Sightsong

自縄自縛日記

ロジャー・ターナー+喜多直毅+内橋和久@下北沢Apollo

2019-12-05 21:22:51 | アヴァンギャルド・ジャズ

下北沢のApollo(2019/12/3)。

Roger Turner (ds)
Naoki Kita 喜多直毅 (vln)
Kazuhisa Uchihashi 内橋和久 (g)

それぞれ共演したことはあっても、このトリオによる演奏ははじめてだという。喜多さんもロジャーさんもアポロ初出演(ロジャーさんにはとても良いヴェニューだと来日前に推した)。ロジャーさんは壁にかけられた古い弦楽器を手に取って、興味深そうに眺めている。

ファーストセットはヴァイオリンの擦音からはじまった。ギターの尖った音、鐘の音、それらは澄んでいるのだが、やがて濁らされてゆく。ここから多彩極まりない展開があった。誰かの合図からの急加速。ギターの繰り返しのリフによる悪夢的な雰囲気と、ヴァイオリンによる迷宮的な雰囲気。三者三様の破砕と崩落。三者三様の残響。ギターの擬態。やや抽象的な共有物、そこへの収斂と逸脱が興味深いステージだった。喜多さんのちぎれない糸のようなポルタメント、ロジャーさんの先端の美学が実に印象的だった。

セカンドセットもまた、喜多さんが擦音で仕掛ける。内橋さんのヴォイスとギターによる泡立ちがあり、喜多さんはヴァイオリンで濁った倍音を提示する。ここでも突然の音風景転換が何度となくあり、思いがけないところで全員が急加速する。その中でも、ロジャーさんによるシンバルや針金の擦れる響きやスティックの先端音の増幅などでの疾走、ぐちゃぐちゃで暖かいことさえもあるギターの滑空、その間をヴァイオリンのポルタメントがつないでいる。内橋さんがベース音で素晴らしく駆動する時間もある。最後は、ヴァイオリンが濁りと軋みを引き受け、静かさも策動も吸収した。

演奏後に本人が口にしたことだが、ロジャーさんは齋藤徹さんに捧げるプレイをしていたのだった。バスドラムをほとんど使わなかったのは、それゆえかもしれなかった。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●ロジャー・ターナー
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
ロジャー・ターナー+広瀬淳二+内橋和久@公園通りクラシックス(2017年)
ロジャー・ターナー+今井和雄@Bar Isshee(2017年)
蓮見令麻@新宿ピットイン(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
ドネダ+ラッセル+ターナー『The Cigar That Talks』(2009年)
フィル・ミントン+ロジャー・ターナー『drainage』(1998、2002年)

●喜多直毅
ハインツ・ガイザー・アンサンブル5@渋谷公園通りクラシックス(2019年)
喜多直毅+西嶋徹『L’Esprit de l’Enka』(JazzTokyo)(-2019年)
宅Shoomy朱美+北田学+鈴木ちほ+喜多直毅+西嶋徹@なってるハウス(2019年)
喜多直毅+元井美智子+フローリアン・ヴァルター@松本弦楽器(2019年)
徹さんとすごす会 -齋藤徹のメメント・モリ-(2019年)
喜多直毅+翠川敬基+角正之@アトリエ第Q藝術(2019年)
熊谷博子『作兵衛さんと日本を掘る』(2018年)
喜多直毅クアルテット「文豪」@公園通りクラシックス(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(2018年)
ファドも計画@in F(2018年)
齋藤徹+喜多直毅@板橋大山教会(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+外山明@cooljojo(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
喜多直毅+マクイーン時田深山@松本弦楽器(2017年)
黒田京子+喜多直毅@中野Sweet Rain(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
喜多直毅クアルテット@求道会館(2017年)
ハインツ・ガイザー+ゲリーノ・マッツォーラ+喜多直毅@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
喜多直毅クアルテット@幡ヶ谷アスピアホール(JazzTokyo)(2017年)
喜多直毅・西嶋徹デュオ@代々木・松本弦楽器(2017年)
喜多直毅+田中信正『Contigo en La Distancia』(2016年)
喜多直毅 Violin Monologue @代々木・松本弦楽器(2016年)
喜多直毅+黒田京子@雑司が谷エル・チョクロ(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年)http://www.jazztokyo.com/best_cd_2015a/best_live_2015_local_06.html(「JazzTokyo」での2015年ベスト)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
喜多直毅+黒田京子『愛の讃歌』(2014年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
寺田町の映像『風が吹いてて光があって』(2011-12年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年) 

●内橋和久
サインホ・ナムチラック+内橋和久@八丁堀ハウル(2019年)
内橋和久+サーデット・テュルキョズ@Bar Isshee(2018年)
ユーラシアンオペラ東京2018(Incredible sound vision of Eurasia in Tokyo)@スーパーデラックス(2018年)
ロジャー・ターナー+広瀬淳二+内橋和久@公園通りクラシックス(2017年)
U9(高橋悠治+内橋和久)@新宿ピットイン(2017年)


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