なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

「IMPELLA」

2021年12月30日 | Weblog

 月曜日に発熱で76歳男性が内科クリニックから紹介されてきた。内科の若い先生が診て、急性腎盂腎炎として入院した。

 紹介の理由に、昨年3月に発熱(+重度の呼吸困難)で劇症型リンパ球性心筋炎で専門病院に入院した既往があり、心配だからとあった。

 今回はそういう重大な疾患ではなかったが、そのエピソードは知らなかった。受診したのは休日で、大学病院からバイトにきた外科医が救急搬送していた。

 

 昨年3月初めの日曜日に、3日前から発熱が続いて、当番医を受診して当院紹介となっていた。受診したのは、午後6時過ぎになっていた。

 バイタルは、体温39℃・血圧112/83・心拍数122/分・酸素飽和度94%(室内気)だった。胸部X線・CTで心拡大と左肺のわずかな胸水を認めると記載されていたが、後で見ると心嚢液貯留の方が目立つ。

 内科当番の若い先生(その年の3月まで研修)に連絡して、入院でラシックス1A静注の指示が出ていた。しかし患者さんが仕事があって入院できないと言って、内服処方で翌日(月曜日)受診となった。

 検査結果は、白血球9800・CRP7.9と炎症反応の上昇があった。BNPが1082.5と著明に上昇していた。CK319と軽度に上昇して、AST・LDHも上昇しているが、肝機能障害(ALP・γ-GTPも上昇)があり、うっ血肝と言うべきか。トロポニンは測定していなかったが、著明に上昇していた可能性が高い。

 心電図はⅡ・Ⅲ・aVFでST低下があり、V1-3でpoor r wave progressionがあるが、ST上昇ははっきりしない。回復後の心電図と比べれば明らかにおかしいが、(当方の実力では)何だか悪そうだとしかわからない。

 患者さんは無理やり帰宅したが、翌日午前1時過ぎに呼吸困難で救急要請した。酸素10L/分でも酸素飽和度が80%台後半から90%にしかならなかった。

 当直医は検査を呼ぶ余裕もなく、心臓血管センターのある専門病院に救急搬送していた。バイトで来て、このような病状の患者さんを診ることになって、大変だったろう(診る方も動悸・冷汗もの)。

 

 搬送後は意外に短期間で退院になり、診療情報提供書の返事が来ていた。内容は簡潔なもので、「IMPELLAを挿入して管理しました。心筋生検で劇症型リンパ球性心筋炎と診断されました。ステロイドパルスとカテコラミンサポートなどを行いました。第3病日に心機能が改善して、IMPELLAを抜去。その後軽快して(約2週間で)退院になりました。」とある(3行)。

 IMPELLAは2017年に認可された補助循環用ポンプカテーテルで、カテーテルで左室に入れて使用する。ネットで見て、こんなに細いもので補助循環ができるのかと驚いた。

 すごいことを軽々とやっている世界があるのだった。

インペラ (IMPELLA) | 鳥取大学医学部 器官制御外科学講座 心臓 ...

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