(前回からの続き)
さて、前述したIEA(国際エネルギー機関)の、中長期的には原油価格は上昇し、2025年ころには88ドル/バレルと2017年(同52ドル)の1.7倍になるだろうという見通しですが、これを聞いた投資家のなかには、そうか、では原油先物を買っておくか、と考える方もいることでしょう。で、その購入のための調達資金の通貨に選択されそうなのが・・・主要通貨でもっとも金利が低い「円」・・・
ということで、「アベノミクス」は、じつは二つのエンジンでわたしたちの生命線である石油の円建て価格のつり上げを喚起しているといえます。一つ目は、これまで綴ってきた実質的な円安誘導、そして二つ目がこの円キャリートレードによる原油等の投機扇動です・・・
こちらの記事を含めて何度か書いているように、株はもちろん、債券や、原油等の商品等の取引に至る、あらゆる資産投資には現在、この「キャリートレード」―――低金利の通貨を借りて当該通貨よりは利回りの得られる可能性がある資産に投資すること―――が活用されています、しかもかなりのレバレッジをかけられて(?)。以前は米ドル等もこのキャリトレにおける調達通貨でしたが、アメリカの金利が上がるなか、借り入れコストが超低い円の当該通貨としての役割は一段と重要になっています。実際、そのドル建て債券投資でも円キャリが行われているわけですし・・・
で、この円キャリが原油価格の押上げに機能したと考えられるのが前回は2011年~2012年あたり。本稿前段でも書いたように、このころの原油価格は110ドル/バレルあたりまで上がりました。その原因ですが・・・当時の中東情勢とか需要動向等などもあるでしょうが、円キャリがこの爆騰ぶりに少なからぬ影響を与えたのは間違いないでしょう。まああの頃は円高ドル安で救われた面がありましたが、いまのアベノミクス下ではそうはいきません。ただでさえ「カブノミクス」(私的造語:アベノミクスの取り柄は「株のみ」)優先で株高円安が煽られている中での円建て原油価格の値上がりにつながるためです。何度も書いたように、石油は日本経済の最大の「弱み」であり、生命線です。その国家としての命綱を、「株かわいさ」のあまり(?)、こうして意図的に2方向から―――一つは円安誘導から、もう一つは原油投機扇動から―――いっそう脆弱なものにしようというのがアベノミクス・・・といえるのではないでしょうか・・・
逆にいえば、もし日本がアベノミクスを手仕舞えば(日銀が金融政策を引き締め方向に転換すれば)、この円キャリの巻き戻しが起こって、今度は2方向から―――1つは円高ドル安から、もう一つは原油取引のポジション解消から―――石油価格は円建てでも、そしておそらくドル建てでも(!?)一気に下がるでしょう(?)。ですがこれ、同時に株売り(株価↓円↑)をもたらすので、カブノミクスの観点からは絶対にNG。よってアベノミクス各位が自分たちからそんな自殺行為に走るはずがありませんね・・・。よってここは、わが国にとっての真の「野党」アメリカ様に、こう告げ口しちゃいましょうか―――「ガソリン代の上昇を煽っているのはアベノミクス日本ですよ、トランプ大統領~!」