Sightsong

自縄自縛日記

ヨアヒム・バーデンホルスト+安田芙充央+井野信義@稲毛Candy

2020-03-21 08:15:27 | アヴァンギャルド・ジャズ

稲毛のCandy(2020/3/20)。

Joachim Bedenhorst (cl, bcl)
Fumio Yasuda 安田芙充央 (p)
Nobuyoshi Ino 井野信義 (b)

安田さんはCandy初登場、井野さんは久しぶりで「クルマで3時間かかったよ!」と言いながら現れた(横須賀から稲毛は遠い)。

3人は気負いも衒いもなくインプロを開始する。はじまりの安田さんの内部奏法は弦を掌で押さえ、勝手知ったるように鍵盤とともに制御するようなもので、その思い切りにいきなり引きこまれる。バスクラが入るとピアノのあり方が変わる。続いて井野さんが参入したのだが、弓を使った乱暴さに動かされてしまう。インパクトがあったのか、ヨアヒムも安田さんも井野さんを眺めていて可笑しい。井野さんはマージナルな音領域を攻め、その後ピチカートに移ったときの音の深さといったらない。そしてピアノが再び入り色を付け、全体を迫り上げる。

ベースとピアノがサウンドを停滞ではなく前進にシフトすると、ヨアヒムはクラを手に取った。マルチフォニックの出し方も、ベースとともにマージナルな領域に専念するありようも良い。井野さんは駒の下の弦を擦り唸るような音さえ出す(!)。デュオは逸脱の振幅を大きくしてゆく。

またピアノが入るとベースとのふたりで愉し気な呼吸を共有し、バスクラが入り、ピアノの迫力が全体を支配し、そしてトリオ。この悦びはなんだろう。ヨアヒムはクラでは一筆書きのようなノリのソロも聴かせる。3人の時間の制御ぶりはさすがである。

セカンドセット。バスクラのマージナル域での震えに対し、コントラバスが弓でなぞる。ヨアヒムは循環呼吸も使い管を鳴らし、フォーキーな感覚の旋律も展開する。ここではピアノのトリルと、ベースとバスクラの途切れない連続音との併存が素晴らしかった。

そしてヨアヒムがバスクラでエリック・ドルフィーを思わせる跳躍する太いラインを描く。三つ巴でばんばん出てくるが、突然潮目が変わり、お祭りのようなリズムが訪れた。井野さんは愉しそうにコントラバスを抱え込んで高速のピチカート、安田さんはフレーズを繰り返し、ヨアヒムがクラで受ける。この集合と逸脱の繰り返しの中で、ヨアヒムがクラのマウスピースを外してフルートのように吹いたのはおもしろかった。「Blue Moon」のようなフレーズも聴こえた。

ピアノの和音でまた潮目が変わり、ヨアヒムはマウスピースを取り付け、井野さんの静かなアルコがあり、安田さんは箏を思わせる音での内部奏法をみせた。

文字どおり3人の達人による、みごとな演奏。感嘆した。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●ヨアヒム・バーデンホルスト
ヨアヒム・バーデンホルスト+大上流一+南ちほ+池田陽子@不動前Permian(2020年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+ガレス・デイヴィス+秋山徹次@水道橋Ftarri(2020年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+細井徳太郎@下北沢Apollo、+外山明+大上流一@不動前Permian(2019年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+北田学@渋谷Bar subterraneans(2019年)
Poem of a Cell Sound / Film Installation & Concert in Tokyo@ドイツ文化センター(2018年)
Spontaneous Ensemble vol.7@東北沢OTOOTO(2017年)
ギレルモ・セラーノ+ヨアヒム・バーデンホルスト+マルコス・バッジャーニ『Lili & Marleen』(2016年)
LAMA+ヨアヒム・バーデンホルスト『Metamorphosis』(2016年)
ハン・ベニンク『Adelante』(2016年)
安田芙充央『Erik Satie / Musique D'Entracte』(2016年)
ダン・ペック+ヨアヒム・バーデンホルスト『The Salt of Deformation』(-2016年)
安田芙充央『Forest』(2015-16年)
ヨアヒム・バーデンホルスト『Kitakata』(2015年)
カラテ・ウリオ・オーケストラ『Garlic & Jazz』(JazzTokyo)(2015年)
カラテ・ウリオ・オーケストラ『Ljubljana』(2015年)
パスカル・ニゲンケンペル『Talking Trash』(2014年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+ジョン・ブッチャー+ポール・リットン『Nachitigall』(2013年)
ハン・ベニンク『Parken』(2009年) 

●安田芙充央
Poem of a Cell Sound / Film Installation & Concert in Tokyo@ドイツ文化センター(2018年)
安田芙充央『Erik Satie / Musique D'Entracte』(2016年)
安田芙充央『Forest』(2015-16年)

●井野信義
TRY ANGLE/原田依幸+井野信義+山崎比呂志@なってるハウス(2019年)
山崎比呂志+レイモンド・マクモーリン+井野信義@なってるハウス(2019年)
藤原大輔『Comala』(2018年)
Poem of a Cell Sound / Film Installation & Concert in Tokyo@ドイツ文化センター(2018年)
ニュージャズホールって何だ?@新宿ピットイン(2018年)
安田芙充央『Forest』(2015-16年)
峰厚介『Plays Standards』(2008年)
アクセル・ドゥナー + 今井和雄 + 井野信義 + 田中徳崇 『rostbeständige Zeit』
(2008年)
井野信義『干反る音』(2005年)
沖至+井野信義+崔善培『KAMI FUSEN』(1996年)
高瀬アキ『Oriental Express』(1994年)
内田修ジャズコレクション『高柳昌行』(1981-91年)
内田修ジャズコレクション『宮沢昭』(1976-87年)
日野元彦『Flash』(1977年)
森剣治『Plays the Bird』(1976年)


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