庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

削減目標を高く設定することで、新産業で経済成長は加速される。

2009-06-12 | 経済問題
昨日のマスコミには、温室効果ガスの中期削減目標を15%(2005年比)とした麻生内閣の決定に対して、批判の嵐が流れていた。
海外と環境団体、野党などからは、政府与党はやる気がなく産業界に配慮し過ぎている。という日本政府の後ろ向き姿勢の批判である。
一方、産業界は国際競争力と国民生活へのコスト転嫁の悪影響を採りあげて、目標が厳しすぎると不満を言いつつ、この後の削減義務の規制を警戒して守りの動きに余念がない。

削減幅の是非に対しての議論は、経済への影響の考え方の違いがベースになって、影響している。
つまり、削減幅を大きくすることは経済活動に悪影響がある。
という環境と経済は対立構造にあると考えるグループで、規制は悪だ!という思い込みである。
1990年代頃までは、この考えが主流であり、とにかく削減目標を出さない。
または、出しても低くするべきである。
という現状の経済構造優先の考え方にとらわれている人々である。

これと違って、世界の先進国の中では、適切な政策手段を伴った脱化石燃料促進策を講じれば、経済活動に悪影響がなくて、むしろ、新産業に育成による新規に需要と投資効果で、経済に貢献できる。という考え方である。
これは経済活動と環境対策は両立できるとする、一歩進んだ考え方であり、おもにEUの先進諸国が、この政策を推し進めてきた。
その実績のうえで、2020年に向けての削減目標を、1990年比で20%以上の削減を提案している。
イギリスなどでは、さらに上乗せして35%の削減を2020年までに達成する政策を打ち出している。

そして、今の経済停滞の世界において、新産業の画期的な増強を図ろうとするならば、高い削減目標を掲げることで、旺盛な新規需要と大胆な投資を促せる「低炭素エネルギー化」産業を育成する。
これの世界的な動きを作り出す政策が必要である。
それは、新興国の中国やインドも巻き込んだうえでの大胆な再生可能エネルギー社会へ向けての、長期的な戦略的取り組みであろう。
これは、経済成長には地球環境重視政策こそは、必須の課題である。という進んだ考え方である。

しかし、日本の政府官僚群や、1990年代の古い時代の感覚に染まった産業界の「古老」たちにより、いまだに、高い削減目標設定は産業の足を引っ張ると思いこんでいる。
これに凝り固まっているので、新時代の考え方には転換できないでいる。
できないならば、さっさと勇退したらよいのに、今の地位にしがみついている。
これでは、経済の停滞はいつまでも続いてしまう。

マスコミの論調でも、まだ、環境規制は経済に悪影響があるような、曖昧な立場をとっている紙面もあるが、それは世界の先進国の実績をよく見ていない。
欧州連合(EU)の欧州委員会は、太陽光や風力、バイオマスなど再生可能なエネルギーの利用割合を2020年までに 20%に高めると、280万人の雇用が生まれるとの試算をまとめている。
2005年時点で再生可能エネルギーが生み出した雇用は約 140万人で、実績をあげているので、これをさらに推し進めることになる。
日本では、「再生可能エネルギー」の普及を1%台に抑えてしまったので、雇用に創出効果はほとんどない。

脱化石燃料の効果を発生する政策をよく検討して、実効性のある政策手段を打ち出すことが、経済の停滞から抜け出して国民生活を豊かにしていく手段である。
マスコミが広く伝えなければいつまでも不毛の後ろ向き政策にとどまって貧乏への道を歩むことになる。
頭の切り替えこそが、まともな議論の始まりになる。