現在、文科省は、平成20年度の予算概算要求で、「子どもと向き合う時間の拡充及び教員の適切な処遇」を目的に、義務教育国庫負担金を約300億円増加させる要求をしています(
文部科学省HP政策関連情報「平成20年度概算要求主要事項」参照)。増加分の内訳は、教職員を増加し、教員の給与待遇を見直すためのものです。文科省は、教職員を増加したいようです。ただ、増員する教職員7,121人(平成20年度、3年間で21,362人の増員を計画)の内訳は、主幹教諭、事務職員(教員の負担軽減)、「特別支援教育の充実」を図るための人員、栄養教諭(食育推進)、「習熟度別・少人数指導の充実」を図るための人員、で構成されています。なかでも「主幹教諭」は7,121人のうち3,669人(約52%)を占めており、主幹教諭の増員(というか新設)がこの増員計画の主眼なように思えます。「主幹教諭」とは、今年6月の学校教育法改定で出来た教員の職位で、校長・教頭を助けて「校務の一部を整理し、並びに児童の教育をつかさどる」もの。まぁ、改定した学校教育法を実施する気があるのなら、当然の措置だとも思いますが…
以前、私は教職員を増員すべきと主張しました(
6/17、
6/25)。それは、教員の多忙のために教育の質が低下しかねないので、教員を増員することで教員一人ひとりの担当授業時数を減らして対応すべき、という趣旨でした。文科省の計画では、「習熟度別・少人数指導の充実」を図るための人員を確保するようだし、主幹教諭も教育を担当するようなので、なんとかなるのでしょうか。ただ、主幹教諭の設置を管理職の補佐に主眼をおくなら、私の想像とはちょっと離れていくでしょう(もともと中教審や教育再生会議の議論では学校運営上の役割のみが期待されているので、予想は悪い方に当たっているのかも)。文科省の意図をもう少し知りたいところです。また、教員の多忙の原因は、多い授業時数だけでなく、事務的な書類作成の多さにもあります。そのため、事務職員を増加する計画にも納得がいきます。ただ、平成20年度の増員は485人。…これで本当に、教員の事務負担は軽減されるんでしょうかね? 文科省は、事務職員増加の効果をどのように予想しているのでしょうか。
ただ、問題は、20年度予算編成の審議を行っている
財政制度等審議会(財務相の諮問機関)における今月12日の議論です。同審議会の委員方は、児童・生徒数は減っているため、相対的に教員数は増えているとの立場から、文科省の教職員増加計画を「荒唐無稽」と評したそうです。さらに、財務省は、主幹教諭の確保は小学校2割・中学校4割の学級担当「外」の教員に注目すれば対応できる(担当外の教員にやらせようということか?)と提案したとか。この議論に対して文科省がどう対応するのかまだわかりませんが、この議論を見ているとなんだか、「大事なこと忘れてないか?」と思えてきます。ここでは、事務職員増加の趣旨に現れている教員の多忙さは問題になってません(教職員増員の主眼ではないからでしょうか?)。また、財務省が現状の教員数のままで主幹教諭の仕事をさせようと思っているとすれば、忙しい教員がさらに忙しくなる状況をどう思っているのでしょうか。さらに、児童生徒数は確かに減っていますが、教職員数の現状維持で教育の質を向上させるに足るほど、相対的に教員数は増えるのでしょうか。今後の議論は、そこのところをつきつめて進めて欲しいなと思います。
非常勤の仕事から疲れて帰ってきたところですが、何だか放っておけないニュースだったので、メモがてら書いてみました。わからないことだらけで、どうにもしまらない記事ですが、「へーっ、そんなこと考えてんのか」とでも思ってください。