(前回からの続き)
こちらの記事等でも書きましたが、「Brexit」(英国のEU離脱)の是非を巡る議論が起きる前から、英国経済の唯一の支えである通貨「ポンド」の価値の多くは「資源株」とそのポンドを元手にした金融業すなわち「銀行株」に裏打ちされてきたと考えています。
で、これらの株価はいま、どれくらいか、ですが・・・どれもここ5年来の最安値付近にあります。3/24時点(ロンドン市場株価)でみると、鉄鉱石大手BHPビリトンとリオティントの株価はいずれも5年前に付けた高値から60%前後も低くなっています。ダイヤモンドで有名なデビアスの親会社アングロアメリカンなどは5年前の1/6にまで暴落・・・。
銀行株も同様です。HSBCの株価は2013年の高値から3割あまり、バークレイズは昨年夏の株価から5割近く、それぞれ大きく下がっています。英国政府の公的管理が続くロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)の株価に至っては223.6ペンスと、同政府による資本注入時の株価502ペンスを大幅に下回ったままです。ちなみに同行の株価ですが2007年の初頭、つまり米サブプライムローン・バブル崩壊直前には6千ペンス台の後半に達していました。いまはそのわずか3~4%ですから、同行がいかに不動産バブルに深く突っ込んで、その後始末に苦労しているかが推測されるわけです。
さらに、こちらの記事に綴ったような状況(逆オイルショックで産油国の対英投資が激減するおそれ)から、英国とりわけ首都ロンドンの住宅投機のほうもこの先は非常に不透明。といったありさまで、英国では主要株価も不動産価格も今後はかなりの期間、下落・低迷することになりそう。これにともない企業等の過剰債務と銀行の過剰不良債権が顕在化し、貸し渋り&貸し剥がしでリセッションが深刻化するとともに金融システムが危機に陥ってポンド不安へ・・・なんて感じの「システミック・リスク」が英国では現実となる可能性が高いと考えられます。もうこれは構造的かつ不可避的な災厄で、EU離脱をしなければ回避できる、なんて甘いものではないでしょう。もっともBrexitのほうが、先述の理由などからこのリスクはもっと早く顕在化するように思えてなりませんが・・・
Brexitでポンドがピンチに―――そのへんのトリガーになるかも、と個人的に予感させるのが、1992年の「ポンド危機」(当時のERM[欧州通貨制度]に英国が参加した際のポンドの他通貨に対するレートが高過ぎ、とみた投資家がポンドを売り浴びせたもの。これによって英国はERM脱退を余儀なくされた)のような展開です。当時と同じようにこの6月の国民投票の結果を受け、ジョージ・ソロス氏はポンド売りに動くのか・・・?
・・・となるかどうかはともかく、Brexitしてもしなくても、英国そしてポンドの未来が厳しいものであることは間違いないでしょう。よって日本としては英国やポンド資産への投資は当面、回避した方が無難ですね。近い将来、英資源大手が有力鉱山の権益を本邦企業に安値で売却しようとするまでじっくり待ちましょう(!?)
(「Brexitしてもしなくても前途多難な英国」おわり)
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