「ねえねえ、そこの地面に実をつけた葉っぱがはびこっているよ」
「ああ、イシミカワだね。木の枝をたよりにずいぶん上まで延びているね」
「近くで、よく見ようかな」
「トゲに気をつけて」
「うん、分かった。
トゲのある茎とか、三角の葉はママコノシリヌグイに似ているね」
「そう。同じタデ科で、近い仲間だよ」
「トゲはこちらのほうが強いね。痛たた」
「葉柄と葉のつながり方が、ママコノシリヌグイは Γ 型 なのに、イシミカワは T 型だろう」
「うん、ちょっとだけ内側でつながっている。
あれっ、三角じゃない丸いのもあるよ。そこから茎が出ている」
「それはね、托葉といって葉柄の根元につく葉の一種なんだ。
托葉はママコノシリヌグイにもあって翼状なんだけど、
イシミカワは皿状に発達しているんだ」
「ツキヌキニンドウみたいだね」
「そうだね。あちらは対生している2枚の葉が合着しているものらしいよ。
でも、まあ似たようなものかな」
「カラフルな実だね。どんな花が咲いてたの?」
「イシミカワは茎や葉も特徴があるけれど、花・実も面白いんだよ」
「どうして?」
「この実のように見えているのは、花被つまり萼なんだ」
「じゃあ、その萼の上に花が咲くの?」
「そうだけど、花被はそんなに開かないんだ。
だから咲いている花を見るのは珍しいね」
「ほら、ここにちょっと開いているのがあるだろう。
小さくて分かりにくいけど、花被の中にオシベもメシベも子房もあるはずだよ」
「ふうん、こんなにヒッソリした花なんだね」
「子房が実になって大きくなるにつれて、しっかり覆った花被が厚くなり、
その色が緑から赤紫、青、藍色と変わっていくんだ」
「ノブドウのように虫えいのせいではないんだね」
「そうだよ」
「この黒いのは種なの?」
「いやいや、それが実なんだ。石のように硬いんだよ。
熟すと花被が落ちて中から顔を出すんだね。この中に種が入っているんだよ」
「どうして、こんな特徴を持ってるの?」
「分からないけど、なにかイシミカワの目的とか戦略とかがあるんだろうね」
「イシミカワって漢字でどう書くの?」
「石見川とか石実皮とか石膠(にかわ)とかあるらしいよ。
硬い実を覆っている意味で石実皮に軍配を上げたいけど、正解は分からない」
「なるほど。面白い植物だね」