なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

絞扼性イレウス

2015年07月11日 | Weblog

 一昨日の金曜日の当直帯で83歳女性が腹痛で救急搬入された。搬入時は腹痛が軽快して、腹部CT・血液検査で異常を認めなかった。当直は麻酔科研修中の若い先生(呼吸器科)だった。経過観察目的で当直医が主治医となっての短期入院となった。翌朝(昨日の朝)も症状軽快していて、午後には退院の予定となっていた。

 私が外来で診ている患者さん(軽度の糖尿病・脂質異常症・不眠症)だったので、昼前に病室に診に行った。もう少し入院して経過をみてもいいことをお話すると、自宅で休むほうがいいと笑顔で答えた。この方は認知症の夫を介護していて、外来に来るといつも「介護が疲れる」と言っていた。息子さんが来ていて、患者さんの夫を急遽ショートステイで施設に預けてきたという。介護の必要がないなら、病院で少し休んでから退院してはと勧めたが、やはり帰りますということだった。では、もし症状がぶりかえしたりしたら、考えましょうと伝えた。

 午後4時に病棟から電話が来て、この患者さんが3時ごろから腹痛を訴えて、1回嘔吐したという。病室に診に行くと、症状は軽快していた。入院時からの点滴は終わって抜針されていた。点滴を追加して、食事を止めた(水分は可)。来週まで経過を見ることに同意された。腹部は柔らかく、まあ臍周囲に軽度の圧痛があるかなという所見だった。検査を追加しなかったのは、搬入時の検査が全く異常なしだったことが影響した。

 昨日は内科の当番で、当直医が外部の応援医師なので、救急外来からの入院に備えて、病院に泊まっていた。その後、午後8時にまた腹痛が始まり、病棟から連絡が来た。今度は激痛だった。病棟に診に行くと、腹部は夕方診た時よりも張っていた。圧痛は臍周囲から左下腹部にあった。腹部造影CT検査をオーダーした。看護師さんから、午後から排尿がありませんと報告があった。腹痛で動くのも大変だし、尿閉の痛みではないが、尿カテーテルを入れることにした。尿は300ml排出された。排出されると、下腹部は平坦になって、腹痛はすーっと改善した。あれ、尿閉というほどの排尿ではないし、腹痛の原因が尿閉でもないし、と不思議な気がした。

 腹部造影CTを行うと、小腸下部で腸管が急峻な閉塞を認めた(beak sign)。小腸同志が斜めに交錯しているようだ。この患者さんは50歳代に他院で卵巣嚢腫の手術を受けて、下腹部に手術痕があった。術後の腸閉塞で、絞扼性イレウスと判断された。当番の外科医に連絡すると、すぐに診に来てくれた。ただ患者さんの腹痛は排尿後から改善して軽減していた。排尿によって、骨盤腔内に空間的な余裕ができたことが効いたと推定された。普通に会話もできる。外科医も迷ったが、いったんイレウスチューブを入れて、保存的に翌朝まで経過をみることも考えたようだ。

 イレウスチューブを入れて病棟に戻ると、また腹痛が出てきた。外科医が病棟で腹部CT画像を時間をかけて見直していた。造影されない腸管はないが、腸管壁の浮腫が見られるところは造影効果が弱いようにも思われた。病室での診察と画像の検討を繰り返してから、緊急手術を決断された。それからは、麻酔科医と手術に入るon call2番目の外科医への連絡、外科病棟への手配(婦人科小児科病棟を借りて入院していた)と、あっという間に進んでいった。

 夜間の手術をお願いすることになって申し訳ないなあ、午後に腹痛が再発した時に検査をしておけばと、こちらは内科医的に?うじうじと反省していた。当直帯で断続的な救急外来受診があって、入院歴のある高齢者も数名受診していたが、新規入院はなかった。

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