庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

脱化石燃料の主要な手段としての原子力発電は放棄する。 

2009-06-05 | 核エネルギー・原子力問題
ここ5回にわたって(5月31日~6月4日)原子力発電にまつわる不透明な事実と、核兵器の不拡散、廃絶への道における不都合な事実を、ホンの少しだけ書いてきた。
実際の問題の中身は、もっと深く慎重に検討すべきであるが、世の中の「原子力発電推進論者」は、そのような姿勢をもっていない。
タダただ、自分たちが若いころからの夢の技術、ライフワークだとして取り組んできた「理想」に固執しているように見える。

石油危機が起きれば、チャンスとばかり推進論を展開し、また、気候変動問題(地球温暖化)が世の中の潮流になると、起死回生の機会と見て促進論を繰り返す。
放射性廃棄物の「負の遺産」を残してしまう次世代に対する「倫理感の欠如」が見える。
都合のよい面ばかりをみての「経済性優先思想」は、バランス感覚のズレを起こしている。
世の中の状況が変わってきているのに、「夢のエネルギー」への妄想から抜けられない困った人々である。

前回に提示した「核兵器の不拡散」と、長期的な人類の課題である「核兵器の廃絶」は、尋常な手段や力ずくでの政策で達成できるものではない。
アメリカの超大国の利害のみで進めようとした、核兵器の「核クラブ」(現在、核兵器を保有している国のみが、核兵器を持つ権利)の既得権を、是とする論理は、反発する国の続発で行きずまった。
オバマ大統領はこれを打開するために、長期戦を覚悟の上で交渉のテーブルに着くことを呼び掛けている。
原子力発電は別問題とするわけにはいかなくなり、経済性の問題よりも、国際間の安全保障の問題となる。

温暖化防止には、脱石油の技術手段開発は不可欠である。
しかし、今までに説明してきたように、その手段として「原子力発電」の拡大を主要政策にすることは、世界に危険を広げ、「核兵器の拡散」を招きかねない危険な政策である。
そのような不安心な社会に向かうことを、21世紀の主権者である「次世代の国民」は望んでいるであろうか?

私だったら、将来に安心を招く技術手段を最優先にする。
それは、このブログで書いてきたように、「再生可能エネルギー」による、分散型で各地域に経済メリットを還元する「地域自立社会」への道を進む有力な技術手段である。
今はまだ、経済的メリットが出るほどの技術レベルではないために、国や自治体からの公的資金(税金)の支援がなければ、推進拡大はできない。
だが近年の技術進歩と事業化の進展は顕著であり、2020年には自立できるレベルになる。
そして2030年ころからは、爆発的に世界中に広まっていくであろう。

反対に「原子力発電」に頼っている国や地域は、いつまでも不安心な設備にとらわれ、経済的にもデメリットがはっきりと表れる。
その時になってから、やっと転換しようとしても膨大な負の遺産に悩まされ、足を引っ張られることであろう。

眼先の「低炭素社会の実現」とか、「安定した経済的なエネルギー」などの大義名分にまどわされて、「原子力発電」優先の政策をとることの誤りは、すでに明らかである。
繰り返しておきたいことは、
『脱化石燃料の主要な手段としての原子力発電は放棄する』

いま運転中の設備は、安全を最優先にして慎重に取り扱い、設備の寿命を見て安楽死させる・・・。