Sightsong

自縄自縛日記

照内央晴+川島誠@山猫軒

2018-08-05 21:30:09 | アヴァンギャルド・ジャズ

埼玉県の越生町にある山猫軒にはじめて行った(2018/8/4)。

越生駅からは、同じ電車で到着したマリンバ奏者の深川智美さんと一緒に、川島さんのお友達のクルマで向かった(ありがとうございます)。なるほど山の中である。涼しくなったら、ハイキングも兼ねて早めに来たら気持ちが良いに違いない。鹿が現れてお互いにすくみあうこともあるという話を聞いていたら、山猫軒の飼い猫が迎えに出てきた。

いや素敵な場所と素敵な建物。オーナーの南さんご夫妻が移住して自分で作り上げたものらしい。入ってみると、壁にはかつて南さんが撮影した阿部薫(『ラストデイト』のジャケット写真も南さんによる)、チャーリー・ヘイデン、ドン・チェリーの大きな写真パネル。空腹でもあり、野菜と卵のピザをいただいた。とても旨かった。

演奏は、ろうそくを立てるシャンデリア(!)の灯りだけを残し、ほぼ真っ暗な中で行われた。

Hisaharu Teruuchi 照内央晴 (p)
Makoto Kawashima 川島誠 (as)

お互いに予備知識なく、音源も聴かない状態での初共演。それゆえか、ふたりとも音の届き方を探るように静かに動き始めた。強度は次第に高くなってゆく。照内さんはストレートにエネルギーのフラックスを放つ。一方の川島さんは咆哮しながらもその向きを四方八方に変え、情念をぶちまける。バイクが出力以上に飛ばしたときに左右によれるように、その音は、自律的にぶれながら同時に制御もなされる。

これはかれらのスタイルのひとつかもしれない。だがやはり一期一会の違いがあった。川島誠の音は、ソロのときには自身の内奥を探り何かを拾い上げるような色を持つ。対照的に、齋藤徹さんとの共演のときには、大きな懐の中で安心して自身を外部にさらけ出すようなところがあった。そしてこの日は、そのいずれでもなく、似たところのあるピアニストとのデュオならではのものに聴こえた。

その見方から言えば、いったん演奏が終わったかという瞬間からの照内さんの動きは、川島さんに対する仕掛けのように思えた。静かに鍵盤からこぼれ落とす音、呼応してか、川島さんは床にうずくまって吹き続ける。その背中に向けて容赦なく時間を進めるピアノ。

セカンドセットも、ふたたび、静かにコアを見据えたように始まった。密度の高い時空間で、川島さんがまたしても前に後ろに上に向けて咆哮する。その、苦しみにのたうちまわり天を目指す竜の動きに、確かに、照内さんのピアノが並んで空中を飛翔する瞬間があった。ピアノの逸脱はファーストセットよりも激しく力強いものだった。足して1時間前後のなかで、明らかにデュオが深化した。

帰りの道は本当に真っ暗で、歩きでは絶対に無理だとわかった。またクルマで送っていただき、照内さん、深川さんと音楽の話をしながら電車で帰った。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4(と、iphone)

●照内央晴
沼田順+照内央晴+吉田隆一@なってるハウス(2018年)
『終わりなき歌 石内矢巳 花詩集III』@阿佐ヶ谷ヴィオロン(2018年)
Cool Meeting vol.1@cooljojo(2018年)
Wavebender、照内央晴+松本ちはや@なってるハウス(2018年)
フローリアン・ヴァルター+照内央晴+方波見智子+加藤綾子+田中奈美@なってるハウス(2017年)
ネッド・マックガウエン即興セッション@神保町試聴室(2017年)
照内央晴・松本ちはや《哀しみさえも星となりて》 CD発売記念コンサートツアー Final(JazzTokyo)(2017年)
照内央晴+松本ちはや、VOBトリオ@なってるハウス(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』@船橋きららホール(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』(JazzTokyo)(2016年)
照内央晴「九月に~即興演奏とダンスの夜 茶会記篇」@喫茶茶会記(JazzTokyo)(2016年)
田村夏樹+3人のピアニスト@なってるハウス(2016年)

●川島誠
川島誠+齋藤徹@バーバー富士(JazzTokyo)(2018年)
2017年ベスト(JazzTokyo)
川島誠@川越駅陸橋(2017年)
むらさきの色に心はあらねども深くぞ人を思ひそめつる(Albedo Gravitas、Kみかる みこ÷川島誠)@大久保ひかりのうま(2017年)
#167 【日米先鋭音楽家対談】クリス・ピッツィオコス×美川俊治×橋本孝之×川島誠(2017年)
川島誠『Dialogue』(JazzTokyo)(2017年)
Psychedelic Speed Freaks/生悦住英夫氏追悼ライヴ@スーパーデラックス(2017年)
川島誠+西沢直人『浜千鳥』(-2016年)
川島誠『HOMOSACER』(-2015年)


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