炎症反応高値が続いて、原因不明だった71歳女性を、リウマチ膠原病科のある総合病院に紹介していた。
簡潔な返事が来ていて、造影CTで大動脈弓とその分枝に壁肥厚を認め、高安動脈炎と診断されていた。PET-CTを別の病院で行って動脈炎の分布を確認するそうだ。まったく考え及ばなかったので、またまた紹介してよかったということになる。
昨年末の12月27日に、1週間前からの両肩の痛みを訴えて、内科外来を受診した。普段はクリニックに高血圧症で通院している。蹲踞からの立ち上がりがひどく、要するに四肢の痛みで動きにくいという訴えだった。発症様式からはリウマチ性多発筋痛症(PMR)を考えた。年末年始の休みに入る前日で受診が多く、一発診断的に診断してしまっていた。
白血球7300・CRP1.7とさほど上昇していなかったが、血沈73/97と亢進していた。前2者が低いと思ったが、外来でPMRとしてプレドニン10mg/日を開始した。年明けの1月4日に受診した時には症状が軽快消失していた。白血球9100・CRP0.7だった。その時点ではちょっと腑に落ちない点はあるが、PMRでいいだろうと思っていた。抗CCP抗体・抗核抗体は陰性だった。
プレドニン10mg/日を4週間継続して、1月23日に外来に来てもらった。症状はまったくないという。その点はよかったが、白血球6800・CRP6.8だった。CRPの値が間違っているのかと思った。再度確認したが、症状はなかった。
その後もプレドニン10mg/日を継続して、症状は全くないというが、白血球9000前後・CRP7~11で推移した。血沈は100/1時間が続いた。巨細胞性動脈炎が併発していて、PMRの症状だけ改善したのではないかと考えたが、頭痛も下顎跛行もなかった。
患者さんから、もう通院しなくてもいいかと言われたが、クリニックの先生にフォローを頼むのも無理だろうと思った(クリニックの先生は外科医)。プレドニンは漸減中止していた。血液培養2セット・心エコー・血清免疫電気泳動などを追加していたが、異常はなかった。
5月に紹介した時点でも、発熱はなく特に困る症状もなく、専門科のある病院に行かなければならないのか、と言われた。絶対何かあるので、紹介先を受診してくれるよう頼んだ。
今考えると、ANCAの検査もしていないし、悪性リンパ腫や膿瘍を疑った造影CTもしていない。しっかり検査するか、もっと早期に紹介すべきだった。症状がないということで、血液検査のみで経過をみてしまった。
三森先生の本によると、高安動脈炎は高齢者でもまれではないという。動脈炎・動脈狭窄による虚血症状は出ていなかった(たぶん)。それにしても受診当初の四肢痛は何だったのだろう。
紹介状の返事に、「大変興味のある症例をご紹介いただき、ありがとうございました」、とあった。いえいえ、ご高診恐れ入りました。いつも助けていただいて感謝です。