下北沢のNo Room For Squares(2020/3/22)。
Kei Matsumaru 松丸契 (as)
かなり照明を落とした空間での独奏アルトソロ。旋律作りにフォーカスするとの言葉通り、既存の曲はひとかけらも出てこない。もっとも基礎練習もエチュードも含めて、サックス演奏という世界を形成してきた和集合たるcode(chordではなく)の中ではあるだろう。はじめからcodeを崩そうという演奏ではない。だからこそ利用やクリシェと独創性との間のバランスが演奏の水準に直結するのだろうな、と、思いつつ聴いていた。
フレーズのフラグメンツが目の前で発展してゆくさまが緊張感を伴っている。だが、ここで松丸さんの言う旋律作りとは、音符の組み合わせだけではなく、たぶん、音響の活用も含まれている。
吹き始めたときから残響がかなり強調されていた。アコースティックとは言えエフェクトも使っているのかと思ったが、そうではなかった。右足でピアノのダンパーペダルを踏み込み、ピアノの弦と筐体を共鳴体として使っているのだった。鍵盤を指でずっと押さえ続けたり、ペダルを緩めたりすることにより、それが制御されている。
また、途中でエアを強めに入れると、それが旋律の味付けにとどまらず、旋律の見え方が異なってくるように思えた。その意味で、音響の活用とは、楽器から出る音プラスアルファということではなく、楽器から出る音への逆影響もあるものだった。途中で立ち上がって吹くと、旋律が試行的なものからリズムを伴うものに変わるように感じられた。
横にはグラスが置かれており、アルトを低音で吹くとかなり高周波での共鳴音が出た。これはパフォーマンスとしては試行的な動きだった。
1時間強のあと、最後に着地するための音。
このラボ的な独奏がどのように変わっていくのか、楽しみである。
Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4
●松丸契
松丸契+片倉真由子@小岩コチ(2020年)
細井徳太郎+松丸契@東北沢OTOOTO(2019年)
松丸契『THINKKAISM』(2019年)
纐纈雅代+松丸契+落合康介+林頼我@荻窪ベルベットサン(2019年)
m°Fe-y@中野Sweet Rain(2019年)
SMTK@下北沢Apollo(2019年)