教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

2013年を振り返る

2013年12月30日 19時14分25秒 | Weblog

 年末まで引っ張った割に、仕事はたいして進まなかった。
 しかし、薄ぼんやりと光は見えてきた。このところやっていたのは県史関係の仕事。いま目標の4分の1くらいか。小さい論文1本、そこそこの論文1本、あわせて2万4千字くらいの研究ネタが見つかったので良しとしよう。

 さて、2013年も終わりますね。みなさま、今年はどんな一年でしたでしょうか。

 私の2013年は、研究がまとまっていった一年でした。単語で表せば、「収束」とでも申しましょうか。
 まず、単著について。保育者養成に携わるようになって5年目。私の教育実践をまとめた「幼児教育の理論とその応用」シリーズ2冊、『幼児教育とは何か』(4月刊)と『保育者の専門性とは何か』 (2月刊)とが無事上梓しました。皆様のおかげで順調に売れている様子。
 そして、学位申請論文について。まだ結論は出ていませんが(2014年3月に結論)、無事まとめ上げ、製本に出したところです。題目は、「明治期大日本教育会・帝国教育会の教員改良―資質向上への指導的教員の動員」です。主査・副査の先生方や広島大学大学院教育学研究科教育学講座の先生方には、直接間接にご助言いただきました。おかげで、今年3月に相談のために最初にまとめた時のものと比べると、明らかに質が違います。研究を進める時は一人でやっているような気持ちに陥りがちですが、やはり一人では良いものはできないなと思います。研究推進における学問集団の必要性を改めて実感しました。
 学位審査最初の難関であった計画審査(7月)では、主査先生から「合格」を伝えられた時、自然に涙が出てきました。その後、トイレに飛び込んで少し嗚咽したのは秘密です。それだけ、自分にとっては学位審査開始は難しいことであり、俎上に上がることすら不可能なことに思っていました。あー、このまま最後まで成し遂げられたらどんなに幸せか… 

 そのほか、2年間担任した卒業生を送り出したり、准教授に昇進したり、また新しく担任を持つようになったり、5年間やってきたことが振り出しに戻ることになったり、人生初の経験(仕事)をいろいろしたり、体重を6キロ減らしたり(この1週間で2キロ元に戻ったが笑)、人生少し吹っ切れたりしました。
 新しく担任することになった学生たちは、ほぼ1年経て、ようやく落ち着いてきたかな。時々なんやかんや支えてやる必要もありましたが、後は自分で自分の道をしっかり歩いてくれることでしょう。

 今年は、必要以上の学術・教材研究がとにかくできなかった。「余計」な経験もまったくといっていいくらいできなかった。
 人生をいまより豊かにすること。来年はこれを追求してみたいなぁ。 

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明治30年度鳥取県小学校教員検定試験問題(女教員専門、教育・保育原理系)

2013年12月29日 13時32分08秒 | 日本教育学史

 山陰は雪にまみれております。

 さて、こないだの続きとして、家事裁縫科または家事科の専科教員検定の問題を紹介。この科目を受けたのは女性教員のみのはずなので、女教員(のみ)に必要とされた教育学を示している史料かな。

 育児科という科目がとっても興味深い。
 どういう意味で必要とされた科目なのか。幼稚園保姆として?それとも小学生に教える知識として? 


明治30(1897)年度 小学校教員乙種検定試験問題

【家事裁縫専科正教員 検定試験問題】

○ 教授科
1.初めて裁方をなす生徒に襦袢を裁たしむる教授法は如何

【家事専科正教員 検定試験問題】

○ 育児科
1.小児に与へて可なる食品は如何なる種数なるか
2.小児の知識を発達せしむるなかだちは何ぞ
3.家庭教育の必要を説け

【家事裁縫専科准教員 検定試験問題】

○ 教授科
1.尋常科生徒に端縫をなさしむる教授法は如何

【家事専科准教員 検定試験問題】

○ 育児科
1.小児に持たしむる玩具に付ての注意は如何
2.牛乳を以て小児を養育する時の総ての注意を問ふ
3.小児の発病せるを察するは如何なるしるしに因りてするか 

出典
「明治三十年度乙種検定試験問題」『山陰之教育』第31号、私立鳥取県教育会事務所、1897年12月、39~41頁。 

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明治30(1897)年度 鳥取県小学校教員検定試験問題(准教員、教育原理系)

2013年12月26日 23時55分55秒 | 日本教育学史

 昨日の史料の続きです。

 今度は准教員(補助教員)の教育原理系試験問題です。尋常小学校本科准教員は教員職位のなかで最下位に位置するのだが、その試験問題。尋常小学校本科准教員検定試験は、小学校卒業して間もない代用教員が受ける試験だった…はず。史料には正教員問題にあった「教育科」が見当たらない。准教員志望者には課していないのか?

 内容傾向は正教員の問題とがらっと変わってます。なにより、ヘルバルト的な問題よりも、むしろ1880年代に流行した開発主義教授法的な問題がちらほら。「実物教授」「庶物標本」などの概念はまさにそれだと思うがどうだろう。
 正教員と准教員とは、求められた知識・教養がまったく異なるのか? いや、異なるというよりは、正教員は最新の教育学説を知らなければならない、准教員はすでに定着している学説を知らなければならない(その学説は正教員は知っていて当然のもの?)、といったところか。
 それから、かなり実践的な問題が選ばれている気がする。 

 准教員の試験問題からは、「教員生活における当たり前の教育学」とでもいうものが見いだせるのかもしれない。興味深い。


明治30(1897)年度 鳥取県小学校教員検定 乙種検定試験問題(教育・教授・管理のみ抜粋)

【高等小学校本科准教員 検定試験問題】

○ 教授科
 男子之部 [女子之部は出典史料になし]
1.一時一事を教授すべしと云ふ理由を説明すべし
2.教授中書取は如何なる場合に如何にして行ふべきものなるか
3.華氏・攝氏・列氏三種の寒暖計の計算法及改算法を教授するに注意すべき要点を順次に記載すべし

○ 管理科
1.学校管理の当否は品性陶冶に関する所以を述ぶべし
2.試験問題を選定するに注意すべき要項を述ぶべし
3.高等小学校に備ふべき器械の種類を挙げよ

【尋常小学校本科准教員 検定試験問題】

○ 教授科
1.作文の文題を選択するに注意すべき点を述べよ
2.実物教授の必要なる所以を問ふ
3.習字科にてなさしめたる清書は如何に処置すべきか

○ 管理科
1.学校管理の当否は訓練に如何なる影響あるか
2.時間割を定むるに注意すべき要項を述ぶべし
3.読書作文及地理の教授に必用なる庶物標本を挙げよ 

出典
「明治三十年度乙種検定試験問題」『山陰之教育』第31号、私立鳥取県教育会事務所、1897年12月、31~41頁。 

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明治30年度鳥取県小学校教員乙種検定試験問題(教育原理系)

2013年12月26日 01時05分32秒 | 日本教育学史

 鳥取県史編纂のお仕事関係で、鳥取県教育会の機関誌を総ざらいしています。
 その際に小学校教員検定試験問題が目にとまったのでメモ。今後、日本教育学史研究もしたいのですが、その際に参考になるかなと。
 小学校教員に必要とされた教育学知とは何か。小学校教員検定試験問題にそれが反映されているのではと思います。

 問題程度は、正直かなり難しいと思う。シンプルすぎて何を答えさせようとしているのかわかりにくいのも、よけい難しく感じさせる原因だろう。師範学校卒以外のルートだと、この問題を解かないと正教員にはなれなかったわけで、当時において正教員へ上進する困難さが伝わってくる。
 内容傾向にはヘルバルト主義教育学の影響を確認できるが、それ一色ではなさそうだ。結構興味深い。要研究。 


明治30(1897)年度 鳥取県小学校教員検定 乙種検定試験問題(教育・教授・管理のみ抜粋)

【小学校本科正教員 検定試験問題】

○ 教育科
1.意志成長の順序を問ふ
2.教育の目的を問ふ
3.定義とは如何、之を説明せよ
4.ヘルバルト、スペンサル氏の智育説を述べ、之を批評すべし

○  教授科
1.五段教授法の大要を述ぶべし
2.読書科教授の観念主義及文字主義を説明し、其何れを採るべきかを述べよ
3.生徒用教科書は教授の経過中如何なる場合に必要なるか

○ 管理科
1.学校管理の目的を述ぶべし
2.賞ばつ[四+言+寸]を施行するに注意すべき要項を挙げよ
3.学級教授・分科教授とは如何、且其利害を述ぶべし

【尋常小学校本科正教員 検定試験問題】

○ 教授原理科
1.教授は特殊より普通に全体より部分に及ぶべしと云ふ理由を説明すべし
2.教育の事業は教授と教練とより成ると云ふ意義を説明すべし
3.読書科の要旨及其教授法の大要を説明すべし

○ 管理科
1.学校管理の主義を述ぶべし
2.訓かい[言+毎]を施すに注意すべき要項を述ぶべし
3.尋常小学校に備ふべき表簿の種類を挙げ、且其必要を述ぶべし 

出典
「明治三十年度乙種検定試験問題」『山陰之教育』第30号、私立鳥取県教育会事務所、1897年11月、34~41頁。

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博論印刷終了!

2013年12月21日 22時56分07秒 | Weblog

 やっと博論の印刷終了!!
 提出用・配布用の上製本の分と、配布用のくるみ製本の分を合計10数冊分。校正しながらとはいえ、長かった…2日もかかってしまった(^_^;)
 明日、印刷所に送って製本してもらいます。送ってしまえば、もう本文に手を入れることはできない。不安と安堵の入り交じった妙な感覚です。
 仕上がりは1月中旬の予定。

 今のうちに、鳥取県史編纂のお仕事を進めねば…

 帰りにちょっと奮発してローソンおにぎり屋の「かにめし」を買ってみた(ふるさとのうまいを食べようのシリーズ鳥取版)。高いけど、めちゃくちゃうめぇ…

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拙著所蔵数の推移(メモ)

2013年12月20日 19時38分42秒 | Weblog

 ただいま、学位請求論文を上製本・くるみ製本するために、論文本体を印刷中。印刷所に本文のコピーを頼むとやたら高くなるので、自分のプリンターにがんばってもらっています。それにしても時間がかかる。壊れませんように…

 以下は、拙者のメモ。
 拙著2冊の国内大学図書館所蔵数の推移(2か月ごと)。

 2013年 6月 5日現在 第1巻  6館  第2巻 29館
 2013年 8月 2日現在 第1巻 26館  第2巻 46館
 2013年10月23日現在 第1巻 47館  第2巻 60館
 2013年12月20日現在 第1巻 50館  第2巻 72館

 白石崇人『幼児教育とは何か』幼児教育の理論とその応用 第1巻、社会評論社、2013年2月10日発行
  → http://ci.nii.ac.jp/ncid/BB12369009
 白石崇人『保育者の専門性とは何か』幼児教育の理論とその応用 第2巻、社会評論社、2013年4月10日発行
  → http://ci.nii.ac.jp/ncid/BB11676465

 amazonも幾度となく再入荷を果たしている様子。購入者の皆様に感謝。

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PC上の和楽器音源による作曲環境について覚え書き

2013年12月08日 12時12分54秒 | 純邦楽

 博論修正は、何とか見通しが立ってきました。(弥縫策的ですが…)

 気分転換に、PC上の和楽器音源による作曲環境について覚え書き。
 以前の記事に対する反応が時々あります。自分もとても苦労したため、いい加減な情報のままだと苦労する人が出そうなので…

(現状)
 ・Finale2012、Garritan World Instruments、Quantum Leap RA PLAY Edition を入手。
 ・OSはWindows7(32bit版)。
 ・QL RA のインストールにめちゃくちゃ苦労した。
 ・iLOK必須。
 ・手間はかかるが、Finaleで、Garritanはもちろん、QL RAも音源として使うことができる。
 ・読み込みまでがとても重いが、工夫次第で何とかなりそう。
 ・Sibelius7でも、GarritanもQL RAも音源として使うことができる。(無料お試し版で確認)
 ・MusicScoreで作ったデータは、MIDIデータにすると移行可能になった。
 ・GarritanもQL RAも、かなり高い高音やかなり低い低音のデータが存在しないので、出ない。 (困る)

(今後の課題)
 ・QL RA のplayer上の使い方。
 ・Human Playbackの使い方。
 ・かなり高い高音やかなり低い低音を何とか出せないだろうか…
  ほか、使っていけばたくさん出てきそう。 

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公開審査、終了しました

2013年12月01日 20時26分35秒 | Weblog

 12月が始まってしまいましたよ、みなさん。
 広島遠征が思った以上に体にきいています。痛みはさほどですが、腰が重い… まだ万全ではないようです。

 さて、先日、私の「論文博士の学位申請論文にかかる予備審査会」(公開審査)が無事終了しました。

 この後、問題なければ、1月下旬までに製本した論文を提出、2月に最終審査、3月の教授会で投票されて合格すれば、ようやく学位取得に至るようです。結局、今年度いっぱいかかります。
 製本にも時間がかかるし、製本した後には直せないので、12月のうちに公務の間をぬって仕上げていかなければなりません。12月の公務にも、私がゼロからやるしかない仕事がいくつかあり、手を抜けません。しかも、公開審査後に現状的に重ーい宿題をいただいたので、どうやって進めようかなと頭を抱えています。

 とはいえ、博士課程後期入学から10年、学位取得はずっと夢見てきたことです。ここで挫折したら二度と挑戦できないと思うので(特にモチベーション的に)、がんばってやり遂げたいです。

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