(前回からの続き)
前回、アメリカの現状の通貨・金融のシステムは「不動産本位制」(土地本位制)と言い換えることができる、と指摘しました。この点、かの国の戦後からいままでを、「〇〇本位制」の変遷、という視点で見ると、いろいろ分かることがあると考えています。
で、終戦直前の1944年に開始されたのが、いわゆるドルの「金本位制」。ご存じのようにこれ、アメリカが自身が持つ金(ゴールド)1トロイオンスを35米ドルで交換する、とした制度です。この金の信用でドルの価値を維持し続けようとしたアメリカでした・・・が、その後の対外収支と財政収支の悪化により金がどんどん外国へ流出した結果、その兌換請求に応じられなくなって、ついに1971年、同交換の停止を一方的に宣言します(「ニクソン・ショック」)。ここで事実上、ドルの金本位制は終了し、ドルを含む各国通貨の交換等はいわゆる変動相場制となっていきます・・・
が、その後も金との紐づけがなくなったドルの価値低下に歯止めがかからないなか、危機感を募らせたアメリカは、世界に引き続きドルを使って(その価値を保って)もらうべく、金に代わるその裏付けを「石油」にすることとし、これに成功?しました。具体的には1974年、当時のニクソン政権がサウジアラビアと秘密裏に交渉、アメリカがサウジ王家を軍事的に支えることの交換条件としてサウジは原油販売をすべてドル建てで行い、これで得たドルを米国債投資に充てる、という取引をまとめました。ちょうど「オイル・ショック」(1973年10月~80年代初頭)のさなかで、サウジをはじめとする産油国にドルが積み上がっていたところ、これによってその「オイル・ダラー」がアメリカに還流し、これを財政的に支えるというスキームが成立することとなりました。これドルの裏付けを石油にしたという点から「石油本位制」というべき仕組みでしょう。実際、公表された米内部文書によると、当時のサイモン財務長官は「これでドルが『石油本位制』になり、為替相場の安定につながる」と考えたそうです。
というように、戦後のアメリカそしてドルを支える枠組みは「金本位制」から「石油本位制」へ、そしてその後の(冷戦構造消滅、中国の台頭、EU発足・通貨ユーロ成立などなどの)いまに至るまでのアメリカ国内外の様々な情勢変化を受け、現在の前述「不動産本位制」(土地本位制)へと移り変わってきたと考えるものです。