教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

教育原理Ⅱ(幼児教育の理念・思想・歴史に関する科目)

2012年08月21日 23時21分35秒 | 教育研究メモ

 なかなか更新できなくて申し訳ありません。

 業務をうまくこなせずにもたついているのと、⑥新規科目の授業づくり(「教育原理Ⅱ」15回分)に入ってしまったので、なかなか区切りがつかなくて。

 いまのところ、授業づくりについては、5回分まで(とりあえず)仕上げました。ドイツ啓蒙主義教育学(カント含む)、ペスタロッチ、フレーベルの教材化をなんとか完了しました。頭の中の再整理のためにもなりますので、ちょっと「教育原理Ⅱ」の授業構想を述べてみましょう。
 「教育原理Ⅱ」は選択科目なので、教職科目の必要事項「教育の理念・思想・歴史」をテーマにして、かなり専門的にしてやろうと思っています。。大学によっては、「幼児教育史」とか「幼児教育の思想」とか「教育学基礎論」などの科目名で設置しているようなものをイメージしてます。なお、「教育に関する社会的・制度的・経営的事項」については、「教育原理Ⅰ」で「理念・思想・歴史」とともに扱っています(学習過程の事項もⅠで少し扱っています)。

 教育原理Ⅱの第1回はガイダンスです。シラバスや授業の進め方、評価方法などを説明した後、15回の内容の流れをざっと追っていこうと思ってます。今後の予習効果も少しねらっています。
 第2回は、日本における「教育」概念の変遷をテーマとし、「社会における教育とは何か」を考える機会の一つにしています。主な内容は、石川謙氏以来の「教育」概念史と広田照幸氏の「教育的」概念史をヒントに組み上げています。「教育」の語源はⅠで扱っていますので、社会的文脈から教育を考える機会を提供します。
 第3回は、近代西欧(ドイツ語圏)における「教育」概念の変遷をテーマとし、「教育とは何か」を考える機会その2とするつもりです。というか、本当にねらっているのは、次回以降のペスタロッチ・フレーベルに引き続く、「教育とは何か」を考えるポイントをおさえることです。「啓蒙」「理性」「汎愛派」などなどから、名言「人間は教育によって人間になれる」(カント)について考えていけるようにします。コメニウスとルソーは、「教育原理Ⅰ」で取り上げているので、関連をほのめかす程度です。
 第4回は、ペスタロッチの教育思想をテーマとし、「教育方法とは何か」を考える機会とするつもりです。鳥光美緒子氏の研究からかなりのヒントを得ました。ペスタロッチの人間発展モデルとメトーデ(基礎陶冶の理念)を解説していきます。なお、名言「生活が陶冶する」についても、考えていけるようにします。
 第5回は、フレーベルの教育思想をテーマとし、「フレーベルは幼稚園(キンダーガルテン)を作って何をしたかったのか」を考える機会です。ここまでの第3回・第4回は、この回を深く理解するための準備といった方がいいかもしれません。しかし、フレーベルの思想は、独学でそう簡単に理解できるほど甘くはありませんので、私が理解した範囲内で整理して提供してみようと思っています。とくに幼稚園構想の意味を考えることができるようにします(遊びの重要性や教育目的など)。それから、名言「さあ、私たちの子どもらに生きようではないか!」についても、考えていけるようにします。
 保育者がフレーベルの幼児教育思想をしっかり考えていくことは、とても大事だと思います。深く、確かな子ども認識や遊び指導・支援をしていくためにも。また、幼児教育を形式化してしまうような、歴史をくり返さないようにするためにも。

 で、第6回は明治日本における幼稚園の成立をテーマとし、「なぜ幼稚園が必要だったのか」を考えます。湯川嘉津美氏の研究が主なベースです。江戸期の「先入主」思想や、託児所的保育施設構想についても取り上げるつもりです。ここで、第5回のフレーベル理解が利いてくるんじゃないか、と思っています。
 なお、第7回以降は、明治後期以降の保育史や、エレン・ケイ、モンテッソーリ、デューイ、倉橋惣三、二葉幼稚園(保育園)を取り上げるようにシラバスを切っています。

 ちなみに、『幼児教育の理論と応用』の出版(2分冊化)にむけ、⑤分の原稿も入稿前の最終チェック段階。分量が多いので、これがなかなか終わらない…

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

授業づくりにいそしむ

2012年08月10日 23時55分55秒 | 教育研究メモ

 さて、テストも終わり、採点も終わりまして、ようやく時間を研究につぎ込める季節がやってきました。
 校務に追われつつですけども。

 合間合間に少しずつ研究を進めていましたので、少し進んでいます。現在、研究④と⑤をひとまず仕上げまして、⑥に入っております。⑥は研究といっても授業づくりですが。
 研究⑥(新規科目「教育原理Ⅱ」の授業づくり)について。このために長いことかけてずっと読書してきました。ためにためた知識を、ようやくまとめに入ったところです。私の授業づくりは、基本的には、以下のように進めています。

 ① 教材メモ (先行研究を粗くメモしてまとめる、たまに原典をまとめることもあり)
 ② 授業案兼板書案の作成 (目標設定、教材整理・順序組み立て)
 ③ 資料作成・板書案再構成 (仕上げ)

仕上げは直前にしようと思いますが、教材メモと板書案作成は今のうちにある程度しておかないと間に合いません。

 今日はペスタロッチの教育思想をまとめておりました。「教育の思想と歴史」をテーマにするなら、ペスタロッチははずせません。とはいえ、学生がペスタロッチをなぜ学ばなければならないか、我々はきちんと説明できるでしょうか。保育者志望学生に、ペスタロッチの思想がなぜ必要か。なかなか難しいところです。ペスタロッチといえば「理想の教育者」という観点で取り上げるのがスタンダードだと思いますが、私は、教育方法の必要性という観点から取り上げようと思っています(貧民教育思想や居間・愛の思想も含められますし)。ポイントは「メトーデ」または「基礎陶冶の理念」ですね。自分でまとめていても難しいので、これらの知識をどのように教材化・授業化して、学生に出会わせるか。悩ましいところですが、ウデのふるいどころでもあります。
 ひとまずまとめメモはできたので、次はフレーベルの教育思想をまとめようと思います。フレーベルの思想は明らかに保育者志望学生に必須の知識。ペスタロッチを取り上げたのは、フレーベルを理解するために必要だと思ったのもあります。フレーベルをまとめたら、ペスタロッチや啓蒙主義教育学の分とあわせて、板書案など少し組み上げてみよう。
 なお、この前は啓蒙主義教育学のまとめをしていました。理性とかカントとかです。ペスタロッチを理解する準備ですね。

 ただでさえ難しい古典的教育思想だけれども、この授業を受ければ、わけわからん…では終わらずに、その「おもしろさ」がわかるようにしたい。

 ちなみに、保育士試験の教育原理には、例年、ペスタロッチ・ルソーの問題がよく出ます(もちろん、それ以上に出やすいのは教育基本法です)。ロック・オーウェン・フレーベルも人気です。それだけならまだわかるのですが、カントもよく見かけるんですよ。何度も見かけるので、マジか!と驚きました。まあ、他の思想がわかっていれば何とか対応可能な出方ですし、保育士試験は6割正解で合格なので「必ず正解すべき問題」ではないのかもしれませんが。(それでも「知っていれば合格に近づく問題」ではあるか) 保育士が知っておきたい知識の一つとして、カントが求められているとは…なんともまあ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

問題設定能力を養う

2012年08月01日 22時04分51秒 | 教育研究メモ

 日常業務のかたわら、研究③をおおよそ仕上げました(もともとかなり進めていたので)。あとは学会発表前にいじろう。ひとまず放置。
 研究④も、中身はそろいました。もう少し整えなくてはなりませんが。

 さて、現在、学生はテスト地獄、教員は採点地獄のまっただ中です。

 レポートを採点していて思ったことが2つ。
 レポートの出来から、学生の問題設定能力の一端がうかがえること。そして、自分で問題設定する力の高い学生と、問題設定する力の低い学生とのレポートの出来が、歴然と違うこと。
 問題設定については、私も、ようやく「何か」をつかめてきたのは大学院博士課程後期なので、よもや短大生に多くを求める無茶はできません。
 とはいえ、教育者・保育者が成長・発達するには、現場で問題解決に取り組まなければなりません。問題設定とは、今、問題になっているもの(自分が答えないといけない問い)が何なのか把握することです。問題設定できない教育者・保育者は、問題解決にうまく取り組むことはできないでしょう。問題解決がうまくいかないということは、現場での仕事の質は上がっていかないでしょうし、実践家としての成長も頭打ちになるでしょう。

 私は、理論系の教職科目は問題解決の姿勢を目覚めさせる科目だと思っています。理論系の教職科目担当者にとって、将来の教職者の問題設定能力を養うことは重要な使命だと思います。
 問題設定能力を養うにはどのように授業すればよいか。良質の教育者・保育者を養成するため、この問いは重要です。考えさせようとする工夫はこれまでもしてきましたが、ただ漠然と考えさせようとするのではなく、自ら問題を設定するように持っていく工夫が必要なのだと思いました。
 初任の段階から問題設定能力が高ければ、あとは自分で問題を見つけ、うまく問題解決過程に入ることができるでしょう。その後の成長の伸びは、問題設定能力の高い者と低い者とでは歴然と違ってくるはずです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする