庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

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削減数値目標はリーダーの意気込み、国民の士気に影響? 

2009-06-08 | 経済問題
炭酸ガスの削減数値目標の設定材料として、政府の検討委員会が提示した6案のうち、最も削減率が大きい「90年比25%減」とする案については「(各家庭の年間負担額が)30万円を超えている。」と報告されている。
これについて、首相は「各家庭が30万円を払えと言われて今、払うかね」と述べ、国際的に要求されているレベルは、国民の賛同は得られない。との考えを示した、と報じられている。

この削減数値目標を達成するために行う政策で、負担が増える数値を出す作業は、経済の専門家が採用しているシミュレーションモデルによって、経済成長との関係を見ながらはじき出している。
そして、この数値が適切であるかの検証は、ほとんどされていない。
つまり、今あるモデルの中で、もっともらしい数式を利用して、計算をしているのである。

筆者が以前に若手の経済学者に聞いた話では、このシミュレーションモデルは、経済状態や技術レベルの革新的な変革が起きた場合には使えないモデルである。
産業界での大きな転換や画期的な技術革新の出現による影響は、数値でもあらわすことは無理である。
という実情を知らされた。
それはそうでしょう。突然の状況変化による影響を数字で出せ、と言われても、予測不可能な事態の発生連続と創造的な技術革新が生まれる状態で、将来を予測せよとは無理難題であると言える。

それでも、経済学者という肩書がある以上、要求された場合には予測ができる範囲での数値モデルを引き出して、説明のつくようなシミュレーションをできるだけ正確に行って数字を出す。
その過程では、予測できない事態は省略、または無視するという条件付きで、シミュレーション検討を進めている。
しかし、出てきた結果の段階においては、この途中で無視せざるを得なかった条件の説明などは、どこかに埋没してしまう。
数値を聞いた方は、それが妥当なシミュレーションの結果だと信じることになる。

この原則的なシミュレーションの話を、今回の炭酸ガス削減数値目標の設定と、経済活動に関連して国民生活の負担増加について、予測を数値で示せ!と要求された場合に当てはめてみると、
「90年比25%減」とする案について「(各家庭の年間負担額が)30万円を超えている。」
という予測数値は、技術革新や産業界の変革などについては、盛り込まれていない前提条件でのシミュレーションである。
つまり、高い数値目標を掲げても、技術革新の進展には影響がない。という前提での推定計算による。

麻生首相が、この何も変革が起きない条件での数値予測を信用するということは、どのような政策手段を打ち出しても、技術革新に影響を与えることはできない。
とリーダーの役割を放棄していることになる。
産業に活を入れることも無理と、自分を納得させていることになる。
政権運営責任者としては何もできないので、自分は失格である。との表明に等しい。

そして、アメリカのオバマ大統領は、最悪の経済状況のもとでも、高い削減数値目標を掲げる意向である。
アメリカの産業界にショック的に刺激を与え、技術革新の進展と産業の再編を促すことを目指して、大胆な政策を打ち出す方針を表明した。

この違いは、いったい何であろうか?やはり世襲による甘い環境で育った政治家には無理な要求であろうか。いや、世襲とは関係ないはずだ、個人の資質の問題であろう。以下、次回に。