先日、学生の教職教養ある姿について少し触れました。その時のエピソードをもう少し具体的に紹介させてください。
公教育制度は、教育・地位獲得の機会均等にかかわり、すべての子どもたちになるべく同じ教育を経験させて、国民(市民)として育てることを目指す一面をもっています。この場合は、公教育制度は、卒業後の格差をなるべく小さく、または入学時にすでに生じていた格差をなるべく埋めることを期待されています。
本学の教育学部教育学科1年生の前期科目「教育学入門」では、「公教育・公立学校とは何か」というテーマで研究していた班がありました。そして、上記の点に注目してしっかり先行研究をまとめて発表してくれました。それ自体もすばらしかったのですが、加えて質疑応答時に質問した学生がまたすばらしかった。その学生は、「格差を生じさせないために公教育制度がある、というのはよく分かったが、そもそも公教育制度は格差を生じさせないために成立したのか?」という質問をしました。歴史的思考・判断を働かせようとして、発表内容だけでは判断できなかったために行われた質問だったと思われます。
この質問した学生は、「教育に関する知識や技術(教職教養)とは何か」というテーマで研究していた班に所属していた学生でした。すでにこの学生は発表は終了しており、質疑応答時・発表後に私と「歴史的に思考・判断するとはどういうことか?」という議論をした後の出来事でした。以前の議論開始時には、この学生は、歴史的思考・判断について「具体的にはよくわからない」と答えていたのです。ちなみに同じ前期科目の「教育の思想と歴史」では、「義務教育とは何か」というテーマで、公教育制度に関わる義務教育の歴史の概要を学んでいます。まさに教育学入門の時の質問の姿は、それまでの学びを自分なりに生かし、別の場面で活用した姿ではないかと思いました。本当のところは本人に聞いてみないとわからないのですが、私としては教職教養の芽生えを感じた次第です。また、質問された班の学生の中にも、確かに…とこの問題についていろいろ考えを巡らしたようです。歴史的思考の姿が他の学生にも影響したとも言えます。
歴史的事実に注目する姿勢、そしてその意義について学ぶことは、やはり歴史的に思考・判断する教職教養ある姿につながっていると実感しました。教育史は学生の成長に関われるのです。
なお、公教育制度の格差に対する機能は、まずは、やはり現代的課題としておさえておくことが肝要です。現代社会における格差の問題は、まずは、現代社会の文脈で検討しなければ、その本質を把握することはできないからです。ただ、その上で、さらに課題理解や解決策を深めるために、公教育制度の歴史を踏まえてその歴史的課題と現代的課題とを見比べることはとても有効です。たとえば公教育制度が向き合うべき格差の質について歴史的変遷をふまえることなどによって、何がどの点でつながっていて(何が古くからある課題で)、何が新しい課題なのかを追究することは可能ですし、極めて重要な問題が見つかる可能性は十分あります。もちろん、国際的や多元的な思考・判断をすることにも大きな意味があります。
公教育制度は、教育・地位獲得の機会均等にかかわり、すべての子どもたちになるべく同じ教育を経験させて、国民(市民)として育てることを目指す一面をもっています。この場合は、公教育制度は、卒業後の格差をなるべく小さく、または入学時にすでに生じていた格差をなるべく埋めることを期待されています。
本学の教育学部教育学科1年生の前期科目「教育学入門」では、「公教育・公立学校とは何か」というテーマで研究していた班がありました。そして、上記の点に注目してしっかり先行研究をまとめて発表してくれました。それ自体もすばらしかったのですが、加えて質疑応答時に質問した学生がまたすばらしかった。その学生は、「格差を生じさせないために公教育制度がある、というのはよく分かったが、そもそも公教育制度は格差を生じさせないために成立したのか?」という質問をしました。歴史的思考・判断を働かせようとして、発表内容だけでは判断できなかったために行われた質問だったと思われます。
この質問した学生は、「教育に関する知識や技術(教職教養)とは何か」というテーマで研究していた班に所属していた学生でした。すでにこの学生は発表は終了しており、質疑応答時・発表後に私と「歴史的に思考・判断するとはどういうことか?」という議論をした後の出来事でした。以前の議論開始時には、この学生は、歴史的思考・判断について「具体的にはよくわからない」と答えていたのです。ちなみに同じ前期科目の「教育の思想と歴史」では、「義務教育とは何か」というテーマで、公教育制度に関わる義務教育の歴史の概要を学んでいます。まさに教育学入門の時の質問の姿は、それまでの学びを自分なりに生かし、別の場面で活用した姿ではないかと思いました。本当のところは本人に聞いてみないとわからないのですが、私としては教職教養の芽生えを感じた次第です。また、質問された班の学生の中にも、確かに…とこの問題についていろいろ考えを巡らしたようです。歴史的思考の姿が他の学生にも影響したとも言えます。
歴史的事実に注目する姿勢、そしてその意義について学ぶことは、やはり歴史的に思考・判断する教職教養ある姿につながっていると実感しました。教育史は学生の成長に関われるのです。
なお、公教育制度の格差に対する機能は、まずは、やはり現代的課題としておさえておくことが肝要です。現代社会における格差の問題は、まずは、現代社会の文脈で検討しなければ、その本質を把握することはできないからです。ただ、その上で、さらに課題理解や解決策を深めるために、公教育制度の歴史を踏まえてその歴史的課題と現代的課題とを見比べることはとても有効です。たとえば公教育制度が向き合うべき格差の質について歴史的変遷をふまえることなどによって、何がどの点でつながっていて(何が古くからある課題で)、何が新しい課題なのかを追究することは可能ですし、極めて重要な問題が見つかる可能性は十分あります。もちろん、国際的や多元的な思考・判断をすることにも大きな意味があります。