Sightsong

自縄自縛日記

柳沢耕吉+奥住大輔@東中野セロニアス

2020-03-15 08:20:31 | アヴァンギャルド・ジャズ

東中野のセロニアス(2020/3/14)。移転後はじめて足を運んだ。落合駅にも近い。

Kokichi Yanagisawa 柳沢耕吉 (g)
Daisuke Okuzumi 奥住大輔 (as)

ちょっと気持ちが浮き立つような曲想の「You're My Everything」から始まった。奥住さんのアルトは擦れる音から始めて喉を鳴らしたりもして、音のレンジが広い。柳沢さんのギターはどちらかというとエクスペリメンタルで音響的な即興のプレイを聴いてきたので、旋律を弾く太さに少し驚いた。アルトが入るとぴきぴきと鳴らし弦の物質感をあらわにする。「Fire Waltz」(マル・ウォルドロン)ではドルフィーの記憶と重なるように音の間を大きく跳躍するアルト。その叫びに対するギターの和音、しかしやはり跳躍感がある。アルトはグラデーションを示しもした。

続いてイーサン・アイヴァーソンの曲。ふたりがユニゾンで進む奇妙な進行、そのあとも付かず離れず。アルトの裏声的な音もあり、また、タンギングとキー操作とでパーカッシブに使ったり。ここではアルトもギターもちょっと不協和音を活かしているように思えた。最後の間抜けなユニゾンが可笑しい。

朗々とブロウする奥住さんのアルトをフィーチャーした「It's Easy to Remember」。やさしく震わせるギターもとても良い。アルトも震え、ヴィブラートを大きく使い、息をうぐっと効果的に詰まらせた。つまりここでは感情の直接的な吐露にアルトが奉仕していた。

曲として面白いのはキャプテン・ビーフハートの「A Carrot Is As Close As A Rabbit Gets To A Diamond」。これもまたユニゾンで進むがラリっているのかというようにねじくれ、調が移り変わってゆく奇妙さ。ギターは濁り、アルトは遊ぶように飛ぶ。そしてファーストセットの最後に「Self Portrait in Three Colors」(ミンガス)。旋律の繰り返しと発展に、なんとも言えないひりひりした寂寞感が漂っていた。

セカンドセットはふたりのオリジナル曲であり、最初も最後も奥住さんの「掌桜」という淋しいような淡々とした曲。ふたりが訥々と出す音は互いにずれを生じさせたり近づいたりして、また音価も伸び縮みさせて、ぼんやりしているうちに音風景が変わっている。ただその中でも、「Ghost」(アイラー)では急に別世界に来たようになり、アルトは突破口を感情で探り、広めの音域内を往還するギターとともに、次第に振り落とされまいとしてどろどろの世を激しく泳いだ(そのまま奥住さんの「月と狛犬」という不思議な曲に移った)。他の曲では悲しいアルトも、クリスタルのようにずっと光るような残響のギターも、それからふたりが演奏すること自体に潜む寂しさもあった。

渋いというより常になにかの予感がそのへんに潜んでいるようなデュオ。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●柳沢幸吉
合わせ鏡一枚 with 直江実樹@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2019年)
種まき種まかせ 第3回ー冬の手ー@OTOOTO(2019年)
種まき種まかせ 第2回ー秋の手-@Ftarri(2018年)

●奥住大輔
WaoiL@下北沢Apollo(2019年)