なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

汎血球減少症

2023年09月20日 | Weblog

 先週の金曜日(9月15日)に、63歳男性が発熱外来を受診した。9月13日から発熱があり、その日に地域の基幹病院を時間外で受診したが、アセトアミノフェンを処方されただけだったそうだ。

 38℃の発熱が続いて、悪寒もあったが、悪寒戦慄までではなかったようだ。鼻汁・咽頭痛・咳はないという。発熱以外の症状はなかった。

 コロナとインフルエンザの迅速検査は陰性だった。ウイルス性上気道炎とはいえないので、血液・尿検査と胸部X線検査を行った。

 胸部X線で右肺上葉に浸潤影があり、肺炎だった。呼吸器症状がないことから、通常の細菌性肺炎ではない可能性もあり、胸部CTでも確認した。改めて確認したが、咳・痰は出なかった。

 血液検査は白血球1600・Hb10.6g/dl・血小板5.3万と貧血は軽度だが、白血球減少・血小板減少が目立つ汎血球減少症を呈していた。CRPは24.3と著明に上昇している。

 6月に突発性難聴で基幹病院耳鼻咽喉科に入院しているが、その時は血球減少には言及されていない。8月7日に健診を受けていて、白血球減少を指摘されたという。

 結果を確認すると、白血球2900(好中球51.0%)・Hb15.3g/dl・血小板11.8万と、その時から始まっていたようだ。要2次検査だが、受診はしていない。

 肝機能障害があり、血球減少と関連するかと腹部エコーで確認したが、脂肪肝を認めただけだった。肝硬変ではない。

 肺炎球菌とレジオネラの尿中抗原検査は陰性だった。血液培養2セットを提出して、入院とした。

 セフトリアキソンとレボフロキサシン併用で開始した。翌々日には解熱して、食事も摂取できた。連休明けの9月19日には体調が良くなって、暇そうに病室(個室にしていた)でラジオを聴いていた。

 血液検査再検では、白血球1100(好中球48.0%)・Hb10.4g/dl・血小板7.5万と気持ちの悪い結果だった。CRPは8.7と改善している。

 汎血球減少は骨髄の問題だろう。末梢血で芽球は出ていないが、白血病の可能性もある。再生不良貧血、血球貪食症候群などの疑いがあるが、わからない。このまま肺炎の治療を続けて、血液内科の外来に紹介できればいいが、どうなるか。

 血液内科紹介を伝えたところ、医療センターを希望された。娘さんが近くに住んでいるからという。予約がとりにくい病院なので退院は決まっていないが、来週の火曜日に血液内科外来の予約をとった。今週末に当院を退院して、念のためレボフロキサシン内服を継続して紹介としたい。

 

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熱中症

2023年09月19日 | Weblog

 9月16日土曜日は日直だった。午後2時ごろに56歳男性の家族(妻)から受診させたい、という電話問い合わせがきた。動けなくなっているというので、救急車でいいと思ったが、すでに病院に向かっていた。

 病院に向かう途中で一報を入れたということだった。電話してきた妻が相当慌てていたと、その日の看護師さんがいっていた。到着したら、診察室ではなく、救急室(救急車搬入用)に入れるよう伝えた。

 随分と日に焼けた痩せた男性が入ってきた。すぐにストレッチャーに横になってもらった。意識は清明で会話はできるが、血圧が83/59mmHgと低下していた。すぐにリンゲル液の点滴を全開で開始した。

 

 午前9時半から午後0時半まで外で草刈りをしていたそうだ。その日気温は30℃くらいで(これまでと比べて)それほどではなかったが、湿度が高かった。お昼なので、家に戻ろうとして途中で嘔気がしてきた。家に着いた時には、大汗をかいていて、右上肢と左下肢がつって激痛が走った。

 状況からは熱中症の熱痙攣と熱疲労が合わさったようだ症状のようだ。急に痛い痛いと身体をよじった。見ると、左下腿が菌痙攣を来している。

 一瞬「芍薬甘草湯」が頭に浮かんだが、そういう問題ではなく、点滴するしかない。1本目の点滴が終わるころには痛みは軽減してきた。2本目の生理食塩水(全開)が終わるころには、治まったいた。

 血液検査(試験紙使用の簡易検査)でCKは正常域だったが、血清クレアチニンが1.2とたぶんふだんより上昇していた(点滴開始前の採血)。

 1日入院しませんかと勧めてみたが、入院はしたくないという。血圧は1本目の点滴終了時に100mmHg、2本目の点滴終了時には130mmHgに回復していた。3本目の点滴が終わるころの状況で決めましょう、と伝えた。

 自動販売機で購入したスポーツドリンクを飲んで、排尿もあった。3本目の点滴が終わるところで、抜針して帰宅とした。できるだけ水分を取るようにしてもらう。

 翌日に調子がわるければ(食事摂取できない、倦怠感があるなど)、また受診して外来で点滴を受けるように伝えた。連休が続くが、自宅静養で過ごして下さいともいったが、守ってくれるかどうかわからない。(受診はしていないので、すっかり治ったのだろう)

 

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レムデシビル

2023年09月18日 | COVID-19

 9月11日に記載した、COVID-19の81歳男性のその後。

 9月4日入院後にレムデシビル点滴静注を開始して5日間投与した。その後、発症11日目からデキサメサゾンも使用した。食欲不振・倦怠感はデキサメサゾンで改善した。 

 肝機能は入院時に正常だったが、レムデシビル3日投与後は、AST 55・ALT 32・LDH 211・ALP 57・γ-GTP 21と軽度に上昇していた。9月9日までレムデシビルを5日投与したが、9月11日にAST 430・ALT 564・LDH 264・ALP 88・γ-GTP 62とかなり上昇してしまった。

 ウイルス性肺炎と判断したので、抗菌薬は投与していなかった。レムデシビルの副作用と判断される。患者さんはステロイドの効果で調子が良くなって、早く退院したいといっていた。肝機能障害の軽減を確認して退院を決めることにした。

 9月14日の再検で、AST 47・ALT 199・LDH 163・ALP 67・γ-GTP 66と改善してきた。このまま軽快して正常化すると見込まれた。すぐにでも退院したいといっていたが、結局息子さんの迎えの都合で9月16日(土曜)に退院となった。

 

 「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き」の「成人の外来診療における抗ウイルス薬の選択」には、レムデシビルは「発症から7日以内」とある。入院診療の記載はない

 この患者さんは入院日は発症8日目相当だが、レムデシビルを投与した。いつも相談している呼吸器外来の先生(大学病院感染症科から応援)に訊いたところ、レムデシビル投与は問題ないといわれた。

 9月14日に記載した88歳男性も相談したが、発症10日目だったが(診断日なので発症はもっと前か)、レムデシビルを入れた方がいいといわれた。

 入院時から開始したデキサメサゾンも継続する。「レムデカ(レムデシビル+デカドロン=デキサメサゾン)」でいきましょう、いわれた。通称としてそういっているらしい。

 ウイルス増殖期をいつまでとするかだが、通常だと10日間で、重症化すると14日までととることになる。すると、中等症Ⅱから重症の場合は、14日以前なら投与していいのだろう。

 大学病院で数100例でレムデシビルを使用して、肝機能障害・腎機能障害が問題になったのは、3例しかなかった、ともいわた。注意書きにある肝機能障害・腎機能障害はそれほど気にしなくていいという。

 今回、当院では初めてレムデシビルで有意な肝機能障害を認めた。これまでの使用例は正確にとっていないが、100例まではいっていないか。

 中止で改善してきて、まずは良かった。相談している先生は大学講師なので、大学病院で直接COVID-19 を診療している中の指導的立場の先生だ。

 

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S状結腸癌

2023年09月17日 | Weblog

 9月13日水曜日の救急当番の先生(大学病院外科から応援)が救急搬入を受けた症例。

 当院消化器科に通院している93歳男性で、前日に造影CTでS状結腸癌・癌性腹膜炎・肝転移と診断されていた。水曜日の早朝から腹痛が悪化して動けなくなって救急要請していた。

 腹部所見は板状硬になっていた。前日のCT所見はすでにS状結腸穿孔があったのかもしれない。その日の救急のバックアップ(非常勤医が救急当番なので、入院を引き受ける担当常勤医)は消化器外科医で現在内科を診ている先生だった。

 「救命のためには手術を要するが、死亡率は50~60%以上。手術をしなければ除痛などの緩和治療になるが、数日で死亡すると見込まれる」と家族に説明された。家族は手術は希望しなかった。

 

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筋肉内出血

2023年09月16日 | 筋肉内出血

 回復期リハビリ病棟に入院している脳梗塞の89歳男性は、9月11日に麻痺側の右下肢(大腿部)が腫脹していた。週末からあったのかもしれないが、痛みと腫脹の訴えはその日だった。

 6月19日に地域の基幹病院脳神経内科から転院してきた。左放線冠の脳梗塞で場所が悪く、右半身は完全麻痺だった。歩行はできないので、介助で車椅子に移乗するくらいだった。在宅生活は難しく、施設待ちの入院となった。

 

 麻痺側の上下肢の浮腫はある程度はあるが、極端に左右差がある。右大腿部は色調から見ても浮腫状だった。浮腫にしては圧痛が強かった。

 CTで確認すると、皮下の浮腫ではなかった。大腿部外側に筋肉内に出血があるようだ。

 血液検査でも転院時のHb11.0g/dlが8.4g/dlと貧血が進んでいた。先方の病院では奇異性脳梗塞の診断でDOAC(リクシアナ30mg/日)が開始されていた。当院転院後も継続していた。

 いったん休薬して経過をみるしかない。DOACが影響したとして、リハビリ時の動きが外傷となったのだろうか。

 

 放射線科の読影レポートでは大腿部の筋肉についてはまったく言及がなかった。撮影した放射線科の技師さんはすぐに、先生大腿部の筋肉がおかしい、と指摘してくれたが。

 

 数か月前にも90歳代男性が右大腿部に筋肉内出血を来した。心房細動があったが、皮下出血が目立つことと、内服が困難ことからDOACは休薬となっていた。貧血も進行したが、輸血するほどではないので経過をみて、しだいに吸収されたのだった。(結局誤嚥性肺炎を繰り返して亡くなった。)

 

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S状結腸穿孔?

2023年09月15日 | Weblog

 水曜日の救急当番の先生(大学病院外科から応援)は次々に救急搬入を受けていた。

 施設入所中の101歳女性が午前10半ごろからの発熱と悪寒戦慄で搬入された。4年前に肺炎・尿路感染症で入院した既往があった。

 今回は間質性肺炎像があるが、以前と変わらず、細菌性肺炎は否定的だった。尿路感染症らしくもない。腹部は左下腹部に軽度の圧痛程度だったが。腹部CTで所見があった。

 外科医は腸管外(腸間膜内)に空気と液体が貯留していると読んで、何らかの原因によるS状結腸穿孔で腹膜炎を来してると判判断した。

 家族に手術を要することとリスクが高いことを説明したところ、手術を希望された。地域の基幹病院外科に連絡したところ受け入れ可能となり、搬送していた。

 

 家族が手術を希望したことと、先方の病院が受け入れたことも驚いたが、翌日放射線科の読影レポートを見てまた驚いた。「肺の間質性肺炎の所見は不変。胆嚢内に結石を認めるが胆嚢炎の所見はない。」とのみあって、腸管については言及がなかった。穿孔と判断したのは間違い?、それとも読影がおかしい?。

 

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COVID-19、両側肺炎

2023年09月14日 | COVID-19

 9月13日水曜日の昼に救急当番の先生(大学病院外科から応援)が、救急隊からのCOVID-19患者さんの搬入を受けた。

 どうしましょうかと相談がきた。患者さんは88歳男性でアルツハイマー型認知症・糖尿病があった。酸素吸入10L/分で酸素飽和度が94%だった。両側肺炎を来していると推定される。

 当院は中等症までの病院で、当地域だと重症COVID-19の人工呼吸器治療は地域の基幹病院でしかできない。用意しているのは1ベットのみで、状況によっては少しだけ増やすという体制だった。

 しかし高齢者(それも80歳代後半以降)の場合は、ネーザルハイフローまでは行うが、気管挿管・人工呼吸器管理まではしていない。通常の重症肺炎でも同じ方針となるので、妥当だと思われる。

 できるだけの治療はするが、人工呼吸器まではできないが、それでもいいか家族に確認してもらった。家族の了解を得て、当院に搬入された。

 9月4日に地域の基幹病院でCOVID-19 と診断されて、自宅静養していたそうだ。発熱が続き、次第に食べられない、動けないとなっていた。通院している内科クリニックに相談したところ、救急車を呼ぶようにといわれた。

 

 実際の発症は4日以前かもしれないが、4日とすると10日目になる。胸部CTで確認すると(COVID-19の患者さんはふだん使用していない古い方のCTで撮影)、両側肺にすりガラス陰影があり、下肺野背側には浸潤影が広がっていた。ウイルス性肺炎もあるが、誤嚥性肺炎を併発したようだ。

 

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当院のコロナ定点報告

2023年09月13日 | COVID-19

 今日はがんセンター主催の感染管理のカンファランスがある(web開催)。当院の発熱外来の結果を報告するので、2週間分を確認した。

 8月28日から9月3日までは、発熱外来受診数が105名で、76名(72%)がCOVID-19と診断された。インフルエンザA型が2名いた。

 9月4日から9月10日までは、発熱外来受診数が84名で、45名(54%)がCOVID-19と診断された。インフルエンザA型は1名いた。

 受診者に発熱があれば、発熱外来を通してからになるので、急性腎盂腎炎・急性胆管炎・下痢(腸炎)・虫垂炎など呼吸器症状がなくても発熱外来扱いになる。

 発熱・呼吸器症状の患者さんに限定すれば、コロナ陽性率はもっと高い。またコロナとインフルエンザの抗原定性試験なので、感度の問題がある(60~70%)。複数の家族がコロナに罹患して、おそらくコロナと思われても検査で陰性ということもある(偽陰性)。

 先週、コロナの初期(2020~2021年)に見られたようなウイルス性肺炎(両側肺野の胸膜直下に広がるすりガラス陰影)の患者さんが入院した。

 呼吸器外来に来てもらっている先生(大学病院感染症科)にお聞きしたところ、最近ウイルス性肺炎が増えているということだった。

 

 倉原優先生のYahoo newsにも記載があった。

 デルタ株の頃と比べると肺炎の頻度はかなり減りました。しかし、直近の第8波と比較すると、当院では「ウイルス性肺炎」が増えています。

 ワクチン接種がすすめられる過程で、現場から目にすることが急激に減ったのが、このウイルス性肺炎です。当院のウイルス性肺炎の合併頻度は8~108%にまで減っていたのですが、「5類感染症」に移行してからじわじわと増え、現在18~20%の頻度となっています。

 インフルエンザではウイルス性肺炎を起こすことは多くないので、同じ「5類」でも、両者は全く異なるウイルスだと実感しています。本当にやっかいなウイルスです。

 では、なぜこのような現象が起こるのでしょうか。

 1つは感染者数が多いためです。どの波でも経験されたことですが、感染者数が多いと、それに引っ張られるように中等症や重症も増えます。

 もう1つがワクチンの効果切れの懸念です。ウイルスの毒性はそこまで変わっていないのにウイルス性肺炎をみかけることが増えたのは、感染予防効果だけでなく重症化予防効果が落ちてきているのかもしれません。

 

 忽那先生のYahoo newsから

定点報告の集計対象の日と報告される日(筆者作成)
定点報告の集計対象の日と報告される日

 

 新型コロナが5類感染症となった5月8日以降は、定点報告と呼ばれる報告体制に移行しています。

 定点報告数とは、定点医療機関と呼ばれる各都道府県で指定されている医療機関で、ある週の月曜日から日曜日に報告された新型コロナの平均報告数のことであり、翌週の木曜日に発表されます。

 したがって、これまで即日に把握できていた流行状況が、約1週間遅れるということになります。

 

 忽那先生と倉原優先生のYahoo newsは必見なので、ぜひご覧ください。ちなみに当院は定点医療機関ではありません。

 

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当地域のコロナ事情

2023年09月12日 | Weblog

 昨日は地域の基幹病院主催の「感染対策合同カンファランス」があった。管轄する保健所や医師会の先生方も参加するので、午後7時からweb開催だった。

 会議室のテレビ画面につないでもらって、感染管理ナース(ICN)と細菌検査担当の検査技師さんと3人で参加した。通常は各病院での報告があるが、今回はほぼ講演会で、もっぱら視聴するだけだった。

 

 保健所の報告では、県全体でもコロナの患者数が増加しているが、当地域は特に増加している。定点当たり報告数で45~50以上になっている。

 忽那先生のYahoo newsには「単純に比較することはできませんが、インフルエンザであれば10を超えれば「注意報」レベル、30を超えれば「警報レベル」となっています。第8波の時期はまだ定点報告ではありませんでしたが、さかのぼって同じ算出方法で計算すると、第8波のピーク時には約30であったことが分かっています。」とある。

 当地域では、今回の第9波は第8波に迫る(超す)勢いということになる。

 

 基幹病院では20名のCOVID-19患者が入院しているそうだ。院内感染の分が多いのだろう。看護師さんも20名が罹患して現在でも10名が罹患して休んでいる、そのため病棟運営が難しく入院制限をかけている、ということだった。

 当院では今回入院患者さん4名の発生があったが、そこから職員は罹患していない。散発的には各病棟内で1名か2名がコロナで休んでいる。ほとんどが子供さんからの家庭内感染だった。腎臓内科の若い先生にいわれたが、当院は院内発生、職員の罹患とも他の医療機関よりは少ない。(感染管理がしっかりしているからではなく、単に「運がいい」と解釈している)

 

 大学の感染症科の先生がCOVID-19 の講演をされた。その中で抗ウイルス薬の選択の話もあった。

 2023年8月21日に「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 第10.0版」が出ている。これまで抗ウイルス薬は並列で記載されていて、どれを選ぶべきかはっきりしていなかった。岡秀昭先生が「COVID-19特講」で、順位付けをするべきと言われていた。

 今回は「成人の外来診療における抗ウイルス薬の選択」として順位付けされている。外来診療なので、「軽症~中等症Ⅰかつ自宅療養可能な患者さん」ということになる。

 重症化リスクが高い患者さんでは、ニルマトレルビル/リトナビル(パキロビッド)を使用する(発症から5日以内)。ただし併用禁忌薬ありと高度腎機能障害(eGFR<30)では使用できない。

 これが使用できない場合は、レムデシビル(ベクルリー)を使用する(発症から7日以内)。通院による点滴治療が困難なためレムデシビルが使用できない場合は、モルヌピラビル(ラベブリオ)を使用する(発症から5日以内)。

 重症化リスクが低い患者さんでは、基本的には対症療法だが、高熱・呼吸困難(低酸素ではない)・強い倦怠感/咳/咽頭痛 などがある場合は、エンシトレルビル(ゾコーバ)を使用する(発症から3日以内)。

 入院診療ではどうなるかはないが、内服できればニルマトレルビル/リトナビル(パキロビッド)、内服できなければレムデシビル(ベクルリー)なのだろう。

 

 当院で抗ウイルス薬を処方しているのはもっぱら当方で、もう一人の先生も抗ウイルス薬を時々処方している。他の先生方はほとんど処方しておらず、70~80歳代のコロナ陽性でもアセトアミノフェンだけになっている。(当方が薬好きなだけ?)

 日本では併用禁忌薬がなく腎機能の問題もないので、処方しやすいラゲブリオが一番多く処方されている。大規模臨床試験の結果によれば効果はパキロビッドに比べて大分落ちる。

 

 

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レムデシビルの肝機能障害

2023年09月11日 | COVID-19

 9月4日に記載したCOVID-19の肺炎を呈した81歳男性の経過。

 8月28日に他院でCOVID-19と診断されていた。自宅静養していたが、食欲低下・倦怠感で9月4日に当院に救急搬入されている。8月28日が発症日とすると(実際はその1~2日前か)、8日目になる。

 両側肺にコロナらしいすりガラス陰影があり、酸素飽和度が90%未満になっていた。中等症Ⅱ相当になる。白血球4100・CRP4.7だった。

 発症後7日は過ぎていたが、10日以内だったので抗ウイルス薬のレムデシビルを投与した。さらに悪化すればデキサメサゾンを開始するつもりだた。

 酸素化は特に悪化しなかったが、3日後の9月7日の検査で白血球6100・CRP5.6と軽快していなかった。その日呼吸器外来に大学病院の感染症科の先生が来られたので相談した。

 その日は発症11日になる。抗炎症薬としてのデキサメサゾン投与は問題ない。(あまり早く入れるとウイルスの増殖を促進してしまう)

 肺炎の程度が重症だったり、進行している時のデキサメサゾン8mg/日ではなくて、4mg/日を5日間その後2mg/日を5日でどうでしょう、といわれた。

 早速その日からデキサメサゾンを開始した。その日と翌日は変わりなかったが、投与3日目の9月9日から食欲が回復して、倦怠感も軽減していた。

 今日(9月11日)病室に行くと、それまでだるそうに横になっていたが、ベット上にすっと起き上がったきた。デキサメサゾン4mg/日の5日目になるので、翌日からは2mg/日を内服で継続とした。

 血液検査は白血球8900(ステロイドのため)・CRP0.9と炎症反応は軽快していた。ただし、思いがけない肝機能障害が出ていた。

 入院時は正常だったが、レムデシビル3日投与後は、AST 55・ALT 32・LDH 211・ALP 57・γ-GTP 21と軽度に上昇していた。9月9日までレムデシビルを5日投与したが、今日はAST 430・ALT 564・LDH 264・ALP 88・γ-GTP 62とかなり上昇している。

 レムデシビルの副作用と判断される。患者さんは調子が良くなって、早く退院したいといっていたが、肝機能障害の軽減を確認しないと帰しにくい。3日後に再検してから判断することにした。

 

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