(前回からの続き)
「欧州連合」(EU)の「首都」ベルギーはブリュッセルで起きた卑劣なテロ。「イスラム国」(IS)が犯行声明を出したようですが、その真犯人が何者なのかはともかく、これによって英国の「Brexit」(EU離脱)派が勢いづくのは間違いないでしょう。EUと別れたら英国は、独自にISの本拠地シリア等からのアラブ・イスラム系難民・移民の入国を制限するルールを作ることができるからです。「凶悪なテロリストの侵入を認めないためにもEUから脱退すべきだ!」この訴えはいま、そしてこれからの英国で、非常に説得力のあるものになっていきそうな気配です。
これに比べると、「EUに留まって、英国を支える唯一の(?)柱・通貨ポンドの価値を支え続けよう!」という(わたしが英国にお勧めする?)冷静で現実的な考え方はいかにも地味。通貨安の脅威―――このあたりはテロと違って、身に迫る危機感としてなかなか意識しづらいものですし・・・(って、いまの日本もそうだけれど?)。
そして、先日ご紹介のボリス・ジョンソン・ロンドン市長がこのほど英議会で持論であるBrexitのメリットを主張しつつ、ポンドについては「英国経済と同じように強い通貨となろう」(will be as strong and robust as the U.K. economy)との見方を示しています。人気の政治家がBrexitしてもポンドは大丈夫!みたいなことを言っているので、通貨下落を懸念していた国民の多くが安心して(?)6月の国民投票でEU離脱にYes票を投じるかも・・・。
さらにジョンソン市長は「シティー(ロンドンの英金融基盤)はEUの外で力強く繁栄し続ける」(the City would continue to flourish mightily outside the EU)と、たとえBrexitとなっても英国の金融業が傾くことはないと強気な指摘もしています。そのへんは当の業界―――バークレイズやHSBCなど、英国に本拠を置く主要銀行がBrexitの金融面でのリスクをたびたび警告しているのとまったく逆。で、どちらが正解か、ですが・・・まあプロである後者の予測―――「Brexitでポンドの価値も、シティーの国際的地位も下がる」―――が現実となる可能性のほうが高いのではないか・・・
こちらの記事等でも書いているように、英国の金融機関は近い将来、大規模な資本注入が不可避となる事態に追い詰められるとみています。そのときの支援は多いほどいい、というわけで彼らとしては、英国当局ばかりではなくEU当局ともしっかりと連携しておきたいところです(?)。その意味でもBrexitはネガティブ。そうなったらEU側からのサポートがぐっと減ってしまうかもしれないし・・・。もっとも英銀の多くは、万一Brexitとなったら逃げ出す―――その本部をロンドンからEUやアメリカなどに移す―――のではないでしょうか・・・