりではありますが、あまり深く考えずに聴くのには、逆にこれくらいの方がちょうどいいのかもしれません。とは言え、オリジナルのLPは決して安い盤ではないので、まずはこちらのCDで一度お試し下さい。多分まだ普通に買えるはずだと思いますので。
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Desenhos / Vitor Assis Brasil

2007-05-17 | Brasil
ボサノバのKind Of Blue。ブラジルが誇る孤高のサキソニスト、Vitor Assis Brasilによる66年Forma盤です。この後、徐々に精神世界の住人となり、80年代に至るまで作品を残すことになる彼。ややジャズ度の増した次作のTorajetoも悪くないですが、やはり一枚選ぶとなると本作を置いて他にありません。それくらい圧倒的な完成度を誇った素晴らしい一枚です。正にブラジルにおけるトップ・オブ・モーダル。クラブ世代向けのガイドでは、スリリングな高速ジャズ・サンバであるA-1のNaquela Baseが良くピックアップされていますが、個人的には本作の真の魅力はその他に多数収録された、とびきりモーダルな名演群にあると思います。たとえばA-2のDevaneio。真夜中の海辺を思わせる浮遊感と、胸を締め付ける切ないアルトの音色が印象的な美しい曲です。A-5のFetico Da Villaは自作のコンピでもラストに収録した曲。こちらは真夜中を通り過ぎ、少しずつ朝焼けに近づいていく午前4時頃のイメージでしょうか。やはりヴィクトールが吹くアルトの音色が素晴らしく、ある種の感動すら覚える名演に仕上がっています。B-2のAmor De NadaとB-3のEugenieは、共にワルツ・タイムの極上ジャズ・ボッサ。特に後者におけるテノーリオ・ジュニオールのピアノ・ソロの美しさの前では、ただただ溜め息しか出ません。自らのリーダー作であるEmbaloとは異なり、全編通して一貫してサイドに徹している彼ですが、そこもまた本作の魅力の一つ。バピッシュで力強いタッチが人気な彼の、普段とは異なるモーダルな一面が垣間見れることでしょう。唯一Embalo収録曲に近い雰囲気を持つ高速ジャズ・ボッサ、B-9のMinha Saudadeにおいても、ヴィクトールの翳るアルトに引き寄せられるかのように、哀愁度5割増しのピアノを展開していて興味深いです。とにかく全編通して捨て曲一切なしの、間違いなく後世に残る名盤。一刻も早い復刻を心から望みます。
コメント (2)
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