Sightsong

自縄自縛日記

豊住芳三郎+老丹+照内央晴@アケタの店

2019-07-06 07:41:13 | アヴァンギャルド・ジャズ

西荻窪のアケタの店(2019/7/5)。

Yoshisaburo "Sabu" Toyozumi 豊住芳三郎 (perc)
Lao Dan 老丹 (as, 笛, bamboo sax)
Hisaharu Teruuchi 照内央晴 (p)

ハノイで食あたりを起こして数日間足止めとなり、山口で崔善培さんと共演できなかった豊住さんだが、この日は元気にあらわれた。直前まで照内央晴さんが心配していたが結果オーライ。老丹さんについては2枚の音源を聴いてはいたが、直接観るのははじめてだ。店に入って会うなり互いにわかるのだからインターネットは不思議でもあり便利でもある。上海のナイスガイである。

ファーストセットは、豊住・老デュオから。想像していた以上のサックスの音圧に驚かされる。豊住さんは最初からエンジンをふかしているが急停止も抜群で、この大きな慣性のコントロールはさすがである(どこが調子悪かったんだろう)。

続いて老・照内デュオ。ペダルを踏んでピアノを響かせる照内さんの横で、老さんはマウスピースを外したアルトを吹き、苦悶しながら同時に叫ぶ。マウスピースを付けてからは大きな盛り上がりで繰り返し攻め、またフラジオでの高音の循環呼吸奏法には耳を奪われる。ピアノは下から硬い和音で突き上げるように対抗した。

そしてトリオ。老さんは小さな笛なのか内に籠るような音をしばらく発したあと、長い横笛を喋り唸りながら吹いた(横笛の演奏は『逐云追梦 Going After Clouds and Dreams』に収録されていて、サックスと共通するところもあるただならぬ迫力はこれだったのかと納得した)。豊住さんはブラシ、スティック、指を使い、躊躇ない攻め、寸止め、再始動を繰り返す。絶えざるスキゾ的な生命力の発露がやはり豊住さんの大きな魅力である。老さんは笛でも循環呼吸奏法を行い、バンブーサックスを持ち出した(米国製であり、ebayで入手したそうだ)。

ここからが圧巻だった。豊住さんはバスドラムからの大砲を次々に放ち、老さんがサックスで叫び、照内さんが鍵盤を連打した。自己を棄て去ると同時に自己を表出させるあり方により、三人の音はクラスターと化した。かつての黎明期の日本フリージャズが持っていたエネルギーはこのようなものだったかと想像した。いつもは自他の両方を冷静ににらんで演奏に反映させる照内さんが、それをよりぎりぎりのところで展開するものとなっており、また違う姿をみせた。アケタの店という場の力も作用しただろうか。

セカンドセット。豊住さんの二胡と老さんの横笛(内臓をえぐり出すような)とがうなりを創出し、さらにピアノの和音が付加された。老さんは金属の笛で、ダブルリードならではの細くよれる音を出し、アジアの舞いのようなサウンドをみせた(この楽器でもまた循環呼吸を行うのだ)。豊住さんのするどいパルス、照内さんの波、アルトによってまたしても三者の大きなクラスターが創出されてきた。

一旦は静寂が訪れるものの、それは緊張感を伴うものであり、鍵盤の一音、シンバルのひと叩きによって、演奏が再始動した。老さんのアルトによる撥音、照内さんが集中し選んで提示する音、豊住さんがブラシで風を切る音。やがて哀しいアジアの歌が共有された。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4 

●豊住芳三郎
豊住芳三郎+謝明諺@Candy(2019年)
ジョン・ラッセル+豊住芳三郎@稲毛Candy(2018年)
謝明諺『上善若水 As Good As Water』(JazzTokyo)(2017年)
ブロッツ&サブ@新宿ピットイン(2015年)
豊住芳三郎+ジョン・ラッセル『無為自然』(2013年)
豊住芳三郎『Sublimation』(2004年)
ポール・ラザフォード+豊住芳三郎『The Conscience』(1999年)
アーサー・ドイル+水谷孝+豊住芳三郎『Live in Japan 1997』(1997年)
加古隆+高木元輝+豊住芳三郎『滄海』(1976年)
加古隆+高木元輝+豊住芳三郎『新海』、高木元輝+加古隆『パリ日本館コンサート』(1976年、74年)
豊住芳三郎+高木元輝 『もし海が壊れたら』、『藻』(1971年、75年)
富樫雅彦『風の遺した物語』(1975年)

●老丹
老丹のサックスと笛(2016-17年)

●照内央晴
豊住芳三郎+謝明諺@Candy(2019年)
沼田順+照内央晴+吉田隆一@なってるハウス(2019年)
吉久昌樹+照内央晴@阿佐ヶ谷ヴィオロン(2019年)
照内央晴、荻野やすよし、吉久昌樹、小沢あき@なってるハウス(2019年)
照内央晴+方波見智子@なってるハウス(2019年)
クレイグ・ペデルセン+エリザベス・ミラー+吉本裕美子+照内央晴@高円寺グッドマン(2018年)
照内央晴+川島誠@山猫軒(2018年)
沼田順+照内央晴+吉田隆一@なってるハウス(2018年)
『終わりなき歌 石内矢巳 花詩集III』@阿佐ヶ谷ヴィオロン(2018年)
Cool Meeting vol.1@cooljojo(2018年)
Wavebender、照内央晴+松本ちはや@なってるハウス(2018年)
フローリアン・ヴァルター+照内央晴+方波見智子+加藤綾子+田中奈美@なってるハウス(2017年)
ネッド・マックガウエン即興セッション@神保町試聴室(2017年)
照内央晴・松本ちはや《哀しみさえも星となりて》 CD発売記念コンサートツアー Final(JazzTokyo)(2017年)
照内央晴+松本ちはや、VOBトリオ@なってるハウス(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』@船橋きららホール(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』(JazzTokyo)(2016年)
照内央晴「九月に~即興演奏とダンスの夜 茶会記篇」@喫茶茶会記(JazzTokyo)(2016年)
田村夏樹+3人のピアニスト@なってるハウス(2016年)


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