読書日和

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「空港にて」村上龍

2007-05-23 17:13:35 | 小説
こんにちは。
今回ご紹介するのは「空港にて」(著:村上龍)です。

-----内容-----
コンビニ、居酒屋、公園、カラオケルーム、披露宴会場、クリスマス、駅前、空港―。
日本のどこにでもある場所を舞台に、時間を凝縮させた手法を使って、他人と共有できない個別の希望を描いた短編小説集。
村上龍が三十年に及ぶ作家生活で「最高の短編を書いた」という「空港にて」の他、日本文学史に刻まれるべき全八編。
収録内容は以下のとおり。
コンビニにて
居酒屋にて
公園にて
カラオケルームにて
披露宴会場にて
クリスマス
駅前にて
空港にて

-----感想-----
どの短編も、物語中で経過する時間がすごく短いです。
例えば「コンビニにて」は、コンビニの中でお客が商品を選んでから買うまでのごく短い時間の物語です。
しかしその中で主人公は自身のことについて何度も回想しています。
そこで村上龍お馴染みの台詞を見つけました。
「オヤジやオフクロや教師の言うことを信じたらダメだ。あいつらは何も知らない」
村上龍の小説では特に教師批判がよく出てきます。
以前に「希望の国のエクソダス」をご紹介したことがありましたが、その中でも教師批判、社会への批判がありました。
村上龍本人が教師や社会の体制をこころよく思ってないのかも知れません。
正直なところ、村上龍の小説は苦手です
落差が激しいというか、読みやすい本と読みにくい本の差が激しすぎる感じです。
「限りなく透明に近いブルー」は読みにくいの際たるものです
20ページくらい読んでリタイアしました(笑)
あくまで私にとってなので、人によっては「限りなく透明に近いブルー」の世界観を好むのかも…。
その点、「空港にて」は読みやすく、当たりを引いたようなので良かったです


そして表題作となっている「空港にて」。
主人公の女性が、空港で待ち合わせている男性を待つ間の物語。
飛行機の搭乗締め切りの時間が迫っても、男性は待ち合わせ場所に現れない。
待つ間に主人公は色々なことを回想していた。
その中で印象に残った文をご紹介。
「相手が意思と好意でやっていることについて、どうしてそんなことをするのかと聞くのは甘えだ。あなたが好きだからやっているんだよ、と言って欲しいからそう聞くのだ。」

これはたしかに、答えがわかっていてわざと聞いているのでしょうね。
一番すごいなと思ったのがこの文です。
感情を的確に捉えているなと思います。


どの作品も、主人公自体はあまり喋らず、大部分を情景描写に費やしているのが印象的でした。
「時間を凝縮させた手法」を用いた小説は始めて読みましたが、面白かったです。
作者自身が「最高の短編を書いた」と言うのもまんざらではなさそう。
読みやすい小説なのでお勧めです。
それではまた。

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ビオラさんへ (読書日和)
2007-05-25 06:22:54
7時30分出勤ですか…

早出というやつでしょうか。

5時にコメントが来ていたので驚きましたよ(笑)

お互い頑張りましょう。
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おはよう~♪ (ビオラ)
2007-05-25 05:03:00
記事の内容とまるで関係ないんだけど、体調回復のきざしでよかったね
今日は私AM7時30分出勤なので、すごい早起きです
今日もお互い有意義な日になると良いね。
お天気は今一らしいけど、楽しみましょう
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viviandpianoさんへ (読書日和)
2007-05-24 06:31:00
そうですね。世の中、鋭い人ばかりではないですね。

村上さんはそこに気付いてないのか、排除して考えているのか、どちらかなのだと思います。



わかっていて聞くのは恋の駆け引き、そうだと思います。

言ってほしい言葉を言わせるための駆け引きですね。

だれでもそう思うことはありますよ。

ときには甘えがあっても良いのでは、と思います。
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なるほど (viviandpiano)
2007-05-23 23:18:27
なかなか作中の引用文、鋭いですね。
でも・・・あえて言わせていただくと、
世の中にはもの凄く天然に鈍い人もいるのです(笑)
まあ、そんな鈍い人を村上氏は好きになったことがないのでしょうが。

さらに。
分かっていて聞くのは・・・恋の駆け引き。
これがまた楽しかったりするのですよ。
甘えたいとき、誰にでもありますよね?
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じょんさんへ (読書日和)
2007-05-23 21:10:10
「システムからの自立」ですか、そういったテーマがあるのですね。

なかなか読みずらいのですが、読めそうな作品を見つけていきたいと思います。

じょんさんはたくさん読んでいそうですね。



ブログを訪れて頂きありがとうございます。

こちらこそよろしくお願いします。
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Unknown (じょん)
2007-05-23 19:35:12
はじめまして、じょんと申します。
TBを辿ってBlog拝見させていただいてます。
村上龍氏の作品、クセやアクはなかなか強いですよね(笑)、判ります。
特に性描写に関しては賛否分かれるところでしょうね。
自分としてはSEXをテーマとしてでなくオブジェクトとして描く冷淡さが好きだったりします。

『希望の国の~』『69』や『半島を出よ』でも出てくる教師批判、
それは多分氏の根源的なテーマである「システムからの自立」という問題に関わってくるのかも知れませんね。

ともあれ、これからもBlog拝見させていただこうかと思います、ヨロシク。
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