なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

過活動性膀胱

2019年12月11日 | Weblog

 火曜日の夜に、市医師会の講演会があった。講師は泌尿器科医でテーマは「過活動性性膀胱」だった。

 

 過活動性膀胱overactive bladder(OAB):診断と治療のコツ

 過活動性膀胱の定義: 1.尿意切迫感を必須の症状とする症状症候群 2.通常は頻尿と夜間頻尿を伴う(切迫性尿失禁は必須の症状ではない) 3.局所的病態を除く(膀胱腫瘍、膀胱結石、尿路感染)

 頻尿の一部に尿意切迫感があり、切迫性尿失禁の一部に切迫性尿失禁があるという関係。頻尿だけでは過活動性膀胱とはいわない。

 尿意切迫感(urgency)とは、1.急に起こる 2.抑えきれないような強い尿意 3.我慢するのが困難な愁訴。正常者が尿意を長く我慢した際に感じる強い尿意(urge)とは異なる(通常の人は尿意切迫感を感じない) 切迫性尿失禁は、尿意切迫感と同時にまたは直後に不随意に起こる失禁。

 患者さんは頻尿・夜間頻尿・尿失禁を主訴に来院する。尿意切迫感を訴えることは少ない。問診する(尿意切迫感があるか訊く)、あるいはOABSS(OAB症状スコア質問票)を使用する。夜間の尿量が多い人は違う(日本人の膀胱容量は300ml)。

 過活動性膀胱があるとQOLが低下して、治療を受けるとQOLが向上する。切迫性尿失禁を伴う女性は転倒、骨折のリスクが高い。転倒は夜間に多く、転倒するのは排尿に行く時だから。

 女性よりも男性の受診率が高い。前立腺肥大と思って受診すること、泌尿器科受診のハードルが女性よりも低い(泌尿器科は性病科と思っている、恥ずかしいと思っているなど)。患者さんが治療を受けたいという思う場所(医療機関)は、かかりつけ医(68.8%)、泌尿器科医(14.3%)、婦人科(7.0%)の順で、かかりつけ医で「(排尿で)困っていませんか?」と訊くことが大事。

 年齢とともに有病率が高くなる。40歳以上では7人に1人が過活動性膀胱で、高齢者はさらに高い。

 治療には、一般医科向けガイドラインがある。まず尿検査を行って、血尿があれば精査を要する。また膿尿があれば膀胱炎として抗菌薬治療を要する。血尿・膿尿がなくて、残尿が100ml以下は治療してもよいが、残尿が100ml以上あると治療で尿閉になることがあり泌尿器科へ回す。

 超音波による簡単な残尿測定は、残尿量=0.5×a×b×cで計算。膀胱の横断像の前後径がaで、左右径がbで、矢状断像の前後径がc。

 男性で50歳以下は背景疾患(神経疾患、脊椎管狭窄症、前立腺炎)の可能性があり、専門医に紹介する。50歳以上では、残尿症状や前立腺肥大があれば専門医紹介で、なければ一般医家で治療してよい(α1遮断薬)。

 抗コリン薬(ムスカリン受容体拮抗薬)は作用は強いが、副作用として口渇・便秘・尿閉がある(長期投与で認知症?)。(アステラスのベシケア5㎎1日1回など)

 高齢者ではβ3受容体アドレナリン受容体作動薬が上記の副作用が少なく、使いやすい。(アステラスのベタニス50㎎1日1回) 1.口渇・便秘のある症例、2.抗コリン薬で副作用が生じた症例、3.認知機能低下が出現している症例では、ベタニスを使用する。

 無治療の前立腺肥大症の中高年男性では、α1遮断薬から使用する。タムスロシン、シロドシンなど。

 前立腺肥大では、前立腺の大きさと症状は一致しない。前立腺が小さくとも尿道が狭いと尿が出にくい。高齢男性ではα1遮断薬をまず使ってみる。過活動性膀胱も3割方良くなる。(これは知らなかった)  

 

 講師は、以前当院消化器科に勤務していた女性医師の配偶者だ。消化器科医から、その日は行けないが、女性医師は今どうしているか、きいてきてほしいとも言われていた。7年間前に突然発症してびっくりした。大学病院で治療して、少し後遺症は残ったが、現在は元気に過ごしているそうだ。「バイトくらいしてもいいのではと言っているが、主婦業を楽しそうにやっているので」、ということだった。

 講演会はアステラスの共催(ベタニスの宣伝)。一般医家にもわかりやすいいい講演で、行って良かった。ベタニスは使ってみよう。

 

 

 

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普通に虫垂炎

2019年12月10日 | Weblog

 日曜日の日直は消化器科医だった。31歳女性が心窩部痛で救急外来を受診していた。朝から痛かったが、職場(衣料品店)に出勤した。痛みが続いたので早退して、午後に持続痛になってから受診した。

 腹部は平坦・軟で心窩部に圧痛を認めた。腹膜刺激症状はなかった。虫垂炎も考慮して右下腹部を丁寧に診察したが、圧痛はなかった。血液検査では、白血球15600・CRP0.1と急性期のパターンだった。腹部CT(単純)を行ったが、特に異常はなかった(と思った)。

 アセリオ注でも痛みが軽減はするが、続いているので入院にした。9月にも同様の症状で救急外来を受診していて、その時も同じ医師が診察していたが、アセリオ注で症状が軽快して、その後は治まっていた。

 翌月曜になって、痛みを感じる部位が右下腹部痛に変わった。その日腹部エコー検査を入れていて、超音波検査担当の検査技師さんから、虫垂炎ではという指摘があった。

 朝から外来~検査と忙しく飛びまわっていた消化器科医が改めて診察すると、右下腹部に圧痛を認めた。前日の腹部CTを見直すと、通常のCTスライスではほとんど短軸像なのでわかりにくいが、冠状断ではちゃんと腫脹した虫垂を指摘できた。虫垂は盲腸からいったん内側に出て、下向きから外側にくるっと回って上行結腸内側に沿って上行していた。

 夕方に外科コンサルトして、診察の結果は「緊急性はないでしょう」ということで、今日手術予定となった(準緊急くらいといっていた)。

 放射線科の読影レポートでも、臨床情報が心窩部痛精査になっていたせいか、虫垂炎は指摘されていなかった。経過も画像所見も後からみれば典型的だが、ちょっとわかりにくい経過だった。

 

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循環器疾患でした

2019年12月09日 | Weblog

  先週の土曜日は日直だった。当院の循環器科に8月初めから11月下旬まで入院して、その後施設に入所した84歳女性が、呼吸困難を訴えていると、施設の嘱託医から連絡が入った。心房細動・心不全の患者さんだった。

 当院の循環器科は平日時間内営業なので、土日は対応できない。最初から循環器科のある病院に送って方がいいかと思ったが、嘱託医としては当院からの紹介なので、まず当院でということだった。

 救急搬入されると、確かに慢性心不全の急性増悪だった。退院時でも右胸水は貯留していたが、悪化していた。BNPが普段でも300~400あるが、700になっていた。

 搬入時は血圧が160mmHgあり、酸素吸入0.5~1L/分程度で酸素飽和度97%と良かった。明らかな認知症はなく、会話可能だった。循環器科に入院した時のラシックス注、ハンプ注で、何とか月曜日に引き継ぐことができるかもしれないと思った。

 ただ内服薬がラシックス、サムスカで、ピモベンダン内服も入っていて、フルに処方されている。静注薬の追加でどれだけ反応するかという不安はあった。

 入院後に血圧が90mmHg台になり、尿量は200ml程度しか排出されなかった。到底月曜日はで持たないと判断されて、その日のうちに心臓血管センターのある専門病院に救急搬送になった。悪くしてから送ったので、それなら最初から送れば、という結果になった。

 前回長期入院になったのは施設待ちのためと思ったが、循環器科の病室の看護師さんに訊くと、心不全が落ち着かなかったからという。そもそも当方が診るのは荷が重かったようだ。

 

 他に、一過性意識消失(失神)の88歳女性が救急搬入された。倒れた時に家族が駆けつけて、意識が戻るまで5分くらいかかったそうだ。救急隊到着時には意識清明だった。

 心電図モニターには上室性頻拍が数秒から数分続いていた。(横臥した状態だが)頻拍時も自覚症状はないので、ふだんからあるのかもしれない。

 昨年直腸穿孔で当院の外科で手術を受けていた(人工肛門造設)。入院中に発作性頻拍があったという記載があり、12誘導心電図での記録はなかったが、心電図モニターでの判断らしい。ベラパミル(40mg)3錠分3が開始されていた。

 退院後は内科クリニックでベラパミル内服が継続されていた。ベラパミル1A注で洞調律に戻ったが、その後も数秒~数分の頻拍が続いた。徐脈性不整脈はみられなかった。病棟に上がってから頻拍が続いたので、ビソノテープ4mgを追加した。その後は洞調律になっていた。

 翌日の日曜日の朝に(日直後に病院に泊まっていた)、病棟看護師さんから洞調律だが、心拍数が日中は50台/分で夜間には30/分台になることもあった報告があった。ビソノテープ2mgに減量して、その後は50~60/分の洞調律になった。

 今日循環器科に報告したところ、精査しますということで、心血管性失神疑いとして循環器科転科となった。

 

 今日はドクターヘリが到着します、と全館放送が流れた。重症の患者さんは救急車で当院の駐車場まで運んで、そこからドクターヘリで大学病院か医療センターに行くことになっている。

 単に発着所を貸しているだけと、事務は思っていた。しかし実は、ドクターヘリで運べないほど重症の場合は、そのまま当院の救急室に搬入されるのだった。当院の駐車場から救急室に突然に今そちらに運びますと連絡が入るのだった。

 今日の患者さんも胸痛を訴えて救急要請したが、ドクターヘリに運ぶ前に心肺停止になった。ヘリで来ていたドクターが心肺蘇生をしながら、当院救急室に運び入れた。

 その後、残念ながら死亡確認となった。AIで死因となる異常が認められずとして、検死となっていた。当方が見ると、もともと慢性肺気腫があり、両側肺炎を来したように見えるが、発症様式は心臓病だ。

 

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臨床リウマチ学会

2019年12月08日 | Weblog

 11月30日・12月1日と臨床リウマチ学会に行ってきた。そもそも以前の「慢性関節リウマチ」という呼称は、2002年に学会が「関節リウマチ」と呼称変更して、2006年に厚生労働省も「関節リウマチ」に変更していた。

 関節リウマチの免疫異常に作用して活動性を抑えて、骨破壊の抑制や予後を改善させる薬剤が、疾患修飾性抗リウマチ薬disease-modifying antirheumatic drugs:DMARDs)。DMARDsは従来型DMARs(conventional synthetic DMARDs:csDMARDs)のメトトレキサート(MTX)・サラゾフルファピリジン(SASP)・ブシラミン(BUC)・イグラモチド(IGU)、と生物学的製剤biological DMARDs(bDMARs)のインフリキシマブ・エタネルセプト・アダリズマブ・ゴリムマブ・セルトリスマブペゴル。

 そもそもこの辺から理解する必要があるという程度なので、基本的にリウマチ膠原病は診断できれば、あるいは疑えれば専門医に紹介としている。専門病院への通院が大変になったのでと紹介された、MTX治療を継続している高齢の関節リウマチ患者さんを診ているくらいだ。リウマチ性多発筋痛症(PMR)は数例診ている(RS3PEも)。

 たぶん行くのは最初で最後の学会だが、業界の雰囲気が少しわかった気がしたので、行ってよかったと思う。

 

 高齢関節リウマチ治療の最適化 

 関節リウマチ患者の年齢中央値は69歳(後期高齢者が30%)。(中年で発症した)関節リウマチ患者の高齢化と、発症年齢の高齢化による。高齢発症関節リウマチは、1)高疾患活動性が多い、2)予後不良因子を複数もつことが多い、3)関節破壊が早い、という問題がある。治療にMTX(メトトレキサート)や生物学的製剤(bDMARDs)を要するが、合併症(CKDなど)の問題で使用しがたい。

 高齢者では、(中年のような職業を継続するという目標ではなく)身体的・精神的・社会的フレイルの進行抑制、社会生活参加の継続が目標になる。

 治療は80%がMTX、40%が生物学的製剤を使用している。今後の課題として、1)ステロイド、・NSAIDsの漸減・中止、2)MTXの減量、3)生物学的製剤の減量・投与間隔の延長がある。

 実際、ステロイドは使用は60%から30%になって、投与量も平均5mg/日から4mg/日へ減量されている。しかし罹患年数が多いと50%で使用されている。MTXは使用量が平均8mg/日以下が多くなる(加齢でeGFRが低下するため)。

 加齢とともにMTX投与量は減量・中止となり、生物学的製剤の単剤での寛解維持もある。ただし高度疾患活動性の身体機能低下例はステロイド併用を要するが、感染症の頻度を増加させる。

 今後のRA治療における経口DMARDの役割を考える

 75歳以上ではMTX・生物学的製剤の投与は少なく、MTX投与量も6mg/日と少な目になる。生物学的製剤を使用しないMTX+csDMARDsや、csDMARDs単剤(イグラモチドIGU、サラゾスルファピリジンSASP、ブシラミンBUC)の治療も行われる。(csDMARD:conventional synsthetic DMARDs従来型DMARDs) 

 免疫抑制療法の軽減により、日和見感染、免疫不全関連リンパ増殖性疾患の発症が減少する。非結核性抗酸菌症(NTM)の発症時はMTX減量してcsDMARDsの投与で、NTMを改善してRA治療を良好にできる。免疫不全関連リンパ増殖性疾患はMTX2年以上・累積投与量2000mg以上の高齢者に多い(節外性病変が多い)。MTX中止後に自然消褪例が多いが、化学療法を要する例もある。

 MTX・生物学的製剤により寛解が達成できて、寛解を長期維持できれば、生物学的製剤の中止・MTXの減量中止を考慮する。その際にcsDMARDsを使用すると、MTX・生物学的製剤の減量をはかることができる。

 csDMARDとしてはイグラモチドを使用するという内容だったが、これは販売している会社のスポンサードレクチャーだから。臨床リウマチ学会はこのスポンサードレクチャーがやたらと多いのが特徴。

 膠原病診療における自己抗体検査の活用法

 膠原病の自己抗体測定は、1)診断の補助、2)病型分類、3)疾患活動性や治療効果の評価、に使用する。

 ・全身性硬化症(SSc)  抗Scl-70抗体:びまん性皮膚硬化、間質性肺炎。抗セントロメア抗体:限局性皮膚硬化、CREST症候群。抗RNAポリメラーゼ抗体Ⅲ抗体:びまん性皮膚硬化(急速に皮膚硬化が進行)、強皮症腎クリーゼ(20%)。強皮症腎クリーゼ(Scleroderma renal crisis:SRC)は悪性高血圧と急速進行性腎機能障害を呈する。アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)で改善。pareneoplastic SSc(診断時、10~20%に悪性腫瘍)。

 ・多発性筋炎  抗ARS抗体:間質性肺炎(NPIPパターン)。抗MDA5抗体:無筋症性皮膚筋炎(amyopathic dermatomyositis:ADM)で、急速進行性間質性肺炎をきたす。抗TIF-γ抗体:悪性腫瘍を併発(40歳以上で72%、60歳以上で85%)。抗Mi-2抗体:ステロイドの反応性は良好だが、再発しやすい。(抗Mi-2抗体と抗TIF-γ抗体は交差反応を起こす) 抗SRP抗体:免疫介在性壊死性ミオパチー。

 RA治療におけるリスクマネージメント(肺感染症)

 RAに潜む感染症発症リスク  1.リウマチ患者の免疫異常(Tリンパ球の病原体認識低下) 2.疾患活動性の高いリウマチ患者では重症感染症リスクが高い(CRP0.05を保つ)、3.リウマチ関連肺疾患による感染症(10%に合併する間質性肺炎では、肺炎が発症しやすく、肺癌の発生しやすい。気腫合併間質性肺炎は上葉に気腫性病変、下葉に線維化病変があり、肺癌リスクが50%と高い。)、4.リウマチ治療の免疫抑制薬による特殊な感染症(結核特に播種性結核、非結核性抗酸菌症、Pneumocystis jiroveciを含む真菌症、細胞内寄生菌。bDMARDsによる感染症は治療開始から6か月~1年での発症が多い。bMARDs間で感染症発症リスクに差はない。)

 感染症発症リスクのチェック  胸部X線・胸部CT(HRCT)、白血球分画(好中球・リンパ球)・ステロイド長期服用歴、HBc抗体、IGRA。結核は肺外結核の頻度が高い。

 膠原病を見逃さない皮疹の意味とコツ

 全身性硬化症  1.レイノー現象、手の潮紅、2.手のむくみ感(手指が厚ぼったく触れる、PIPのシワが厚い)、3.爪上皮出血点、4.指尖部虫食い状瘢痕、5.毛細血管拡張。

 皮膚筋炎  1.爪上皮出血点・爪囲紅斑、2.ゴットロン潮紅、3.メカニクスハンズ(指の横の角化)、4.ヘリオトロープ疹・顔面紅斑、5.掻痒の強い掻把性皮膚炎。

 SLE  1.蝶形紅斑・耳介紅斑、2.手掌や手指の滲出性紅斑、3.粘膜潰瘍(硬口蓋の海洋が特徴的)、4.非瘢痕性脱毛、5.繁盛丘疹上位ループス。

 シェーグレン症候群  16%に皮膚症状。1.再発性遠心性環状紅斑(特異的、急性)、2.指節性紅斑(非特異的、急性)、3.蕁麻疹様血管炎・皮膚血管炎(非特異的、急性) 皮疹を有するシェーグレン症候群は全身性臓器障害を伴う。

 文章にするとわかりにくいが、多数のスライドで膠原病の皮疹が見られてよかった。リウマチ膠原病の皮疹のアトラスが出ていので購入してみよう。

 

 

 

 

 

 

 

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大物だけ受診

2019年12月07日 | Weblog

 今日は日直で病院に出ている。昨日金曜日の当直は外部の先生だった。当方が内科当番だったが、特に連絡はなかった。夜間の受診を確認すると、準夜帯で1名、深夜帯で1名と随分少なかった。ただし中身は濃かった。

 午後9時に74歳男性が背部痛で受診していた。前日から背部痛があり、いったん軽減していた。その日の朝から増悪して、夜間になってから受診した。受診時に血圧が80mmHg台と低下していた。

 腹部CTで腹部大動脈瘤破裂を認めた。後腹膜側に破裂したので、持ちこたえていたようだ。急速補液で血圧は100~120まで上がった。当番の外科医が呼ばれて、大学病院に搬送した。

 午前0時過ぎには60歳男性が頭痛で救急搬入された。温泉のホテルに来ていて、飲酒後に転倒して頭部を打撲した。寝ていても頭痛が取れないので救急要請していた。

 頭部CTで外傷性のくも膜下出血と硬膜外出血を認めた。こちらは脳外科のある地域の基幹病院に搬送となった。

 受診数は少ないが、重症が続いたことになる。昨日は外科病棟の忘年会だった。呼ばれた当番の外科医は飲酒していなかったのだろう(たぶん)。ふだんから声の大きい楽しい先生だ。

 

 

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孫請け~気胸もあった

2019年12月06日 | Weblog

 昨日、地域の基幹病院呼吸器内科から72歳男性が転院してきた。大抵訳ありの患者さんが多いが、この方も複雑だった。

 まず潰瘍性大腸炎で大腸全摘・回腸ろう増設がある。肺癌で右上葉切除術を受けていた。そして今回は喉頭癌・下咽頭癌で放射線治療を受けている。治療したのはいずれも医療センターで、今回は耳鼻咽喉科・放射線科の扱いになる。

 放射線療法後に嚥下障害で経口摂取ができなくなり、11月下旬に地域の基幹病院呼吸器内科に転院となった。嚥下訓練をしても嚥下は難しく、なにしろ喀痰が多い。そこで経鼻胃管で経管栄養が開始された。

 そこから持っていきようがなくなったのだろう。今週初めに当院に転院の依頼が来た。「どうしますか、胃瘻増設ですか」、と訊くと「う~ん、そうですかねえ」ということだった。廃用症候群になってはいるが、患者さんは歩行できる。

 主には胃瘻増設目的での転院となった。転院時の画像は、入院時検査の胸部単純X線1枚だった。なんだか右肺炎があるように見えて、それに胃瘻増設のために胃の位置を確認する必要がある。

 昨日午後に、さっそく胸部X線と胸腹部CTを検査した。放射線技師さんから連絡がきて、「先生、気胸です」という。CTを確認すると、まず肺気腫像がある。肺炎を疑った右肺は問題がなく、確かに左気胸だった。

 基幹病院の胸部X線(2週間前)を確認すると、左気胸があった。程度としては同じくらいだろう。胸腔ドレーンを挿入する状態ではないので、経過観察となる。

 昨日、認知症の高齢者の内視鏡的胃瘻増設があった。実はもう胃瘻増設の患者さんがいて、と消化器科医に都合を訊くと、来週の月曜がいいと言われた。

 多種類の癌の既往があるので、食道癌・胃癌はないんでしょうね、とも言われた。たぶん医療センターで術前検査としてしているはずだが、診てみないとわからない。

 優秀な消化器科医なので、胃瘻増設時の内視鏡挿入時に早期の食道癌や胃癌をみつけるかもしれない。大腸全摘なので、胃瘻増設時に横行結腸が胃の前に被らないのは助かる。

 なんだか今週は気胸にたたられる。ちなみに紹介した呼吸器内科医の奥さんは当院放射線技師。

 

 

 

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肺気腫の気胸

2019年12月05日 | Weblog

 64歳男性が突然の呼吸苦(呼吸困難)で救急搬入された。当院の呼吸器外来(外部医師担当)に肺気腫・喘息で通院していた。

 この方は事故(自宅で階段から転落)による脊髄損傷で両下肢麻痺がある。自宅で車椅子生活をしている。母親が死亡した後はひとり暮らしだった。近所の友人が駆けつけてくれた。

 午前11時45分ごろに水を飲んでいて、突然呼吸が苦しくなった。自分で病院に行こうとしたが、苦しいので救急要請したという。水を飲んでむせったわけではない。以前の胸部CTで右下肺野に巨大なブラがあるのが気になった。

 血圧は130/70だが、心拍数120/分、呼吸数28回/分と頻呼吸・頻拍だった。救急隊が到着した時は酸素飽和度が70%台だったというが、酸素8L/分で95%になっていた。マスクの圧迫感がいやだというので、少しずつ減量して鼻カニューラ3L/分で92%程度になった。

 胸部X線で右気胸があるようだ。CTで確認したが間違いなく気胸だった。結構右肺が虚脱している。胸腔ドレナージが必要だ。自然気胸などは通常外科医が診ているので相談したが、脆弱な肺組織でドレナージだけで広がらないのではという。

 搬送する余裕はあるので、呼吸器病センターのある専門病院に連絡して、救急搬送になった。呼吸器外科があるので、何とでも対応できるのだろう。外来で診ている先生から巨大なブラに対しての手術を勧められていたような話だった。気胸が危惧されるというよりは、reductionの意味だったのかもしれない。

 先々週の週末に、両側肺炎で低酸素の患者さんを搬送したのに続いての搬送だった。

 

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パーキンソン病の麻痺性イレウス

2019年12月04日 | Weblog

 神経内科外来に通院している75歳女性は、以前から便秘もあって処方を受けていた。先週末から嘔吐するようになり、月曜日に内科外来(大学病院からバイト)を受診していた。

 腹部X線でいわゆるニボー形成を認めた。腹部所見が軽度だったせいか、原疾患によるものとして、点滴と便秘薬の追加をして翌々日(今日)の神経内科外来を受診するようにとして帰していた。

 その後、腹部膨満で食事摂取できなくなっていたが、患者さんは律儀に今日外来を受診した。腹部CTで著明な腸管(胃も著明)の拡張を認めた。嘔吐による誤嚥性肺炎も軽度だが、起きていた。

 これは入院治療するしかない。腸閉塞は外科で診ることになっているので、外科医が経鼻胃管を挿入して入院とした。明らかな大腸癌はなさそうで、腹部手術の既往もない。パーキンソン病自体による便秘の悪化なのだろうか。

 麻痺性イレウスだと、腸閉塞の治療をした後に薬物治療を工夫するしかない。酸化マグネシウムが処方されていて、ルビルポストンはあまり効かなかったそうだ。後は、大建中湯くらいか。

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不明熱?~抗セントロメア抗体陽性

2019年12月03日 | Weblog

 山間部の町立診療所から84歳女性が紹介されてきた。8月から微熱が続いているという。内科新患は内科の若い先生(地域医療研修の内科専攻医)だった。

 10年前にその診療所(当時は別の先生)からリウマチ膠原病専門の病院へ関節痛で紹介していた。DIP関節なので変形性関節症であること(NSAIDで経過観察と)、検査の結果抗セントロメア抗体が陽性だったが、皮膚硬化やCREST症候群の症状はなく、経過観察とした、という返事がきていた。

 そういう経緯があるので、現在の診療所の先生が当地域の基幹病院リウマチ膠原病外来に紹介していた。現時点では膠原病ではないという返事が来たそうだ。

 発熱の原因を精査してほしいというのが目的だったので、改めて当院内科に紹介したということだった。ただ微熱だけで、炎症反応はずっと陰性だった。発熱以外の有意な症状もない。

 若い先生は一通りの血液検査と胸腹部CTを施行した。やはり炎症反応は陰性で生化学検査でもこれといった異常はない。胸腹部CTでも特に異常は認めなかった。これだけで精査といえるかという問題はあるが、これ以上の検査(血液培養などの各種培養、骨髄検査など)はやり過ぎになりそうだ。

 現在特に異常を認めないので、経過を診てくださいという返事を出していた。特に当方には相談されなかったので、それで問題ないと考えたようだ。

 若い患者さんならば、習慣性高体温症となるが、この年齢では器質的な疾患を疑いたくなる。國松先生の本によれば、こういう症例だと後から悪性リンパ腫を含めた血液疾患が出てくるのかもしれないが。

 

 先週の土日は臨床リウマチ学会で名古屋に行っていた。昨年東京開催だったので行きたかったが、内科の別の先生の遅い夏休み期間と被ったので行けなかった。なるべく素人が聴いてもわかりやすそうな講演を選んで聴いていた。膠原病の皮膚病変の講演と、膠原病の自己抗体の講演が特に良かった。お土産は定番のういろうしか思い浮かばなかった。学会のイブニングセミナーでういろうが出たが、そんなにおいしいものでは・・・。

 

 

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肝膿瘍

2019年12月02日 | Weblog

 61歳男性が2週間以上前から38℃の発熱が続き、通院していた内科クリニックから紹介されてきた。経口抗菌薬をレボフロキサシンからメイアクトに変更しても症状が続いていますという内容だった。

 すでに10日前には白血球15300・CRP20とかなりの炎症反応上昇を認めていた。胸部X線と尿検査は異常なしとあるので、原因がわからないままに抗菌薬を投与していたようだ。

 最近跡を継いだ2代目の先生だった。以前いた循環器科の先生から聞いたところでは、父親の先生も、「心不全の治療を外来でして、いよいよ悪化してから紹介する」ということだった。外来で引っ張る傾向があるのは親子で似ているようだ。

 新患担当の先生が外来で普通に診察して、炎症反応上昇(白血球14200・CRP28.0)と胆道系酵素上昇が目立つ肝機能障害(AST 41・ALT 65・LDH 201・ALP 844・GTP 199・総ビリルビン2.1)を認めた。

 「急性胆管炎あるいは肝膿瘍疑い」として腹部造影CTを検査した。肝臓内に複数の膿瘍を認めて、診断は肝膿瘍と確定した。腹部エコーでみても胆嚢・肝外胆管には異常を認めなかった。

 肝膿瘍は化膿性かアメーバ性かとなるが、アメーバ性を考慮する状況ではないらしい。現在の病状ではまだ液状の膿瘍が熟成?していないので、すぐ緊急ドレナージの適応はない。当院では(ドレナージの問題で)外科にお願いしているので、外科入院でみてもらうことになった。

 新患担当の先生は、大学病院からバイトで来ている若い先生(大学院生)だった。もう一人若い女性のことでも相談された。高熱が先行して、その後に頻回の下痢(水様便)になっていた。「カンピロバクターと思いますが、入院か外来かを含めて診て下さい」ということだった。みごとな対応で、恐れ入りました。

 

 

 

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