庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

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炭酸ガスの排出削減目標は、経済の活性化を阻害するか? 

2009-06-06 | 経済問題
6月になって、国際間の温室効果ガスの削減目標数値の交渉が、活発になっている。
おもに化石燃料による炭酸ガスの排出がとりあげられる。
12年前に、気候変動枠組み条約の交渉で何度も会合が重ねられて、1997年に京都議定書として取り決めが合意された。
これに対して、アメリカはブッシュ政権になって、経済の足を引っ張ることになるから、批准しないとして離脱を表明し炭酸ガスを自由に排出する道を選んだ。
結果は、石油中毒と賭博金融、そして、住宅バブルの崩壊に向かい、惨憺たる状況である。

日本は、EU諸国との交渉経緯を経て、1990年比で6%削減を目標数値に設定して、国会の審議をへて批准した。
高い削減目標を達成するためには技術革新に力を注ぎ、産業界が最大限の努力を払うことが必要であった。
自ら設定した目標に向けて、最優先で取り組むことこそが、経済の活性化に貢献する。
しかし、産業界はその努力を十分には行わなかった。
そして今になって、京都議定書の条約締結は失敗であった、と言い訳の代わりにして、政府や一般国民に向けて不平をならべている。

削減目標の数値自体は、経済に直接には関係しない。
しかし、それに向けての取り組みで、技術革新や大胆な事業の展開を行うことで、経済活動が活性される。
第一次と第2次の石油ショック時には、不平を言っている対象は国内にはいない。
四の五の言う前に、とにかく大胆に技術改革と事業の促進にむけて、一心不乱に努力を重ねてきた。
結果は、他の国の水準よりもはるかにエネルギー効率も上がり、高い原油価格の不利を克服して、国際的にも競争力のある商品や技術が生まれた。
そして、その強い技術で世界に打って出る企業が続々とあらわれて、日本の経済力を各段に進歩させたのである。

では、京都議定書の高い目標に対して、産業界はどのように対応してきたのか?
ひとつは、省エネルギーをさらに徹底させることで、炭酸ガスの排出削減に貢献してきた。
しかし、この省エネルギーは企業にとっては経費の削減になるので利益に結びつくが、経済全体にとっては、エネルギー消費の削減はGDPの減少である。
それは、一企業にとっては有利であるが、全体で見れば経済活動の縮小を意味する。
つまり、不景気になることに向けて努力をしてきたことになる。

もうひとつは、1997年時点ではエネルギー政策を原子力発電の復活に大きく政策を転換しようとしていた。
2010年までには原子力発電所を大幅に増設し、その発電電力を産業界が利用することで、炭酸ガスの排出が少なくできる。という皮算用である。
電力業界は前にも述べた様に、原子力発電はコストが安くできると盲信していたので、この取り組みに対して、議定書の目標数値は追い風と見ていた。
電力業界がやってくれるのだから、他の産業界としては異論はなく、この原子力発電による削減政策に賛同、つまり、ただのりをしていくことになっていた。

経費の削減と電力へのただのり。
これによって産業界の取り組みは甘くなった。
さらに、前にも書いたように、「再生可能エネルギー」の利用は、まだコストも高くて、とても対策の中には取り組めない。
企業姿勢としては、前向きに取り組んでいます。というメッセージを発信し、社会貢献政策として形を繕っていたが、数量的には全く問題外の1%台の普及目標にとどめた。
このような経緯で、企業による技術革新の動きや、脱化石燃料へ向けての新事業の取り組みなどは、ほとんど起こらず、従来の技術の改善と、企業活動の収益向上努力に埋没していった。

現時点での結果は、環境関連事業で大きな後れと、経済停滞をまねいた。
以下、次回に。