錦之助ざんまい

時代劇のスーパースター中村錦之助(萬屋錦之介)の出演した映画について、感想や監督・共演者のことなどを書いていきます。

映画『祇園祭』ノート(2)

2018-10-15 13:06:13 | 錦之助ノート
 帝国ホテルに芸能担当記者を集めて、映画『祇園祭』の製作発表が行われたのは1967年(昭和42年)8月21日であるが、その時点では同年11月にクランクインする予定であった。しかし、それが延びに延びて、実際にクランクインしたのは翌年の1968年(昭和43年)8月12日であった(その前の7月17日に祇園祭山鉾巡行の実写を撮影しているが、これは、クランクインとは言えまい)。つまり、製作発表から約1年後、当初の予定から9か月も遅れたわけだ。
その間に、何があったかについては、後述したい。

 実は、初めて公に『祇園祭』の製作が発表されたのは、8月19日の土曜の夕刻、京都府庁が主催する夏の恒例行事「二百万人盆踊り」大会においてであった。場所は府大グラウンド、1万人以上の市民が集まったのではないだろうか。マスコミ関係者も各社から取材に来ていた。
 午後7時から開会式が始まり、富井京都市長のあと、蜷川虎三京都府知事が挨拶に立ち、ゲストの錦之助を紹介。

「錦之助と虎三、まことにおかしな組合せだが、こんど『祇園祭』というたいへんな映画を製作します。永田さんとか、大川さんとかいう資本家から、京都町衆の手に映画を取り戻す大事業であります。一つ、府民のみなさんのご協力をお願いしたい」

 蜷川知事は、「府政百年記念」事業の一環として『祇園祭』製作というアドバルーンを景気よく打ち上げたのである。
 続いて錦之助がマイクの前に立ち、おそらく、いつものように簡単に挨拶。
「ぼくがずっとやりたかった映画です。がんばります。お引き立ての方、よろしくお願いいたします」と言って、深々と頭を下げると、会場に集まった市民は万雷の拍手を送ったにちがいない。
 錦之助と蜷川知事、富井市長が固い握手を交わすのを見ながら、仕掛け人の竹中労は、「かくてカブラ矢は弦を離れた」と感じたという。



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4 コメント

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花と龍 (山根健)
2018-10-16 10:38:34
未見の「祇園祭」に関する記事も興味深く拝読しましたが、昨日ラピュタで見た「花と龍」に関する、貴殿が以前書かれた記事でこの傑作の魅力を余すことなくカバーされており、この作品から受けた感動を共有出来て大変嬉しく、御礼申し上げます。家に帰ってから山下監督のことが書かれた「将軍と呼ばれた男」を調べたのですが、「花と龍」のことは本当にあっさりとしか触れられていなかったので、ネットで検索したところ貴殿のブログにたどり着き、三つの当該記事が拝読出来ました。書かれているように、主演2人の名演、脚本、演出、それから古谷さんの撮影も素晴らしいですね。貴殿のご尽力もあり、ラピュタで錦之助特集が開かれるとのこと、楽しみにしております。今後とも錦之助さんに関する興味深いブログを拝読させて頂ければ幸いです。宜しくお願い致します。
有難うございます! (背寒)
2018-10-16 14:57:59
「花と龍」、ラピュタで見られたのですね。私も今度見に行くつもりです。ブログにこの映画のことを書いたのは、10年以上も前なので、何を書いたのかすっかり忘れていました。コメントをいただいたので、今再読しました。この頃は、錦之助映画の1本1本、ずいぶん気合いを入れて、長々と書いていましたね。もう今では、あんなに情熱的には書けないなあ、と思います。
「続花と龍」も御覧になるかと思いますが、お楽しみに!
返信有難うございます。 (山根健)
2018-10-16 22:11:50
早速返信頂き有難うございます。続編は必ず見に行きます。ラピュタに錦之助さんのファンクラブ会報が置かれていたので驚きましたが、貴殿が提供されものだったんですね。それにしても、今回の東映文芸映画特集で観た昔の佐久間良子の美しさには驚きました。祇園祭と言えば、大昔竹中労がキネ旬に書いていた記事を思い出します。詳細は忘れてしまいましたが、錦之助がスタッフの為に大変尽力したというような内容は覚えています。今後ともよろしくお願い致します。
来年はぜひ! (背寒)
2018-10-17 01:19:00
錦之助映画祭りの時にはぜひいらしてください。

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