確かに、かなりの楽天家ではある。
でも、ごくごく真面目に生きてきたつもりだ。
それなのに、古い教会の礼拝堂の片隅で、パイプオルガンの荘厳な音色に耳を傾けていると…
「あぁ、お許しください」
わけもなく、そう懺悔したくなってくる。
昼休みに散歩に出ると、弓町本郷教会(大正15年築)の前に「ひるのいこい」という不思議な看板を発見。パイプオルガンの演奏を「ご自由にお聴きになれます」の言葉に誘われて階段を上った。
想像していたよりも大きな礼拝堂には、ぽつりぽつりと5~6人が姿勢よく座っている。僕も習って静かに腰をおろす。
一音目から、もう圧倒されてしまった。遠くに並んでいるパイプから吹き出した音が礼拝堂全体に響き渡って、僕たちの体に降り注いで来る。
目を閉じてみるのだが、それも惜しい。この古い礼拝堂の雰囲気さえ見逃せない感じなのだ。
すっかり聴き入ってしまったが、残念ながら僕の「ひるのいこい」は間もなく終了。
後ろ髪を引かれつつ、いつものパン屋さんへ急ぐ。
時間がないので、袋から一つ取り出して歩きながらガブリ。ちょうど路地から出た所で、幼稚園児とその品のいいお母さまに遭遇。
「あぁ、私はなんとハシタナイ姿を晒してしまったのでしょう…ングッ」
パンを喉に詰まらせそうになりながら、懺悔する僕であった。
もちろん、頭の中ではパイプオルガンの音色が響き渡っている。
教会を出るころには、聴衆は30名ほどに増えていた。