イルテット『Gain』(RogueArt、2014年)を聴く。アナログ盤である。
Illtet:
Mike Ladd (vo, sampler, ems syn)
Jeff Parker (g)
HPRIZM/High Priest (moog, sampler, syn, vo)
Tyshawn Sorey (ds, tb, rhodes)
本盤はヒップホップからふたり、スティーヴ・リーマン『Sélébéyone』(2016年)でもラップで参加していたHPRIZMと、主役のマイク・ラッド。ここで目立っているのは圧倒的にラッドのポエトリー・リーディングなのであって、もとより、ヴィジェイ・アイヤー『In What Language?』(2003年)などでもジャズと交錯するサウンドを残してきている。
ジェフ・パーカーの「昔の近未来」のような艶をぎらぎらさせるギターも、状況に応じた巧いドラミングをみせるタイショーン・ソーリーも悪くない。サウンド全体としては、ラッドの声の雰囲気も、パーカーのギターの気怠さもあって、「アメリカ」を諦念とともに視ているような感覚がある。
とくに、気力を振り絞ってなんとか声を出すこところから、朗々と語るところまでの、ラッドのヴォイスである。とりわけ、気怠い最後の曲「Rome」に惹かれる。チケットを買って知らない街へ、ここは火星のコロニーか、ローマだ。
●参照
スティーヴ・リーマン『Sélébéyone』(2016年)
ヴィジェイ・アイヤー『In What Language?』(2003年)