Sightsong

自縄自縛日記

照内央晴+方波見智子@なってるハウス

2019-01-27 23:55:03 | アヴァンギャルド・ジャズ

入谷のなってるハウス(2019/1/27)。

Hisaharu Teruuchi 照内央晴 (p)
Tomoko Katabami 方波見智子 (perc)
Guest:
Yukari Uekawa 植川縁 (as)

最初は方波見さんが指先で世界を創ってゆく。それも単にヴァリエーションを増やすということではなく、改めてたんたんたん、とリズムを創出したり、またドラムの皮のテンションを変えたりと、聴いていてなかなか緊張する。このモーメントは照内さんに移行し、また再び方波見さんに戻ったりもする。

今回方波見さんはバスドラムをほぼ横たえた。そこからの音の発展が特徴的に聴こえた。(あとで訊いたところ、バスドラムが好きで、またレ・クアン・ニンにも魅せられたことがあるのだという。)

タイコの音からベルやトライアングルの音へと移行すると、ピアノもその展開にシンクロする。しばしの間、時間の進行が忘れ去られたように思えた。だが、方波見さんが遊びの音世界からドラムに戻って再び時計を動かしはじめた。声による遊びもあり、方波見さんが「てるちゃん、てるちゃん/これがてるちゃんにしか聞こえなくなる」とユーモラスに仕掛け、照内さんもそれに呼応した。

セカンドセットでは、アルトをもって観にきた植川縁さんが参加した。なんでも3人が顔をあわせるのははじめて。クラシックや現代音楽で活動してきた人であり、東京での即興もはじめて。これが即興現場の面白さのひとつだろう。

このあと、植川さんのプレイにいきなり驚かされた。息だけを独特に増幅させ、また、マウスピースとリードとの間を移動させながら息を吹き込むプレイを仕掛けた。そして方波見さんとの間で、くちばしでつっつくような音をお互いに提示する。やがてパーカッションもピアノも激しさを増してゆき、植川さんはうねるようなアルトを吹き、それは声を吹き込むことによる複雑な音へと成長していった。フリージャズの奏者がサックスに肉声の迫力を追加するやり方とは発想を異にしているように思えた。

今度は方波見さんのスティックと照内さんのピアノとで、音空間を覆う展開。その間で植川さんは叫ぶように吹いた。

植川さんが抜けてデュオに戻ると、明らかに、いなくなったことが影響する別の音楽が生まれた。照内さんは敢えて迷走し脱力するようなピアノを弾き、方波見さんはバスドラムを擦り、力を押し付けるようにして何ものかが憑依しているようにプレイした。照内さんからのコミュニケートの策動があり、それにより方波見さんの音が開かれていった。そして音はどこかトンネルの向こうに抜け、トライアングルや鐘によって風が吹いている感覚があり、呼応して照内さんが残響を利用した。

ところで、照内さんは松本ちはやさんとデュオ等で演奏を積み重ねてきたわけだが、パーカッショニストとのデュオという共通点があっても、方波見さんとのデュオはまたずいぶんと性質が異なっている。松本さんがその都度飛翔する天馬だとして、方波見さんは対照的に、上や下や隣に息をひそめて存在する音の霊との対話を行っているように思えた。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4、7Artisans 12mmF2.8

●照内央晴
クレイグ・ペデルセン+エリザベス・ミラー+吉本裕美子+照内央晴@高円寺グッドマン(2018年)
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照内央晴「九月に~即興演奏とダンスの夜 茶会記篇」@喫茶茶会記(JazzTokyo)(2016年)
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●方波見智子
フローリアン・ヴァルター+照内央晴+方波見智子+加藤綾子+田中奈美@なってるハウス(2017年)
ネッド・マックガウエン即興セッション@神保町試聴室(2017年)


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