頭上注意でしかも狭い階段を上りながら、もう30年以上も前にここの2階の座敷でバイト仲間と飯を食ったことを思い出した。
あの頃は、行列なんかできていなかったと記憶している。
今日はおっさん二人飯で、中華街の『海員閣』にやってきた。もちろん「豚ばらそば」(850円)を食べるためである。
相棒の言っていた通りなかなか出てこなかったが、待った甲斐があった。
とにかくすごい、としか言いようがない。
とろとろに煮込まれた豚ばらが、デカくてブ厚いのだ。年末年始用にと市場でデッカい豚の角煮やチャーシュー1本なんてのを売っているけど、あれがひと塊りそのままブっ込まれている感じ(笑)。いや、冗談ではない。どんぶりの深さの半分ほどの厚みがあるんじゃないか。
でも、これがお箸で切れちゃうほど柔らかいのだ。口いっぱいにして噛むと、じんわり肉の旨みが口腔に行き渡り昇天しそうになる(笑)。いや、ホント。
それでいて量もすごいから、いつまでたっても減らない。いや、ホント。
もちろんスープにも肉が溶け出しているわけで、そりゃうまいっす。でも、その濃厚さを多めの青菜がしっかりバランスを取ってくれる絶妙。おっと、忘れてたけど、麺も硬めで僕の好みだ。
こりゃ、行列ができるのもうなづけるなぁ。
ただ、そんな人気のお店なのに、普請は昔のままでリアルレトロ(笑)。こんなすごいバラ肉を載っけてるから採算が合わなくていまだにリニューアルできないのかもね。個人的には、ずっとこのままでいてほしいと思うけど。
お会計のおばあちゃんも、絵に描いたような昭和の中華街の佇まい。きっと、僕らが学生時代に来た頃から、そこにそうしていたはずだ。
帰り道、歯の間に挟まった肉片が取れるたびに、あの至福を思い出すことができたのもちょっと嬉しかった。