なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

PTPでした

2021年12月16日 | Weblog

 12月14日に記載した胃前庭部腫脹の72歳女性のその後を、消化器科医が報告してきた。

 入院時に腹部CTで胃前庭部に全周性の浮腫性腫脹があった。入院後の内視鏡検査では胃前庭部の限局性にごく軽度の発赤・浮腫があるだけだった。

 心窩部痛も消失していたので、食事が開始されて問題なく摂取できた。患者さんから、便に変なものが混じっていたという報告があったそうだ。どうも薬のPTP包装シートらしい(あの薬を入れいる銀色のもの)。

 改めて、腹部CTを見ると、前庭部の幽門輪のところに線状の物が写っていた。薬のPTP(press through pack)包装シートは薬10個がひとつのシートにパックされている(最近は2週間分14個の薬のシートもある)。あれの1個分のシートらしい。

 患者さんの中には、PTP包装のまま、1個ずつハサミで切ってしまう人がいる。その形で1日分ずる小分けにしている。そうすると、1個分のPTP包装シートを、薬ごとあるいは何かの拍子に薬を取り出したシートを飲んでしまうことがある。

 この患者さんもそうだった。PTP包装シートを飲んだかもしれないという。1個分のシートは四角に切られるので、通常は間違って飲むと下咽頭か食道上部で引っかかる。違和感と疼痛がひどいので、異物誤飲として緊急内視鏡で取り出すことになる。

 実は救急外来を受診して入院になった土曜日の2日前(木曜日)に、耳鼻咽喉科外来を受診していた。主訴は、「薬を3個飲んだ後に、のどに引っかかっているような気がする」というものだった。

 耳鼻咽喉科なので、喉頭鏡で観察して、食道入口部までにはまったく異常を認めなかった。症状が続く時は、上部消化管内視鏡検査でみてもらうように、と言われていた。その後のどに詰まった感じは消失したので、消化器科を受診しなかった。

 症状からは下咽頭か食道上部でいったん引っかったが、無事に咽頭食道を通過して、胃内に落ち込んだ。幽門輪を通過できずに止まってしまったので、そこで浮腫性の炎症を来した。

 しかしその後無事に幽門輪を通過して、小腸から大腸に流れ込み、ちゃんと便といっしょに排出されたのだった。何か所かで引かかったものの、自力で治したのだからたいしたものだ。

 たいていは、PTP包装1個分の四角の角が消化管粘膜に刺さってしまうものだが、飲食物の流れに押されてうまく通過していったようだ。

 

 食道で引っかかってしまった患者さんが来て、たまたま消化器科医がいないと、代わりに摘出を頼まれることがある。粘膜を傷つけないように取り出すため、内視鏡の先端に透明フードを装着する。異物鉗子では大きすぎるので生検鉗子でつかんでフード内に入れて、内視鏡ごと抜いて来る。

 研修医の時に、大きな魚の骨を飲み込んでしまい、食道粘膜を傷つけて縦隔炎を来した患者さんもいた。消化器科医だと、さまざまな異物誤嚥の経験があるはずだ。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする