(前回からの続き)
前回まで、独仏両国で今年行われる選挙で(万一)極右政党(仏「国民戦線(NF)」 and/or 独「ドイツのための選択肢(AfD)」)が政権を取った場合の大混乱ぶりについて、個人的に想像するところを記しました。もっとも、先述した彼らの通貨政策(現行の単一通貨ユーロの解体につながりかねない政策)がユーロ圏各国(とくに南欧諸国)の支持を得られるとは考えにくく、実際に「新フランス・フラン」(NF案:フランス単独の新通貨)とか「ユーロA(?)」(AfD案:ドイツなどEU内の経済の強い国々だけで作る共通通貨)が誕生する可能性は高くはないでしょう。
だからといって「いまのままでは・・・泥船」なのもまた事実。というわけで通貨ユーロの今後はじつに不透明です。ユーロ圏は金融・通貨統合をした以上、本来なら財政統合も実行し、税制等も統一して、ひとつの「ユーロ共和国」を建国する方向に進むべきなのでしょう。しかし、移民問題に象徴されるように、その実態は統合どころかむしろ逆に、お互いに距離を置こうとする空気が英国を含む欧州全域に広がっている感じ。言語も文化も習慣も異なる民族同士が一緒に、という理念は美しいけれど、実現は難し過ぎた、ということなのでしょうか・・・
上記のとおり新しい枠組み作りは至難・・・となってくると、この先のユーロ圏では、今回のドイツとかフランスのように現状に不満を持ち、かつ経済基盤が相対的に強い国が、しびれを切らして自分の方からユーロを出ていこうとする動きが活発化するのではないか。こうして自らの通貨を再生すれば金融政策もECB(欧州中央銀行)から取り返すことができるわけで、ここに晴れて通貨・金融・財政の3つの経済主権が回復され、独立国としての体裁が整う・・・ってこれ、単にユーロ以前の状態に戻るだけのことですが・・・
・・・独仏の上記政治情勢を見ても分かるように、そんな気配が漂い出したせいか?足元ではユーロ圏各国の10年国債の価格差(長期金利差)が不気味に広がっています。先週末時点の各国債価格を高い順に並べてみると「独(0.30%)>蘭(0.62%)>仏(1.03%)>西(1.61%)>伊(2.17%)>ギリシャ(7.58%)」(カッコ内は長期金利)となっていて、ドイツとそれ以外の国々の利回り差(スプレッド)がじりじりと拡大する傾向にあります。実際に18日、独国債の価格は上がったのに仏国債は下がり、両者のスプレッドは6bpt.(0.06%)広がりました。同日、今春の仏大統領選で左派候補と決選投票が行われることになったらNFのルペン氏が有利、といった報道が流れたためと思われます。ということは今後、NFやAfDの支持率がさらに上がったら、いったいどうなることやら・・・