(前回からの続き)
こちらの記事等でも綴りましたが、ここのところの英国の凋落ぶりは目を覆うばかりです。その様子を端的に示すのが前回ご紹介した原発事業の外資への丸投げ。しかもよりによって中国製の原子炉をロンドンからわずか80kmのところに作ろうというのですから、それほどコワいことまでしないとダメなのか・・・などと愕然とさせられます。
電気事業もそうですが、自前の産業が廃れてしまうとこうなってしまう、ということを英国は身をもって教えてくれているように思えます。世界史的にいうと19世紀に英国は「世界の工場」の地位を占めた、つまりモノ作りの世界をリードしましたが、いまやその面影はほぼ消え失せてしまったわけです。唯一、国際競争力のある分野は軍事部門だけ(?)・・・(って、何作っているんだか、この国は・・・)。
そこで英国がすがるのが通貨ポンドの威光といったあたり。かつて英国製品の交換券として輝きを放ったポンド(pound sterling)は、その名残で(?)現在でもドル、ユーロ、円などに続く国際通貨として一定の価値が認められています。これをダシ&エサに外国の産品やサービスを買ったり投資を呼び込んだりしよう、というわけ。
で、ポンドの序列ですが、わたしが唱える通貨ランキング(実質利回りの大きい順)「(金>)円>ドル>ユーロ>新興国通貨」にはないけれど、現状はまあユーロよりも強くドルよりは弱い、といったくらいでしょう。その意味でフランス(ユーロ)とか中国(人民元:新興国通貨のひとつ)のような、ポンドよりも弱い通貨国の企業がポンドを欲しがる(英国で事業をしたがる)のは理解できるところ・・・
しかしそんなポンドの威光も・・・賞味期限が刻々と近づいているように思えてなりません。その理由ですが、まずは、日本はもちろん世界の人々に「買いたい!」と感じさせることのできるメイド・イン・英国が見当たらないということ。上述のとおり、これを生み出す産業基盤が絶滅寸前だからです。これでは人々のポンドを持つインセンティブは下がる一方です。
何とかしないと、ということで英国が売り出したのが・・・メイフェアとかナイツブリッジに代表されるロンドン等の不動産でしょう。しかしこれらの価格は十分にバブリーで、これ以上のマネーを取り込むことは困難なはずです。それに・・・ロンドンのすぐ近くにできる予定の中国製原爆、もとい原発も同価格上昇の頭を押さえそう・・・(?)
もうひとつは、こちらの記事に書いた「株」とりわけ資源株。ですが・・・中国経済の減速にともなう資源需要の落ち込みや米FRBのQE打ち止めなどによる投機マネーの巻き戻しでこれらの価格は低落傾向にあります。スイスの鉱業大手グレンコアの経営不安といった悪材料もあり、少なくともここ当面の間、英国市場における資源株へのマネー流入は滞るものと予想されます。
以上、モノ、不動産、株・・・どれを取っても買いたいと思わせるものがいまの英国には、ない・・・ということになれば、それらの引換券であるポンドのいっそうの価値低下は避けがたいような・・・