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At The Living Room Reloaded

忙しい毎日の中で少し足を止めてみる、そんな時間に聴きたい素晴らしい音楽の紹介です。

Reflections / Charlie Mariano

2007-09-12 | Contemporary Jazz
ベテラン白人アルト奏者のチャーリー・マリアーノは、ここ日本では秋吉敏子の元夫(マンデイ満ちるの実父)でもあり、比較的名の知られた部類のミュージシャン。本作はそんな彼が渡欧中の72年に、フィンランドで現地ミュージシャンと共に吹き込んだ一枚です。マリアーノと言うと60年代のナベサダとの共演盤のイメージが強く、どうも個人的に好きになれず敬遠していたのですが、フィンランド録音と言うことで気になり購入してみたところ、これが思いの外なかなかの佳作盤でした。70年代に入ってからの吹き込みということもあり、フリー~フュージョンの要素もところどころに見え隠れしてはいますが、全体的にはコルトレーン・ライクなモーダル調の作風で、比較的聴き易い一枚に仕上がっています。そのコルトレーンの代表作をカヴァーしたA-2のNaimaは、さながら欧州版スピリチュアル・ジャズとでも言った趣き。とは言え、本家アメリカのそれとは異なり土着的な質感は薄く、音自体は非常に洗練されているので、「黒々としたスピリチュアル・ジャズは苦手」という人でもわりと普通に聴けるのではないでしょうか。A-1のGlenford Crescentは、サブ・マルチネスのパーカスとOlli Ahvenlahti(読めません…)のエレピが揺れる高速ブラジリアン・フュージョン。いわゆる「クラブジャズ」的な質感になっているので、本格的なモダン・ジャズ通には物足りないかもしれませんが、西ロンドンやコンポスト周辺の雰囲気が好きな人にはオススメかと思われます。ちなみに僕が一番気に入っているのはB-3のChileで、こちらはイーロ・コイヴィストイネンとの2管で演奏されるミステリアスかつエキゾチックなテーマが印象的なモーダル・ナンバー。北欧特有の透明感溢れる肌触りとソフトなラテン・ドラミングも抜群ですね。イタリアのジョルジオ・アゾリーニをもう少し洗練させたかのような至福の一曲になっています。なお、オリジナルは非常にレアかと思われますが、数年前にwhatmusicから再発されたLPが結構市場に出回っているので音源自体の入手は比較的容易です。先日行われた某レコ屋の更新で気になった方は、是非この再発盤を探してみてください。オリジナルを探すほどの作品ではないと思いますが、再発で気軽に聴けるならば持っていて損はない一枚だと思います。

Jazz I Svergie '80 / Fredrik Noren Band

2007-07-08 | Contemporary Jazz
現在も活動を続けるスウェーデンのドラマー、Fredrik Norénを中心としたバンドの1980年録音盤。比較的最近の人たちと言うことであまり詳しくは知らないのですが、ジャケ裏のライナーを読にでみたところによると、どうやらこの年のスウェーデンにおける「ベスト・ジャズ・グループ」に選出されたバンドだそうです。そして本作はそんな彼らのデビュー作。DragonやFour Leafと並ぶ彼の地の有名レーベルCapriceよりリリースされています。ちなみに編成はテナーとバリトンによる2管クインテット。年代的にはフュージョンを通過したいわゆるネオ・バップに位置づけられる作品なのかもしれませんが、80's特有の音質的な「軽さ」がさほどなく、60年代のジャズと合わせて聴いても違和感のない一枚になっています。やや展開が単調に感じられる点はまぁご愛嬌(笑) その点を差し引いても80年代の作品としてはなかなかに楽しめる一枚なのではないでしょうか。以前、夜ジャズ<裏>に収録されていたA-2のIdaが、ややラテンがかったキャッチーなジャズ・ダンサーで良い感じ。印象的なテーマを持ったフロアー向けの曲です。Don Rendell=Ian Carr QuintetのTan Samfu辺りの雰囲気が好きな方にはオススメ。これからの季節にも良く似合うのではないでしょうか。グルーヴィーなベース・ラインで始まるスピリチュアルなB-3のHelena's Songもなかなかの佳曲。やはり若干アフロ~ラテン気味のドラム・プレイが気持ちいいです。こちらはSleep Walker辺りが好きな人に良さそうですね。途中でテンポ・アップして高速4ビートに変わるところなんて、どことなく名曲Ai-No-Kawaに通じるところがありますし。なお、それほど良く見る盤ではありませんが、もし見つけることが出来たならば安めの価格帯で手に入れることが可能です。間違っても高い値段で買わないように。

Together / Dino & Franco Piana Quintet

2007-06-17 | Contemporary Jazz
1996年と比較的最近に録音されたコンテンポラリーなイタリアン・ジャズの傑作盤。50年代後半から活動を始めたディノ・ピアーナと、その息子であるフランコ・ピアーナの双頭リーダー名義で発表された1枚です。この2人の双頭リーダー作は何枚かあるようですが、おそらく内容的にはこの盤が最も良いのではないでしょうか。ちなみに先日Deja Vuからリリースされたコンピに収録された2曲の出典先がこの作品です。冒頭M-1のQuintetから軽快に疾走するネオ・バップで格好良いですが、やはり本作の目玉はM-4のImpulse。高揚感を煽る出だしのピアノと、続くメロディアスな2管のアンサンブルによるテーマ部が最高です。純粋なモダンジャズとしてはやや物足りなさはあるものの、ダンスフロアー向けのクラブジャズとしてはこれで100点。誰にでも分かりやすい格好良さを持っているのでクラブ映えも抜群です。こちらはDeja Vuのコンピに収録後、夜ジャズのコンピにも収録されていましたね。もう1曲Deja Vuコンピに収録されていたM-9のCalypsoも南国風味満点のアフロキューバン・ジャズで気持ちいいです。ただ楽しいだけのラテンではなく、どこか翳りを含んでいるところもポイント。これからの季節にぴったりなのはこちらの曲の方ですかね。それから少し雰囲気は違いますが、M-7のOpen Bluesも軽快なラテン・ジャズでなかなかに良い感じ。上手くかけることが出来れば、こちらもフロアー対応可能ですかね。なお、本作のリリース元も先日のロマーノ・ムッソリーニと同じく伊Penta Flowers。まだ日本では大々的に取り上げられてはいませんが、話によるとなかなかに秀逸な作品が他にも多く眠っているそう。ご興味があれば探してみても良いかもしれません。ただ、レーベル自体が既になくなってしまっているそうなので、もし探すのであれば中古CDショップになってしまいますが。しかもマイナー・レーベルなので、下手したらその辺のレア盤アナログを探すより困難かも…。まぁ好事家向きのレーベルですね。

Where There's Bud Vol.II / Bud Poindexter Trio

2007-06-10 | Contemporary Jazz
米コロラド州デンバーにて87年に吹き込まれたカセット・テープ作品を、後に日本のNormaレーベルがLPとして発売したのが本作。以前Jazz Next Standard誌にも取り上げられていたので、ジャケットに見覚えのある方もいるのではないでしょうか。このバド、どうやら地域密着型のローカル・ジャズメンだったらしく、いわゆるジャズ史の表舞台に出てくるようなピアニストではないのですが、もともとが名門音大の卒業者ということもあってテクニックはかなりのもの。また80年代後半の録音ということで音質もクリアであり、全体的に非常に洗練された印象を受けるピアノ・トリオ作に仕上がっています。澤野工房のトリオ作辺りが好きな方には恐らく気に入って頂けるのではないでしょうか。A-1のYork's Saunaは友人でもあるピアニストのドン・スカレッタのカヴァー。打ってるドラムとグルーヴィーなベースの上を疾走するテクニカルなバドのピアノが気持ちいい一曲です。以前、夜ジャズ<裏>にも収録されていましたね。しかし今の気分としては断然B-4のGoodbye。どこかヨーロッパのピアノ・トリオにも通じるマイナー・コードの高速ボサジャズで、使い方次第ではDJプレイも可能かと思われます。例えばフランスのJazz Hip Trio辺りと相性良さそうですね。部屋聴き用にはB-3のWhen You Wish Upon A Starがオススメ。こんなに美しくアレンジされた「星に願いを」を聴けば、きっと誰もがつい白ワインでも飲みたくなるはずです。素敵な夜の始まりを思わせるA-3のAh, Viennaもエヴァンス・ライクなミディアム・スウィングで良い感じ。気分は高級ホテルのバー・ラウンジと言ったところでしょうか。しかし、こんなテープのみのマイナー音源をわざわざLP化して発売してしまう辺り、日本のジャズファンの異常なまでのマニアぶりが本当に伺えますね。まぁ買ってる僕も僕なのですが…。ちなみに最近Norma盤のデッドストックが見つかったそうで、少量ながら本作も市場に再流通しています。すぐ無くなってしまうと思うので買える内にどうぞ。

Happiness Has Your Name / Romano Mussolini Quintet

2007-06-07 | Contemporary Jazz
故ロマーノ・ムッソリーニが晩年の1996年にひっそりと吹き込んだ一枚。知っている人は知っているイタリアのマイナー・レーベルのPenta Flowersにおいて、おそらく最も有名な作品がコレかと思われます。詳細は分かりませんが、過去にレア盤本にも取り上げられたそう。ここを読んで下さっている人の中にも、探している方がいらっしゃるのではないでしょうか。内容的にはいわゆるコンテンポラリーなモダン・ジャズ。取り立ててクラビーな楽曲やバリバリのハードバップが収録されているわけではありませんが、全体的に非常に円熟した演奏となっているため、部屋で聴く分にはなかなか良いです。少し前に話題になったIdea 6のアルバムに近い雰囲気。演奏メンバーこそ違うものの、どちらも彼の地における伝説のジャズメンの新録ということで、コンセプト的にも近いものがあるのかもしれませんね。Idea 6におけるバッソとピアーナのポジションに、本作ではリーダーでもあるロマーノとトランペットのチッチ・サントゥッチを起用。どちらも50年代から活躍する大ベテランらしく、円熟した大人味のある演奏を展開していて良い感じです。個人的にはM-10のEasy Lineがお気に入り。Quintetto Lo Greco辺りの最近のSchema作品にも通じるモーダルなバップで、派手さはないものの洗練されたイタリアン・ジャズを堪能出来る一曲になっています。テナーのフランセスコ・サントゥッチ(チッチの息子に当たるのでしょうか)のソロも良い感じですね。ボサノバのリズムで演奏されるM-5のタイトル曲もなかなか。明るいジャズ・サンバではなく、少し陰のあるモーダルなボサ・ジャズをお探しの方にはツボなのではないでしょうか。現在既に廃盤となってしまっているので、CDとは言え手軽に購入出来る作品ではありませんが、もしもどこかで見つけた際にはチェックしてみてください。

The Call / Timo Lassy

2007-06-05 | Contemporary Jazz
こちらもRicky-Tickの新譜。例のTFCQプロジェクトにも参加していたサキソニスト、Timo Lassyによる2作目のリーダー作です。何だか今月アルバムがリリースされるらしく、本作はその先行カットとのこと。例によってD.M.R.が強烈にプッシュしていますね。トランペットのJukka Eskolaなど参加メンバーがほとんどTFCQそのものなので、巷ではそれなりに話題になっているのではないでしょうか。ただし本作はあくまでTimoのリーダー作。いかにメンバー編成が似ていようと、やはりTFCQとは少々趣きの異なるサウンドになっているので要注意。良くも悪くも荒々しい印象を受けます。AB両面1曲ずつ収録となっていますが、大衆受けしそうなのはA面のタイトル曲。一聴しただけでは思わずGerardo Frisinaの作品と間違えてしまいそうな、パーカッシヴなラテン~アフロ・キューバン作品になっています。何より理屈ぬきにノリが良いので、恐らく今後クラブなどでも良くかかることになるのでしょうね。最も個人的にはあまり派手すぎる曲は苦手なこともあって、どちらかというとB面のSweet Spotの方が好み。こちらはカツカツカツと打つビートが格好良い高速ジャズ・ボッサに仕上がっています。あまり大した展開がないのが玉に傷ですが、全体的に1曲通して安定しているので悪くはないかと。ただ、やはり本音を言えば早いうちにTFCQとしての新譜が聴きたいところ。それもストリングスやヴォーカルが入らない初期作品のような硬派なものを望みます。まぁ色々とセールスのことを考えると難しいのかもしれませんが…。とは言え、本作も近年のNu Jazzとしてはそれなりの出来。たまにはモダン系の旧譜だけではなく、こうしたクラブ方面の新譜を聴いてみるのも面白いものですね。Gerardo Frisinaのようなラテン系のニュー・ジャズが好きな方にはオススメです。

Easy Does It / LTC

2007-06-02 | Contemporary Jazz
お馴染みRicky-Tickレーベルから届いた新作。しかしながら、本作の主役はTFCQやDalindeoのメンバーのようなフィンランド人ではなく生粋のイタリア人。おまけに録音自体もバーリで行われているので、これまでの同レーベルの作品とは若干趣きの異なる興味深い一枚に仕上がっています。ちなみにユニット名のLTCは、L=Lussu・T=Tucci・C=Ciancagliniとメンバー3人の名前の頭文字から取ったものだそう。ここまで書けばコアなリスナーは分かると思いますが、この新人ユニットの正体、実はニコラ・コンテお抱えバンドのリズム隊によるピアノ・トリオです。ニコラのバンドと言えば、どうにもFabrizio Bossoの圧倒的な功績にばかり目が行きがちですが、実際には(当然ですが)他のメンバーも粒揃い。特に本ユニットにおける実質的なリーダーであるピアノのPietro Lussuなど、一般的にはさほど評価されていないものの相当の腕前だと思います。と言うよりも、最近のニコラ作品をニコラ作品たらしめているキーマンが彼。もっと評価されても良い気がするのですが…。さて、本作はそんなLussuらトリオによる軽い挨拶代わりの一枚。近々リリース予定というアルバムからの先行12インチという形になっています。ジャケットの質感通りダークな雰囲気で迫るタイトル曲も良いですが、個人的には裏面に収録されたMenino Das Laranjasに軍配。ミルトン・バナナの軽快なトリオに欧州特有の翳りを加えたような、マイナーコードで疾走する高速ジャズサンバになっています。バーリ録音ではあるものの、どことなく北欧的な雰囲気も漂う好ナンバー。ニコラが昔プロデュースしていたQuinteto Xの発展型とでも言ったところでしょうか。ご覧の通りジャケットも相当格好いいので、ご興味のある方は是非一度聴いてみてください。オススメです。

You've Changed / Fabrizio Bosso with Strings

2007-05-11 | Contemporary Jazz
このところ旧譜系が多かったので、久々に最近の新譜から紹介。コンテンポラリーなジャズ・シーンにおいて最も重要な人物の一人、イタリアのトランペッターであるファブリツィオ・ボッソが先日リリースした新録盤です。クラブ界隈ではニコラ・コンテのお抱えバンドのフロントマンとして有名な彼ですが、実はモダン志向がより強い自身名義の作品もコンスタントにリリースしていて、本作もそんな作品群のうちの一枚。リリースは正確に言うと伊EMIからなのですが、ニコラのOther Directions同様に、一応ブルーノートによるオフィシャル作品と言うことになるようです。普段わりとバップ色強めの激しい演奏を展開する彼としては珍しく、全面的にストリングスをフィーチャーした室内音楽的作品になっていて、個人的にはなかなかに興味深い内容でした。なんとなく往年のイタリアン・チネ・ジャズを彷彿させる上品な演奏が良い感じ。中でもM-4に収録されたSenza Fineが、壮大なスケールで展開されるモーダルなジャズ・ワルツで最高です。おそらくヨーロピアン・モーダル好きならば、イントロ2秒でこの曲の虜になるはず。ゲストのStefano Di Battistaによるソプラノとのコンビ・ワーク、そして全面的に配されたストリングスの音色が、どこまでもエレガントなユーロ・ジャズ特有の世界観を作り出しています。また、収録曲中で唯一ストリングスが入らないM-9のJoyful Dayも素敵。若干ラテンがかったドラミングが、まるでケニー・クラークのようで気持ちいいですね。そして地味な曲ではありますが、M-7のRio De Majoもある意味ブラジリアン・フュージョン風な、きらきらした仕上がりになっていて気に入っています。夜眠る前の子守唄にぴったりと言ったところでしょうか。なお、他の曲も全体的に悪くないので、興味のある方は是非聴いてみてください。ブルーノートらしいこのジャケット・ワークを見たら、ついつい買ってしまいたくなることでしょう。ちなみに今月末には国内盤もリリースされるようですよ。

Jazz Trio / Lou Stein Trio

2007-05-05 | Contemporary Jazz
フィラデルフィア生まれのベテラン・ピアニスト、ルー・ステインがJumpというイタリアのマイナー・レーベルに残した一枚。LPの方に年代の記載がなく、また彼のディスコグラフィーからも漏れていた作品なので詳細は分かりませんが、おそらく70年代辺りに録音されたレコードなのではないかと思います。ちなみにサイドを務めるベースのミルト・ヒントンと、ドラムのマウジー・アレキサンダーも、それぞれアメリカ出身。もしかしたら当時のレギュラー・コンボだったのかもしれません。作品としては良く洗練されたラウンジ・ジャズの小品集と言ったところで、取り立てた派手さは別段ないものの、全体的に雰囲気の良い一枚に仕上がっています。参加メンバーは全てアメリカ出身なものの、リリースがイタリアからと言うこともあり、作品から醸し出す空気はヨーロッパの正統派なトリオ作品風。おそらくメンバー全員が白人だと思うのですが、どことなくヨーロッパを感じさせるのは、その辺りも関係しているのかもしれませんね。A-5のGladはずいぶん前にイージー・テンポのコンピに収録済み。ただ、個人的には他の曲の方が断然気に入っていて、たとえばB-2のMy Funny ValentineやB-4の自作曲The Ballade辺りのバラードで見せるプレイが絶品。あまり詳しいことは分かりませんが、こういうのをエヴァンス派のピアノと言うのでしょうか。クラシック音楽の素養を感じさせるIQ高めのソロが耳に気持ち良いです。そして絶対の名曲はB-5のSomething。少しボサノバを感じさせる軽いタッチのドラミングが印象的な、極上のワルツ・ジャズです。澤野工房からリリースされているヨーロピアン・ジャズの諸作や、Jazz-Hip Trio辺りにも近い日本人好みの雰囲気。クラブで使えるような類のレコードでは決してありませんが、たとえば真夜中のラウンジや午後のリビングで音量を押さえて聴くには最適な一枚かと思います。聴いていると自然と幸せな気持ちになる小品集。カフェ・アプレミディ辺りのファンにもオススメです。

Sun Dance / George Robert - Tom Harrell Quintet

2007-04-15 | Contemporary Jazz
少し前にこっそりアナログのみでリイシューされ、一部マニアの間で話題になった80年代ネオ・バップの隠れ名盤。以前のタイミングで買い逃してしまい再入荷待ちをしていたために、やや遅蒔きながら今回ようやく購入することが出来ました。僕はコンテンポラリーなジャズ・シーンには明るくないので、あまり詳しく紹介することは出来ないのですが、少し調べてみたところ、スイス生まれのアルト・サックス奏者ジョルジュ・ロベールと、本場アメリカ生まれのトランペッターであるトム・ハーレルの双頭リーダーによるクインテット作品のようです。この辺りの事情が分かっていると、録音自体がスイスで行われているのにも関わらず、リリース元が米Comtemporaryレーベルなのにも納得出来ますね。内容的にはいわゆるネオ・バップ。60年代後半~70年代にかけてフリーやフュージョンを通過したジャズは、80年代に入ると一回りしてもう一度バップに戻っていくわけですが、本作はそんな原点回帰の様子を捕らえた瑞々しい名盤と言えそうです。水溜りが一気に弾けるような高速サンバ・ジャズのA-3、Cancunなどはその典型。勢いある演奏で気持ちよく飛ばしてくれます。個人的には正統派の高速4ビートで演奏されるA-1のSoladが好み。こんな書き方をするとまた怒られそうですが、正にバッソら直系とでも言うべき洗練されたヨーロピアン・ハードバップに仕上がっています。2管のフロントがグイグイ引っ張っていく冒頭部から既に格好いいですね。ニコラの影響で最近若いファンにも人気が高いFabrizio Bossoの諸作にも共通する雰囲気なので、クラブ・ジャズ好きのリスナーにも素直に受け入れられそうです。80年代録音ということで音質がややクリアー過ぎる点は否めませんが、それを差し引いても是非聴いてもらいたい作品。CDへの移行期という年代柄オリジナルは出てきにくい一枚なので、このリイシューが買えるうちに購入をオススメします。