USのイージーリスニング系レーベルWyncoteに64年に吹き込まれた1枚。何年か前に一部で話題になったので、ジャケットに見覚えのある方もいるのではないでしょうか。聴くところによるとジャイルス・ピーターソンのフェイバリットだそう。内容的にはA面が女性シンガーのノーマ・リーをフィーチャーしたボサノバ、B面がインストのラウンジ・ジャズという構成になっています。そもそもの用途がイージーリスニング用という性質上、ジャケットには大したクレジットも記載されておらず、演奏者等ほぼ謎に包まれているのですが、裏ジャケに書かれた僅かな解説によると、どうやらジミー・デイヴィスというサキソニストを中心に製作されたアルバムの模様。ただ、B-1に収録された人気のJasmineは、基本のトリオにヴァイブ+パーカスのみを加えたクインテット編成での演奏となっているので、その辺りの事情はやはり良く分かりません。最もジミー・デイヴィス自身がタビーのようにヴァイブとサックスのバイ・プレーヤーだったという可能性もありますが。さて、その人気曲であり、かつ夜ジャズ<裏>にも収録されていたJasmineですが、ラテン・フレーバーの香る上品なボサジャズに仕上がっていて良い感じ。各種ガイド本にも書かれているように、クラーク=ボランによるスモール・コンボ時の演奏にも似た雰囲気で、一聴しただけではユーロ産かと錯覚してしまいそうな一曲になっています。ただ、今の気分としてはこの曲より断然B-2のFive To Four。これまた思わずサヒブかと錯覚してしまいそうなフルートがリードする、偽クラーク=ボラン楽団なエレガント・ナンバー。タイトルにある5拍子から4拍子への転調もスムーズで見事です。他の曲も程度に差異こそあれ、どれもMusic For The Small Hoursにそっくりな仕上がりになっていて、かなりレベルの高い完成度を誇っています。またA面のボサノバも良く、中でもA-4のSomewhereがお気に入り。クラブで即戦力という類のレコードではありませんが、家でしっとり一枚通して聴くには結構オススメ。特にこれからの季節のBGMとしては非常に打ってつけなのではないでしょうか。
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