バレーボール名入れ職人物語

その男は、夜毎バレーボールにチーム名を書き込む。
丸いボールを少しずつ器用に回しながら、やや弾力のある皮革の上に油性マジックを走らせる。
全体を見渡しバランスよく配置する様は、職人技の極みである。
「ただし、一晩に3個から4個が限界ですね」
そう言いながら、この夜は8個を書き上げてしまった。
これまでに、いくつのボールに職人技を刻んできただろう。時には世界的な某有名メーカーの4文字のロゴを書き記したこともあった。
「以前は印字していたらしいのですが、予算の削減でこちらに回ってきたのです」
企業スポーツ縮小という時代の流れが、こんな一職人をも苦しめている。
それでも、報酬は一切受け取らないのが、この男のこだわり。
いや、受け取ろうにも、本当は払う側にそのつもりがまったくないのだ。
だって、ママさんバレーボーラーである妻の依頼だからね。なぜか某有名メーカーのチームにも所属していて、こちらも頼まれて書いただけ。
イヤではないけれど、まとめて持ってくるのはカンベンしておくれ！
※尚、今晩の日記はノンフィクションであり、一部が誇張されている以外、登場する人物や企業は確かに実在しております。

4/13（水）の湘南ライナー

今晩も９時半。
それにしても、車内は暖房が効いていて暑いです。温度計は24度！