なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

胆嚢炎ではあるか

2019年06月09日 | Weblog

 土曜日の朝に、金曜日の当直だった先生(外部の病院からのバイト)から連絡が来た。

 34歳男性が右側腹部痛で救急搬入された。尿管結石の既往があり、再発かと思って検査をしたが、尿管結石はなかったという。肝機能障害を認めるが、明らかな胆石はないので、診断に迷ったうようだ。土曜日の日直で病院に行くので、鎮痛薬を使用して外来で点滴を継続してもらうことにした。

 午前0時ごろから右季肋部痛が発症した。(右側腹部痛と表現したのは、尿管結石かと思ったからで、実際の部位は右季肋部)突発ではないが、短時間で痛みが強くなって我慢できなくなっての救急要請だった。右季肋部に圧痛があり、Murphy徴候陽性となる。

 白血球11200・CRP0.1と炎症反応は発症直後相当の値だった。AST329・ALT207・ALP234・γ-GTP329・総ビリルビン1.8・血清アミラーゼ80だった。確かに造影CTの所見では、胆嚢は壁肥厚がなく、胆嚢結石もない。総胆管拡張はなかった。

 胆嚢結石はCTで描出しにくいので、腹部エコーで確認したが、胆嚢壁肥厚はなく、胆嚢内に結石・debrisはなかった(胆嚢コレステロールポリープあり)。明らかに脂肪肝なので、ふだんから肝機能障害はあるのだろうが、ここまで上昇はしないだろう。アルコールは機会飲酒で、2週間に1回あるかないかだという(焼酎350mlを1~2缶)。昨夜は飲酒していない。

 当直医がロキソプロフェンを1回内服させていて、疼痛は軽減していたが、消失はしていない。胆嚢炎として絶食・点滴・抗菌薬で入院治療にしようと思ったが、患者さんは入院したくないという。付いてきていた両親は入院してほしかったが、本人の意見でいくことになった。外来で抗菌薬点滴静注(ABPC/SBT)と点滴をもう1本追加した。

 午後になってから症状の増悪がないので、抗菌薬(オグサワ)と鎮痛薬(ロコソプロフェン)内服として、月曜日に内科外来受診とした。ただし、帰宅後に夜間や日曜日に症状が悪化すれば、その時点で入院治療とした。

 胆嚢炎の所見が悪化すれば無石胆嚢炎?。この脂肪肝(NAFLD)がNASHだとしても、NASHの急性増悪なんてある?。

 

(後日記) 胆嚢炎ではまったくない

 土曜日の夕方に帰宅したが、日曜日は受診せず、予定通り月曜日に外来を受診した。右季肋部重苦感は残っていた。発熱はなかった。白血球5300・CRP1.4と炎症としては軽快し始めた時のような(?)値だった。

 肝機能が悪化していて、AST242・ALT929・ALP421・γ-GTP488・総ビリルビン3.6と黄疸もあった(血清アミラーゼ54と正常域)。腹部エコー再検では、胆嚢壁肥厚・胆嚢結石・debrisはなく、小胆嚢ポリープのみだった。胆道系の拡張はない。

 以前に初診の時に胆嚢の所見に乏しく、その後急激に胆嚢炎の所見を呈した症例があったが、これは全く違う。MRCPはしていないが、総胆管結石は否定的だ。すると肝炎なのか。

 結局原因がわからないので、翌日に肝臓専門医もいらっしゃる地域の基幹病院消化器内科の予約をとって紹介とした。

 

コメント (2)
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