(前回からの続き)
今年2017年の前半、もっとも注目すべき世界の政治イベントは4~5月フランス大統領選でしょう。支持率が10%前後(!?)と超低迷中の現職フランソワ・オランド大統領(社会党)はすでに不出馬を表明しており、現時点では中道右派・共和党フィヨン元首相と極右政党・国民戦線(NF)のルペン党首の対決との見方が有力です。直近の調査によればフィヨン氏が優勢と伝わってはいますが・・・昨年の英国民投票、米大統領選が大方の予想を覆す結果となったことからも推測されるように、フランスでも「まさか」が起こる可能性はゼロではない・・・
で、万一(?)NFのルペン氏が勝つと、現行の通貨ユーロの枠組みを変えようとする動きが活発化しそうです(?)。前述のとおりNFは、ユーロに替えて、以前の欧州通貨単位のような為替の安定を図るためのシステムを作ったうえで、フランスを含むユーロ圏各国は独自の通貨を持とうと訴えています。そう主張する以上、彼ら彼女らは政権奪取後、直ちにこれを具体化するべく、EUやECBを巻き込み、関連の準備に取り掛かるしかありません(?)。なぜなら、「EU圏を、ドイツを含む経済の強い国々とフランスなどの経済の弱い国々に分けよう」という、仏NFとしては絶対に飲めない案を提示したドイツの極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が9月の独連邦議会選で勝利するおそれ(?)があるため。ということは、それまでにフランスの国益に沿う自らの提案への賛成をEU内で取り付けておかないと、この秋以降はドイツ・・・のAfD案の台頭を許してしまい、フランスは最終的に弱い通貨グループに強制的に区分されてしまうかもしれませんからね・・・
こうした事情もあって「ルペン新大統領」および与党NFは、独AfDの支持率の動向を横目で気にしつつ、実質的なユーロ解体に向けて動き出すしかないだろう、と予想する次第です。ではそんな(アブナイ)ことをやり出しかねない(?)新政権が誕生したらどうなるか・・・って、予想は簡単です。2つの暴落が起こるでしょう。1つ目は各国債の暴落です。具体的には、同じユーロ建てでもドイツやオランダ等の国債価格は上昇(利回りは低下)し、イタリアやギリシャといった南欧諸国の国債価格は大きく下がる(利回りは急上昇する)でしょう。
で、肝心の(?)フランスですが、おそらく同選挙前よりも国債価格が下がり、金利は上昇して仏政府の資金調達コストを引き上げるほか、同国の景気にも悪影響が及ぶでしょう。そんなことで、これは皮肉なことに独AfD案の「強国・弱国」の線引きラインを明確化させる結果になりそうな気もします。つまり、やっぱりフランスは弱い方だったね・・・みたいな・・・