教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

教育改革の言説に必要な視点

2007年02月14日 19時15分51秒 | 教育研究メモ
 今日は久しぶりに早起き。登校後、速読のトレーニングと、基本法の勉強をする。今日こそは運動しようと思って体育館へ行くと、休館日だった(月曜でも祝日の翌日でもないのに…)。仕方ないので、一度家へ帰って再び登校。再登校後は、「群像」の記事を書いた後、昼飯を食べる。
 今日は、広田照幸『教育』(思考のフロンティア、岩波書店、2004年、¥1300+税)を読み切り。同著は、個人化とグローバル化が進む今、教育改革の言説は、3種類の「異質な他者」との間における富と機会の配分に注目しなければならないとします。第1に、同じ社会(日本とか広島県とか…?)における他者です。つまり、富裕層の人々から見た貧困層の人々やその逆、日本国籍を持った人々から見た外国籍の人々やその逆のこと。第2に、別の国に住む他者です。つまり、先進国の人々から見た発展途上国の人々のこと。第3に、未来に生きる他者です。つまり、現在を生きる我々から見た未来に生きる我々の子孫のこと。要は、教育の改革を主張する際には、その改革によって想定している者とは違う、「他者」の機会や将来を奪っていないか注意しなくてはならない、ということだと思います。
 広田著では、階層間(同世代間)・世界間・世代間の富と機会の再配分を実現させる教育システムをいかに形成するか、という問題を読者に考えさせようとしているようです。内容はちょっとむずかしいですが、今進行中の教育改革の動きに違和感を感じる人も感じない人も、一度は読んで欲しい本です。
 あと、教育基本法の新旧比較による相対的把握のための、お勉強をば。

  【第7~8条】
○旧教育基本法
 (該当条文なし) 
○新教育基本法第7条(大学)
 大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。
 2 大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。
○新教育基本法第8条(私立学校)
 私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。

 新法第7条・第8条により、従来「学校教育」として一律に法律に規制されていた大学教育・私立学校教育は、個別にその性格を規制されることとなった。また、同時に、国家・政府・地方公共団体は、これらの教育について、その役割・特性を尊重しながら助成・支援・管理等を行うことを課せられることになった。
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